その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。…が、本日の1冊、山﨑努さんの 『「俳優」の肩ごしに』 は「はじめに」がありません。代わりに「あとがき」をご紹介します。
【あとがき】
出征姿の父の傍(かたわ)らで、日の丸の小旗を持ってニコニコしている僕(ぼく)六歳のときの写真がある。なにがうれしいのか聞いてみたい気になる。
それほど昔でなくとも、過去の自分はもう別の人格ではないかと感じてしまう。そんな思いを抱いてこの回想記を書いた。遠い努くんと近い僕との間を往き来した。
人は皆、与えられた役柄のなかで生きている。この本のタイトルを『「俳優」の肩ごしに』としたのはその意を込めたつもり。
頭に浮かんでくるのは圧倒的に人、人、人。文脈上登場してもらえなかった大切な人物も大勢いる。念が残るが仕方ない。
今、柱時計が鳴った。その辺でやめろと言っているのだろう。
機会と激励を下さった古賀重樹さん、力を貸してくれた皆さん、文中出演の人も含め、ありがとうございました。
二〇二二年九月八日午後四時 努
【目次】