その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は池村聡さんの『 はじめての著作権法 第2版(日経文庫) 』です。

【はじめに】

 お待たせしました。お待たせしすぎたかもしれません。

 ようやく『はじめての著作権法』の第二版を刊行することができました。大分前から改訂のお話は頂いていたものの、ひとえに私の筆の遅さが原因で大分時間がかかってしまいました。

 本書の初版が刊行されたのは平成30年(2018年)の1月です。その後、著作権法は、平成30年改正、令和2年改正、令和3年改正、令和5年改正と4回も重要な法律改正が行われた他、この間、興味深い裁判例も沢山出されました。また、初版刊行時にはまだまだ使い物にならず、人間様には到底かなわなかった感があった生成AIも、その後飛躍的に発達し、今や我々の日常生活や日常業務とは切っても切れない存在になりつつありますし、AI関連の新聞報道等を目にしない日はないほどです。そして生成AIと著作権の関係を巡り、この間様々な議論が繰り広げられてきました。その他、著作権を巡る興味深い新たな話題は日々尽きることがありません。

 今回、第二版を執筆するに当たっては、こうした初版刊行以降の新たな動きのうち、重要であり、かつ初学者にも取っつきやすいものをなるべく多く盛り込むことを意識したつもりです(マニアックな上級者からすると、触れていない重要裁判例等もあるはずですが、その点はご容赦ください)。

 本書のコンセプトは、初版と全く変わりません。本書は、著作権業界専門誌「月刊コピライト」(著作権情報センター)に掲載された「ざっくりさくっと著作権」という、著作権法のことを文字通り「ざっくり」「さくっと」学んでいただくことを目指した著作権初心者向けの連載記事をベースに、より内容を充実させた超・入門書です。著作権業界に数多はびこる(私も含めて……)マニアックで玄人な方々を対象とするものではなく、著作権業界に新たに足を踏み入れた方、著作権法に初めて興味を持った方、著作権を勉強する必要に迫られた方、こういった方々を対象に、著作権法の基本的な内容を、適宜最新情報も交えつつ、とにかくできるだけ分かりやすく説明することに徹しています。

 本書を通じて著作権法に興味をもっていただき(そしてできれば著作権法のことを好きになっていただき)、読み終わったときには著作権法の基本を身につけていただければと思います。勿論、それに留まらず、マニアックな奥の細道に足を踏み入れるきっかけになっていただくことも大歓迎です。また、既に一通り著作権法のことを学習済みの方々にとっても、基本知識のおさらいとして、あるいは社内研修等を行う際の参考として、ご活用いただける内容になっているのではないかと考えています。本文中、著作権法の条文を載せた部分は、可能な範囲で構いませんので、スマホで検索するなどして、実際の条文も眺めていただくといいかなと思います。

 なお、説明に際しては、極力分かりやすい具体例を挙げることを心掛けましたが、私の世代や出身地等にまつわる記述がついつい多くなっております。今回改訂に際して、我ながら「寒いな……」と思わずにいられない箇所も正直少なくなかったのですが、それも一つの味ということで、敢えて残す茨の道を選択しました。琴線に触れる読者が一人でもいれば、それで私は満足です。

 初版の前書きでは、著作権法が我々の日常生活や日常業務で身近なものになっているにもかかわらず、基本的な知識がまだまだ浸透しておらず、その結果、不健全な「炎上」事例等が度々起きていること等を指摘していましたが、残念ながらこうした状況はまだまだ解消されていないように思われます。

 逆にいえば、本書の存在価値はまだまだ失われていないともいえるわけで、初版に続いて多くの方に本書を楽しんでいただければこんなに嬉しいことはありません。

 さて、前説はこの程度にして、徐々に中身に入っていきましょう。

 2026年6月

池村 聡


【目次】

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