その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はろくすけさんの 『10倍株の思考法 「ビジネスモデル×企業価値」で考える株式投資入門』 です。

【はじめに】

 はじめまして。私は投資歴20年強の個人投資家 ろくすけ と申します。もともとは会社員でしたが、3年前、会社員の生涯年収を上回る3億円の金融資産を確保でき、自宅もキャッシュで取得済であったこともあり、少しばかり早めのリタイアを致しました。最近は全国各地の株主総会を巡る旅を楽しんでおります。

 投資を始めてから9年ほどは主にインデックス型投信を積み立てて資産形成を行ってきましたが、気が付けば金融資産が3,000万円に達しておりました。世の中が不景気になりつつあった2008年3月に、割安な株が多くなってきているのではないかと思い、日本の個別株中心への運用に切り替えました。ちょうどリーマンショック直前の時期ですね。
 個別株中心としたのは、仕事に活かす目的で勉強していた経営学や財務分析の知識をそのまま株式投資に活かせることに、遅まきながら気付いたからです。そのタイミングがより早く、より多くの経験を積んでいれば、「10倍株」をもっとたくさんつかめたかもしれませんね。

 さて、タイトルにある「10倍株」の文字を見て、「またか!」と既視感を抱いた方も多いかもしれません。投資関係の本では頻出ワードですよね。「10倍株」とは、価格が10倍以上に上昇する株を指すウォール街の業界用語「テンバガー(Ten Bagger)」の日本語訳です。

 でも私が強調したいのは、そのアグレッシブな語感とは相反して、「10倍は狙って取れるものではない」ということ、そしてむしろ「10倍化を意識しないこと」が「10倍株」をモノにするコツであるということです。

 どういうことでしょうか?

 主力で保有していた複数の「10倍株」が、私の資産形成に大きく貢献してくれたことは確かです。ただし意識の持ち方としては、「10年で2倍のペースで資産が増えてくれればいい」というスタンスをずっと貫いています。
 企業が持つ本来の価値に対して、価格が大幅に割安だと思えるものを買い、まずは2倍を目指す。企業がその価値を複利で増大させていく力に身を委ねる形で、ゆったりと構える。程よく分散されたポートフォリオを組み、トータルで「10年で2倍」を目途にする。
 そのような方針で運用を続けておりましたが、中には成長が加速して株価が10倍になるような企業もいくつか出てきて、結果的には個別株投資を本格化させてからおよそ10年で10倍という望外のペースで資産形成ができた、というのがこれまでの経緯です。企業の価値創造のパワーは、私のような凡人の想像を超えるものがあると実感しております。

 史上最強の投資家ウォーレン・バフェットは、「なぜ、みんなはあなたのシンプルな投資戦略を真似しないのですか?」とアマゾン創設者のジェフ・ベゾスに問われた時、こう返しています。

 「ゆっくり金持ちになりたい人なんていないよ。」
 (No one wants to get rich slow.)

 多くの人は早急な結果を求めるあまり、売買を頻繁に繰り返すことによって資産を増やそうとします。しかしその方法によって資金面・心理面ともに消耗してしまい、投資を途中で諦めてしまう人が後を絶ちません。
 逆に、ゆったりとそれぞれの投資先と向き合い、その稼ぐ力を信じ利用することこそが、実は遠回りのようでいて、多くの人にとって近道であると私は確信しています。まさに「急がば回れ」ですね。

 では、ゆったりと投資先に向き合うにはどうしたらいいでしょうか?その鍵となるのは、以下の3つです。

①企業価値の分析
②ビジネスモデルの分析
③コミュニケーション

 つまり、

・企業価値とビジネスモデルを評価・分析し、素晴らしい企業をその価値に対して大幅に下回る価格で買う
・コミュニケーションを通して自らの「仮説」の構築とその「検証」を繰り返し、自信を持って保有し続けるための拠り所とする

ということです。
 本書では、私の経験をもとにそれを実践するための手ほどきをさせていただきます。

 本書は、マネー雑誌の『日経マネー』(日経BP発行)に連載した「ろくすけさんの勝てる株式投資入門」を再構成したものです。会話形式になっていて、私自身である「ろくすけさん」が、投資未経験の若者2人に、株のイロハから教えていきます。3人のやり取りはコロナショックの真只中からスタートします。

 さらに、私が書き続けてきたブログ「ろくすけの長期投資の旅」からもコンテンツを追加し、より深く投資について考えるヒントも提供しています。株式投資の基本に関する初心者向けの解説から、中上級クラスの投資家を目指すためのポイントまで、じっくりと学んでいける内容になっています。

 さあ皆さん、各駅停車の旅のように、ゆっくりと途中経過も楽しみながら投資に取り組んでみませんか?

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【目次】

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