その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は福永啓太さん、後藤晃さんの『 競争政策進化論 競争的市場と社会的課題の解決 』です。「まえがき」をお届けします。
【まえがき】
世界的な変化のうねりのなかで、日本社会も人口動態や経済環境などの面で複雑かつ大きな変化に直面している。これに対して企業レベル、政府レベルで様々な対応が取られている。本書は、このようなダイナミックな環境のなかで、独占禁止法(独禁法)や競争政策、そして産業政策はどうあるべきかという古くて新しい点を検討した。
これまでは、企業行動を縛るものと位置づけられがちだった独禁法だが、最近は、むしろ競争環境の改善を通して企業行動を支援するものとして注目されるようになった。さらに、その役割が大きくなってきたことで、これまで期待されていなかった政策課題にまで公正取引委員会(公取委)が関与することが求められるようになった。
期待される役割が大きく変わりつつある競争政策や独禁法。この新しい潮流のなかで、何を変えるべきで、何を変えるべきでないのか。
基本的なポイントは、時には一見、対立するようにもみえる複数の政策目標を達成していくために、競争のダイナミズムをどのように活かしていくか、市場のデザインをどのように描くかという、経済学の視座を持つことである。そのうえで、客観的な証拠やデータに基づき、突き詰めて考え抜くことである。
本書では、日本企業や政策当局が直面する今日的な問題をはらんだ具体的な事例に即しつつ、問題解決につながる経済学的なロジックと、それを検証するための利用可能な証拠やデータの検討方法の一端を説明した。記述はできるだけ平易に、わかりやすくなるように努めた。ビジネスパーソン、官僚、学生など多くの人に読んでいただき、一緒に考えていくための視座を提供したい。
著者の福永はアイオワ州立大学で農業経済学、神戸大学で法学のダブルの博士号を持ち、公正取引委員会でエコノミストとして勤務した経験も持つ。現在はアリックスパートナーズで主として独禁法にかかわる案件について経済分析の観点から企業や弁護士にアドバイスする業務に携わっている。後藤は一橋大学、東京大学などで経済学の教育、研究に携わり、また、公正取引委員会の委員も務めた。現在はアリックスパートナーズのアカデミック・アドバイザーも務める。
本書の原稿を読み、有益なコメントをしていただいた山田務、岡田羊祐、山田弘、Mat Hughesの各氏にお礼を申し上げる。本の作成は著者と編集者の共同作業であるが、様々な助言、サポートをしていただいた日経BP編集部の堀口祐介氏にもお礼申し上げる。
なお、いうまでもないが、本書に述べられた意見はあくまで筆者のものであり、それぞれが所属する組織のものではない。
2026年7月
福永 啓太
後藤 晃
【目次】










