その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は大江加代さんの『 新NISAとiDeCoで資産倍増 人生100年時代の新しいお金の増やし方 』です。

【はじめに】

 2024年からNISA(ニーサ、少額投資非課税制度)が新しく、使いやすくなるということで、世間ではNISAブームです。また、「積み立て投資」自体も若い人を中心に普及が進み、iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)への関心も高まっています。一方で50代以上の人は、NISAもiDeCoも今から始めるのはもう遅いのでは? と誤解されている方が多くいらっしゃるようです。

 投資を通じた資産形成において、運用できる期間は長いに越したことはありません。しかし、人生100年時代、60代になっても70代になっても元気で働く人が増えている昨今の状況からすれば、積み立てや資産運用は少なくとも75歳ぐらいまでは視野に入れても大丈夫ではないでしょうか。積み上がった資産を取り崩しながら運用を継続することも踏まえると、50歳から30年近い長きにわたる資産運用が可能です。

 また、50代くらいになると平均的な貯蓄額も増えてきますので、1回当たりの積立額を多くして運用資産を一気に積み上げるということも可能です。今回、年間投資枠が大きくなるNISAは、そんな50代以上にはぴったりの制度です。

 この本のタイトルにある「資産倍増」とは、新しいNISAとiDeCoを上手に活用することで、老後の長い生活に備えるためのお金、つまり「老後資金」を効率よく増やすことを目指しましょう、というメッセージです。これらの制度を利用するのとしないのとでは、10年後、20年後の資産額が倍くらい違ってくることは十分にあると思います。倍とはいかずとも、相当な差が出ることは確実です。

 実際に活用するには、制度の理解が欠かせません。ファイナンシャルプランナーや金融機関の人に話を聞くと、どうも多くの人が、

●NISAやiDeCoを「商品」だと思っている。
●NISAが大幅拡充するのだから「iDeCoにはもう出番がない」と思っている。
●NISA、iDeCoは投資信託での運用が主であり、投資信託はその中身の多くが株式であるにもかかわらず、「株式の基本的なことや価格変動のメカニズムはそれほど詳しく知らなくてもいい」と思っている。
●積み立て投資は「期間を長く取れる若い人でなければ意味がない」と思っている。

 といったような誤解をされているようです。私の夫もラジオの経済番組でキャスターをしていますが、リスナーからの質問にはもっと基本的な誤解に基づく質問もあると言います。どうも、NISAもiDeCoも税制優遇の面だけが注目されていて、「有利な節税法」とか「税メリットのあるお得な投資法」としてしか認識されていないのです。

 しかし、この2つの制度の最も大きなメリットは、「長期的に資産形成が可能になる最も合理的な手法」であるということなのです。このあたりをしっかり理解していかないと、不合理な行動をつい取ってしまい、資産を大きく育てていくことが難しくなります。私はこれまで、ごく普通の方々の資産形成をお手伝いする仕事をする中で、そういう残念な結果をたくさん見てきました。

 私が、給与天引きでのコツコツ投資で資産形成をする制度に関わったのは、大学卒業後に大手証券会社に入社した22歳の時です。事業主や公的団体に許可を頂いて、取引先の職場で「投資を通じた資産形成制度の利用促進」を図るのが仕事でした。そもそもなじみがない制度でしたし、証券会社の店頭にみえる投資好きのお客さまとは違い、多くの人が投資に関心が薄く、勉強もしたくはないしリスクも取りたくない。しかし「もうけたい」という欲はあるので、「長期」も「分散」もなかなか実行されません。結果、思うように利益が出ずに怒り出すお客様ももちろんいらっしゃいました(笑)。たまたまそういう部署に配属されてから、もう30年以上、投資を通じた資産形成に関わってきたことになります。

 iDeCoには前職の証券会社の時に出合っています。15年余り「知る人ぞ知る制度」だったのが、税のメリットが注目されるにつれて利用者が少しずつ増え、2017年1月の加入者範囲の拡大を機に一気に普及が進みました。制度が複雑なのは難点ですが、老後資金づくりに特化した制度ならではの魅力もあり、ぜひ使ってほしい制度です。制度上・手続き上の課題については、私が現在、厚生労働省社会保障審議会の「企業年金・個人年金部会」の委員でもありますので、改善の努力を引き続きしていきたいと思います。

 一方、NISAについては、誕生した2014年当時は創設にはほとんど関わりがなかったものの、今回のNISAの大幅拡充については、2022年10~11月に岸田政権の「新しい資本主義」政策の一つである「資産所得倍増分科会」の委員として関わってきました。その議論の段階から政権の強い意思を目の当たりにしてきたので、まさにこれこそが資産所得倍増の柱になる制度であるということを強く認識しています。だからこそ、一時的なブームで一部の人だけが利用する制度に終わらせてはならないと思っています。

 本書ではまず前半に、2つの制度の目的と併せて、皆さんの人生において、中でも老後資金を準備する上でぜひ押さえておきたいことついてお話しします。次に、2つの制度の特徴や始める前に知っておくべきことを解説し、多くの人が関心をあまり持っていないけれど、とても大事な投資信託と株式の本質についてお話しします。これは、資産運用を始めた後、運用を継続し、資産を受け取るところまで見据えると欠かせない知識です。

 そして最後に、実はシニア世代こそ可能になる有利な活用法など、世代別のNISA、iDeCoの上手な使い方と、よくある疑問についてのQ&Aをまとめました。他のNISA本、iDeCo本とは少し味わいの違うものになっているかと思います。ご自身に興味のありそうなところから読んでいただいて構いませんが、巻頭から全編お読みいただくと、老後に向けた資産形成の全体像をつかんだ上で、NISAとiDeCoを腰を据えて利用していただけると思います。

 本書が、皆さまの老後のお金についての不安を小さくし、準備を進めるきっかけになることを願っています。

確定拠出年金アナリスト 大江加代


【目次】

画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示