その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は佐藤斗夢さん、大西孝弘さんの『 ブルーカラー年収1000万円時代(日経プレミアシリーズ) 』です。「プロローグ」をお届けします。
【プロローグ】
年収の高さは何で決まるのか。
本質的には学歴でもスキルでもない。
需要と供給のバランスだ。
もちろんスキルアップが年収アップに寄与することは少なくないが、それは多くの場合、仕事の領域を決めてからの話だろう。
労働市場における需給バランスは、現在進行形で激変しつつある。誰もが気付いているように、人工知能(AI)の進化と普及によって、プログラミングや間接業務などのデスクワークは世界中で供給過多となり、その価値の急落が見込まれる。
すでに米テック大手はエンジニアの大量リストラに踏み切っている。日本においても業績堅調な大企業が、余剰感のあるホワイトカラーを減らす黒字リストラに動いているのは一つの兆候だ。
一方で、身体的な技能を用いるブルーカラーの領域は、景色が大きく異なる。旺盛な現場仕事の需要に対して働き手が大幅に不足しているため、全国各地で工事の中止や見直しが相次いでいる。
歴史に残るであろうこの構造変化は当然、給与水準に波及する。
高所作業車に乗り込む電線工事の現場には、高卒で腕を磨き年収1000万円を超える技能者が出てきた。
本社勤務から現場に転じて給与アップした大林組の女性現場監督は、37歳にして年収1000万円到達を目前とする。
借金返済のために過酷な労働を強いられるイメージもあったマグロ漁船はホワイト化が進み、若者が安定的に年収1000万円超えを狙える職場に変わった。
ホワイトカラーの方が安全で高収入という「前提」は揺らいでいる。
だからといって、今日デスクワークに従事する会社員が、明日からいきなり肉体を酷使する現場で働くのはもちろん現実的な選択ではない。けれど中長期的な自分のキャリアを考えるとき、あるいは子どもたち世代のキャリアについて考えるとき、ホワイトカラーとブルーカラーが逆転する構造変化に目を向けることは役立つ。むしろ欠かせないかもしれない。
このような認識から本書はまず、増えつつある高収入ブルーカラーのリアルに迫る。高収入の基準には異論もあろうが、ひとまず年収1000万円を置いた。
本書でいう「ブルーカラー」とは、主にオフィスでデスクワークに従事する「ホワイトカラー」と対置される職種を指す。その特色は、身体的な技能を用いて「現場」で価値を生み出すことにあり、本書では「現場職」や「エッセンシャルワーカー」もブルーカラーに含めて捉える。
高収入ブルーカラーは、どのような試行錯誤を経て今の仕事を選び、どのようなスキルアップや資格取得を重ねて、高収入を得るに至ったのか。また、その収入は個人事業主としての稼ぎなのか、会社員としての給与なのか。あるいは、どのくらいが固定的な収入で、どのくらいが変動的な成果給や残業代なのか……。
そのような足元の現実を踏まえ、さらにホワイトカラーが揺らぐAI時代にどのようなキャリア戦略を取るべきかについて、一定の判断軸を──現在進行形の変化の中で機能する一定の指針を──示すことを目指す。不完全であるかもしれない。けれど、巧遅には陥らない。
まずは、大手企業のボーナス支給額が日本最高水準に達した建設業界から見ていこう。
【目次】








