その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は堀公俊さんの『 チーム・ビルディング[新版] 人と人を「つなぐ」技法 』。「まえがき」をお届けします。
【まえがき】
「チーム活動において最も大切なことは何でしょうか?」 こう問われたら、皆さんならどう答えますか。
この問いをいろいろな人に投げかけてみると、一番多かったのが「目標の共有」という答えでした。たしかに大事な話ですが、目標を共有していてもうまく動かないチームが山ほどあります。他にもっと重要なことを忘れているからではありませんか。
次に多かったのが「コミュニケーション」です。これも欠かせない大切なものですが、話ばかりしていても仕方ありません。目標共有もコミュニケーションも目的をしっかり押さえてやらないと、思うようなチームになりません。その目的こそが、チーム活動において最も大切なことではないかと思います。
私の答えはズバリ「みんなの力をとことん引き出す」です。
スポーツのチームだろうがビジネスのプロジェクトチームだろうが、その点はまったく同じです。ないものねだりをしても仕方なく、今手元にある駒を最大限に活かすことしか、できることはありません。
たくさんの人が集まると、どうしても力を出し惜しみしたり、手を抜いたりする人がでてきます。当人は精一杯頑張っているつもりでも、秘めた力が隠れていることもあります。歯車がうまくかみ合わなかったり、力の入れどころやタイミングがずれてしまったりして、みんなの力が1つにならなくなることもよく起こります。
そうではなく、1人ひとりが仕事や活動を自分事と思って真剣に打ち込み、チームのために積極的に協力していく。そうやってみんなの力をとことん引き出してこそ実りある成果を勝ち取ることができます。
では、どうやったらそんなチームをつくることができるのでしょうか。
ガンバリズムやアメとムチが解決にならないのは言うまでもありません。身の丈を超えた課題を与えて、叱咤激励をしても持てる力はフルに発揮できません。火事場の馬鹿力でそのときはうまくいっても、持続的に力を出し続けることはできません。
大切なのは、自ら課題に取り組み、心おきなく力が発揮できる状況を用意することです。進んで「みんなのために頑張ろう」「自分が今やらなければ誰がやるんだ」という気持ちになるような状態をつくり出すことです。
そのカギを握っているのが、チームの関係性(つながり)です。
関係性によって、メンバーの振る舞いもチームのまとまりもまるで違ったものになります。関係性が変われば人が変わります。人が変われば関係性が変わります。そうやって、循環的にチームを変えていくのが、みんなの力をとことん引き出すための最良の方法です。それがまさに本書のテーマである「チーム・ビルディング」です。
チーム・ビルディングとは、機能的なチームをつくるための考え方や技術を集大成したものです。言い換えると、人と人を「つなぐ」技法に他なりません。1人ひとりの知恵や思いは小さくても、それを分かち合い、つなぎ合わせることで、やがて大きな力を生み出していきます。その楽しさと喜びを経験することこそチームの醍醐味です。
すべてのメンバーが主体的に関わり合い、活発に協働しながら成長していくチームをつくるには、どのような点に配慮してどんなことをすればよいか。それをチーム・ビルディングは教えてくれます。今や、チームを率いるリーダーやチーム活動を支援・促進するファシリテーターにとって必須の技術となっています。その全貌を余すことなく紹介するのが本書の狙いです。
今回オールカラーの新版に改訂するにあたり、全体を組織開発の考え方に基づいて再構成し、近年話題の技法やツールをあらたに盛り込み、組織開発の入門書としても役立てられるようにしました。
そのなかで、多くの人が「これなら私でも手軽にできそうだ」と思えるような具体的で身近な技法を紹介しています。「問い」も「アクティビティ」もすべて筆者が現場で使っているものであり、すぐに実践できるようにまとめてあります。
くわえて、単なる技法の紹介に終わらせず、チーム・ビルディングを一連のプロセスとして提供することに力を注ぎました。皆さんになじみの深いシーンを取り上げ、さまざまなテクニックを組み合わせて、チームを持続的に成長させていくさまを解説しています。
あわせて、気難しいメンバーやチームの疲労への対処など、常に変化するチームの状況に臨機応変に対応するヒントも紹介しています。コロナ禍以降注目を浴びているオンラインでのチームづくりについても言及しました。これらを通して、現場でどのように活かすかを、具体的にイメージしてもらえるのではないかと思います。
では、前置きはこれくらいにして、これから皆さんと一緒にチーム・ビルディングの世界に足を踏み入れていきましょう。単に知識を得ただけでは良いチームはできません。一通り読んだ後は、勇気を出して何でもよいから実践してみてください。
合言葉は、「よし、私もやってみよう!」です。そうやって、私たちの周りに元気あふれるチームをどんどん生み出していきましょう!
2024年5月
堀 公俊
【目次】



