その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はケヴィン・ケリー(著)、池村千秋(訳)、服部桂(解説)の『 生きるための最高の知恵 ビジョナリーが未来に伝えたい500の言葉 』です。

【はじめに】

 これは偶然生まれた本だ。最初から執筆の計画があったわけではない。

 始まりは、自分の子どもたちに向けて人生のアドバイスを記し、ネットで公開したことだった。すると大反響を呼び、その後も、新しいアドバイスを公開すると、そのたびに大きな話題になった。そうこうするうちに、アドバイスがたくさんたまったので、それをひとつにまとめたいと思った。

 こうして出来上がったのが、いまあなたの手元にある、このささやかな本だ。書籍のかたちになったことで、よりよい人生を生きたいと思っている人たちに、アドバイスを伝えやすくなった。

 この本で目指したのは、長い歴史を通じてその効果が実証されてきた知恵を伝え、僕自身の言葉で、つまり現代に生きる人々が用いる日常の言葉で表現することだった。

 古代ギリシャのストア派哲学者や聖書や古代中国の思想家に由来する知恵だったとしても、今日の人たちがピンとくる言葉で表現したいと思ったのだ。本書で紹介する知恵は、世界のどこにいても通用するものだ。その意味で、ここに日本語版をお届けできることをとてもうれしく思っている。

 もともと、これらの知恵を書き留め始めたのは、僕自身が覚えておいて、自分の生き方に役立てることが目的だった。記憶に残りやすいように、なるべく簡潔に表現するようにした。僕の人生にとくに当てはまる知恵も一部含まれているかもしれないが、ほとんどは普遍的な価値がある知恵だ。

 その価値は、将来どのような新しいテクノロジーが登場しても変わらないだろう。

 本書にまとめた知恵は、感謝すること、人に親切にすること、楽観的であることの大切さなどに関わるものだ。本書を通じて、あなたがこうした振る舞いを実践するための支えとなればうれしい。あなたがそれを実践できれば、あなた自身と周囲の人たちの人生がよりよいものになる。少なくとも、僕自身の経験ではそうだった。

 どのような知恵を本書に盛り込むかに関しては、次の3つの基準に従った。

 第一は、簡潔であること。その気になれば本を1冊書けるような内容を、ツイッター(現「X」)の投稿程度の文字数に圧縮するよう努めた。第二は、前向きでポジティブな内容であること。斜に構えていたり、ネガティブだったりする言葉を収録することは避けた。第三は、自分が本当に正しいと思っているものであること。僕の人生で有効だったものや、僕自身が賛同できるメッセージだけを選んだ。単に耳あたりがいいという理由で収録することはしなかった。

 つまり、この本に記されているすべてのアドバイスは、僕が心から信じているものなのだ(つねにすべてを実践できていると言うつもりはないが)。


 本書の英語版が出版されたあとも、新しいアドバイスを書き留め続けた。自分がすでに知っていたことの中で、若い人たちも知っておいたほうがいいと思えることを次々と思いついた。

 また、今でも、僕自身がもっと若いときに知っておきたかったことを新たに学び続けている。そこで、日本語版の編集部から「もっとアドバイスがないか」という問い合わせがあったとき、すぐにこう答えることができた──「あるよ!」と。英語版に収録したアドバイスの数は460個。この日本語版では40個のアドバイスを追加した。したがって、本書にはちょうど500個のアドバイスが収録されている。

 すべての知恵があなたにとって有益ということはないだろう。それでも、多くは有益と思ってもらえるのではないかと自負している。

 この本は、言ってみれば、コンピュータの「圧縮ファイル」のようなもの。自分でゆっくり「解凍」して、有益なアドバイスを見つけてほしい。時間をかけて読むことをお勧めしたい。1日に2個、あるいは3個くらいずつ読み進めてもいいだろう。

 そして、目の前の言葉を自分の人生にどう役立てられるかを考えてみよう。もし役に立ったと思えるものがあれば、あなたのまわりの若い心をもっている人たちにも教えてあげてほしい。

ケヴィン・ケリー


【目次】

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