その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は髙濵愛さんの『 ミドル世代を襲う人生100年時代 お金・健康・老後の不安やストレスを克服する 』です。
【はじめに】
人生100年時代、充実した未来を築いていくガイド
私たちは歴史的な転換点に立っています。かつてない長寿の時代に突入し、「人生100年時代」という言葉が現実のものとなりつつある時代に生きているのです。人生100年時代とは、多くの人が100歳まで生きることが普通となり、人生の長さが大幅に延びることを指します。
この言葉は、人生100年時代をテーマとして2016年に出版された『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(リンダ・グラットン&アンドリュー・スコット著、東洋経済新報社)で広く知られるようになりました。同書では、長寿化が進む現代において、従来の3つのライフステージ──教育、仕事、引退──ではもはや対応しきれなくなり、人生設計を根本から見直す必要があると主張しています。
日本は高齢化先進国であり、国レベルで様々な政策や取り組みが進められています。それらは私たちのこれからの生活を後押ししたり下支えしたりしてくれるものですが、人生100年時代はこれまで誰も見たことがない現実です。私たちは誰も想像もしなかった世界に挑戦し、飛び込んでいかねばなりません。
長寿はかつて「人類の夢」とされ、肯定的に受け止められていました。ところが、この夢がかなった今、多くの人々がこの長い人生をネガティブに捉え、将来の不安から現在を楽しめていない人がたくさんいるのです。
人生100年時代はどの世代にも影響することですが、特にミドル世代といわれる40代50代に大きな影響を与えているようです。平均寿命がもっと短かった親の世代はロールモデルになりにくい傾向にあり、年上の世代とは異なる生き方を懸命に模索しなければならなくなりました。その結果、将来への不安が日々の生活に影を落としているのです。
40代50代のみなさんは、あと半世紀続くかもしれない長い未来に向けての資金計画、健康管理、自己啓発、副業やリスキリングなどについて日々悩み、模索しています。これらは個人の悩みではなく、社会全体の問題です。こうした問題の答えを探ることは、40代50代だけでなく今を生きる私たち全員のテーマと言えるでしょう。
「これからは、働き方、学び方、余暇の過ごし方、引退後の生活など、すべての側面において、従来とは異なる新しいアプローチが必要とされるだろうな」──そんなことをぼんやりと考えていたある時、「私の専門が役立つのではないか」と気づいたのです。私の専門は「異文化コミュニケーション」です。海外など異なる文化圏において、スムーズにコミュニケーションを取る方法などを研究しています。
「人生100年時代に直面する」というのは、私が研究する「異文化を初めて経験する」のとよく似ています。だとすると、異文化コミュニケーションとしてこれまで研究してきたことは、人生100年時代に求められる新しいアプローチを探すヒントになるのではないだろうか。そう思ったことが、本書を書くきっかけです。
先の見えない不安を乗り越え、新たに人生をデザインするにはどうすればよいのでしょうか。それは、私たちが人生100年時代をどう捉えるかで大きく変わります。すなわち、人生100年時代をチャンスとしてポジティブに受け止めるのか、あるいはピンチとしてネガティブに受け止めるのか、ということです。
本書は、将来の不安に直面しながらも、希望を見いだし、充実した未来を築いていくためのガイドとなることを目指しています。ガイドがあれば、人生100年時代をポジティブに受け止めることができるはずです。読者のみなさんの気持ちに寄り添いながら、不安を解消し、行動に移すための具体的なアドバイスを提供します。
襲い掛かる不安の原因と仕組みを理解できる
本書を読むことで何が得られるのか、具体的に挙げてみます。
第一に、長くなった人生になぜ不安を感じるのか、その原因と仕組みを理解できるようになります。この理解を手始めに、不安の根源を探り、向き合っていく力を身に付けることができるようになります。また、不安の原因が分からないことにより増幅されてしまう新たな不安からも解放されます。
第二に、不安を感じることは、決してあなた1人だけではないことを知って安心することができます。新しい時代に直面して不安を覚えるのは自然なことであり、多くの人が同じような経験をしています。本書を通じて、不安に感じているのは自分だけではないと知り、安心することができるでしょう。
第三に、不安を解消するための方法として、日々の生活におけるコミュニケーションの重要性を再認識できます。将来を不安に思う気持ちは、自分自身に加えて、家族や友人、職場の同僚との積極的なコミュニケーションを通じて、少しずつ和らげることが可能になります。本書では、そうしたコミュニケーションの取り方に関する具体的なアドバイスを提供します。
そして最後に、これらを学ぶことで、この先50年ほど続く人生をポジティブに捉え、生きていくための力を得ることができます。新しい時代の到来に伴う不安を乗り越え、毎日をさらに豊かに生きる方法を見つける──それが本書の目的です。
本書の内容
人生100年時代は、多くの機会をもたらす一方で、同時に新たな挑戦も伴っています。この時代は予測不可能な変化と、その変化に適応するための新たな戦略を必要とする「異文化」のような存在です。本書では、人生100年時代という「異文化」に対する「不適応症状」を理解し、それに対処する方法に焦点を当てています。
社会現象を捉え、「人生100年時代不適応シンドローム」と命名
第1章で「人生100年時代の意味」についてまとめたうえで、第2章では現在の日本で40代50代の人々が直面している、これまでにない社会現象を紹介します。この社会現象は、人生100年時代というこれまでの人生観や価値観が通用しない新たな文化圏(=異文化)に足を踏み入れたことで起きており、「人生100年時代不適応シンドローム」と呼べるものです。
副作用・対症療法、そしてセルフチェック
第3章では、人生100年時代不適応シンドロームの副作用を整理します。また、自己流の対応では対症療法になりがちであることから、その例と限界を明らかにし、根本的な対応策を考えることの重要性を訴えます。続く第4章では、みなさんがどの程度「人生100年時代不適応シンドローム」に陥る傾向があるのかを、「異文化不適応セルフチェックテスト」により自己診断していただきます。自分を知ることが、不適応に向き合う第一歩となります。
学術的説明
第5章は理論編です。人生100年時代という新しい現実を「異文化」として捉え直します。この異文化への適応過程を、コミュニケーション学と心理学の理論を用いて解析します。例えば、よく知られている異文化適応のUカーブモデルを例に挙げることで、人生100年時代への適応過程で発生するストレスや不安が、「カルチャーショック」として現れる仕組みを解説します。第6章からは、「人生100年時代不適応シンドローム」の解決策編になります。異文化適応には「ソーシャルサポート」が重要であり、そのカギを握る「コミュニケーション」について解説します。
適応するための「ワーク」、予防にもリハビリにもなる「トレーニング法」を紹介
第7章では人生100年時代に適応するための実用的な「ワーク」を、第8章では異文化適応に関するオリジナルの診断テストを用いて、読者一人ひとりに合ったトレーニングプランを提案し、実生活での活用方法を紹介します。読者のみなさんに自分自身で不適応症状を克服し、人生100年時代を豊かに生きていただくための具体的なアプローチを提供します。
以上が各章のあらましです。本書を通じて、みなさんが人生100年時代という新たな現実により良く適応し、その適応の中で豊かな人生を築くための知識とスキルを得ていただくことを願っています。
不安と向き合い、克服するための第一歩
40代50代のみなさんは、今、人生の中で非常に重要な役割を担っています。職場、家庭、地域社会での責任は決して軽いものではないでしょう。このような状況で将来に不安を抱くのは、決して恥ずかしいことではありません。人生100年という新しい時代を生きる私たち全員が直面する自然な反応であり、むしろ将来に対する意欲や向上心の表れと言えます。
本書は、そうした不安と向き合い、克服するための第一歩になります。本書を通じて、未来に対する不安を減らし、今をより楽しむ方法を見つけていただきたいと思います。そして、これからの人生をポジティブなものに変えていくためのインスピレーションを得ていただければ幸いです。この先の道のりは決して簡単ではないかもしれませんが、一歩ずつ前に進む勇気を持ってください。
未来は予測不可能ですが、準備することによって、不安を希望に変えることができます。本書を通じて不安の原因を知り、それに対処することで自分自身と向き合い、不安を希望に変える旅を始めることができるよう願っています。
私たちは、人生というこの長い旅の途中で、お互いに学び、支え合うことができます。本書が、その旅の有益なガイドとなり、みなさん一人ひとりの人生に光をもたらすことを心から願っています。
2024年10月 髙濵 愛
【目次】







