その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は日経BP 総合研究所の 『破壊的イノベーター、その視界』 です。

【はじめに】
あらゆる価値が再定義される時代に求められる、「破壊的イノベーター」の資質

 本書『破壊的イノベーター、その視界』には、世の中に変革をもたらした15人組・16人のDisrup tive Innovators(破壊的イノベーター)が登場します。

 米国の経営学者、クレイトン・クリステンセン氏が提唱した「破壊的イノベーション」は、既存市場のルールを劇的に変え、市場の構造に大きな変化をもたらしたイノベーションのことを指すのが一般的です。本書における「破壊的イノベーター」は、この解釈から枠を広げて、社会の在り方や人々の考え方、生き方に大きな変革をもたらした(あるいはもたらすであろう)人物も含んでいます。スポーツ、エンターテインメント、地方創生、アート、人生100年時代、途上国との関係、寄付文化、建築、医療、空飛ぶクルマ、分身ロボット――。彼ら彼女らは様々なジャンルで新たな価値を創造し、変革をもたらした人たちです。

 破壊的イノベーターの視界には、どんな景色が広がっているのか。その視界をどうやって獲得していったのか――。社会課題の解決に資するイノベーション創出の原動力となった、彼ら彼女らのパッションやスピリッツに迫りつつ、その行動原理を探っていきます。

 尋常ではないスピードで企業が越境してビジネスを展開していく時代です。アップルやソニーが電気自動車(EV)市場への参入を表明する一方で、トヨタ自動車は都市づくりに着手しています。そして私たちは、新型コロナウイルスという、社会に想定外の大打撃を与え続けているパンデミックに直面しています。人々の働き方や暮らし方は、さらに急速に、不可逆的に変貌していくでしょう。

 この変化は、「多くの仕事がテレワークに移行した」といった表層だけの変化ではありません。コロナ禍をきっかけに、企業と従業員の関係、家庭と仕事の関係、都市と地域の関係、多様性と包摂を目指す社会の在り方など、人々が幸福に生きるための社会環境が根底から問い直され、再定義されようとしています。だからこそ、ビジネスにおいて「社会課題の解決」がかつてないほどに大きなテーマとなっているのです。

 本書は、日経BP 総合研究所が運営する二つのウェブメディア「新・公民連携最前線」「BeyondHealth」の共同企画による連載「Disruptive Innovators Talks 〜新たな価値の創造者たち〜」から生まれました。破壊的イノベーターの生の声をまとめた第1章、第2章、そして彼ら彼女らの「視界の広げ方」を分析、そのエッセンスを「五カ条」に整理して紹介する第3章で構成されています。

 先読みをすることが極めて困難なこの時代に、社会課題の解決に挑む――。そんな起業家やビジネスパーソンにとって、フロンティアで新たな価値を創造した破壊的イノベーターの発想や行動を知ることは、 必ずや大きな発見や学びにつながると確信しています。

日経BP 総合研究所 主席研究員 髙橋博樹


【目次】

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