その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は佐藤オオキさんの『 問題解決ラボ 「あったらいいな」をかたちにする「ひらめき」の技術 』です。

【はじめに】

「デザイン目線」で考えると、ホントの課題が見えてくる

 海外出張。トイレに入っていきなり小便器に大便が入っていたら、皆さんはどう感じますか? 自分は3つの可能性を考えます。

 1.とんでもない非常事態に陥った
 2.文化の違いによる誤解
 3.凡ミス

 お初にお目にかかります。デザイナーの佐藤オオキと申します。
 自分にとっての「デザイン」とは、日常のちょっとした出来事を見逃すことなく、そこから何らかのアイデアを抽出することです。なので、このコペンハーゲン空港のトイレ内にて繰り広げられていた有り様を、決して受け流すわけにはいかないのです。
 いえ。別にトイレを「流す」ことと掛けたわけではありません。
 1と2と3。その理由がどれであったにせよ、「その瞬間」を目撃してしまった人も、目撃されたほうも、心的ストレスによるトラウマを今でも抱えていることは容易に想像がつきます。そして、どのような体勢で事が行われたのかが気になって仕方がありません。
 と同時に、1596年にタンク式水洗トイレがジョン・ハリントンによって発明されて以来、そのデザインがほとんど変化していないことに気づくわけです。
 19世紀後半あたりのトイレを見ると、すでに今のものとほぼ一緒です。「トイレはこういうもの」という既成概念を取り除けば、新たなトイレのカタチの可能性が出てくるんじゃないか。
 そういったあらゆる出来事の「理由」だけでなく「前後左右」をも予測し、それらすべてをインスピレーションの素にするのが自分の日常業務ともいえます。
 今現在、世界中の約70社と400以上のプロジェクトを進めています。業務範囲はインテリアから、家具、家電製品、生活雑貨、パッケージや企業ロゴをはじめとしたグラフィックデザイン、さらには企業のブランディングや駅前開発等の総合デザインまで、多岐にわたります。
 重要なのはデザインのジャンルではなく、新しい視点を提供することでいかにして目の前の問題を解決できるか、です。「あめ玉」でも「高層建築」でも、デザインするなかで考えていることは、どちらもたいして変わらないのです。

 こうした新しい視点での問題解決に必要なものこそ、「デザイン目線」で考える、ということ。今までさんざん悩んでいた問題には全然違う側面があると気づくことができ、アイデアが「詰まり」なく出てくる体質になり、問題解決の新しい筋道が見つかって……と、真の課題、本当の答えにたどり着くことができるようになります。
 そのために、本書では「問題発見」「アイデア出し」「問題解決」「アイデアの伝え方」「デザイン」の5つの章にさまざまなスキルをちりばめました。そして、その1つひとつに、「オモテ面」と、それを補足する「ウラ面」を用意しています。
 ここで強調しておきたいのは、このデザイン目線は、デザイナーだけができる特殊なスキルではないということです。普段アイデアが出なくて悩んでいる人にとっても、「ひらめく」ためのヒントがたくさんあると思っています。
 自分にしても、最初からアイデアなんてあるわけがなく、頭の中は常に「空っぽ」。
 読者の皆さんにも、頭を「空っぽ」にしてお読みいただくことで、タイクツな日常の中に潜む小さなアイデアを発見するキッカケとなることを願っております。

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【目次】

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