その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は笛田 薫さん、松井秀俊さんの 『Society 5.0を生き抜くための必須教養 Excelで学べるデータサイエンス入門講義』 です。

【はじめに】

 「データサイエンス」や「AI(人工知能)」といえば、IT(情報技術)の最先端であり、ITの専門家や研究者が学び、活用するものだと思われているかもしれません。しかし、パソコンやスマートフォン、インターネットを誰もが日常的に使うようになったのと同様、データサイエンスやAIの技術も、私たちの生活の中でとても身近な存在になっています。

 例えば、インターネットの通販サイトで表示される「あなたへのお薦め」。あなたが好みそうな商品を見つけ出す仕組みの裏には、大量の顧客の購買データを基に購買行動の傾向や類似性などを分析し、次に購入しそうな商品を予測するという仕掛けが組み込まれています。これはまさにデータサイエンスの成果です。

 またファッションの分野では、似たデザインの商品を検索するためにAIによる画像認識技術を活用しているケースがあります。皆さんがお使いのスマホのアプリにも、カメラを向けた被写体をAI が自動認識するものや、話しかけた言葉を認識して答えるAIアシスタントなどがありますね。

 これらはほんの一例です。データサイエンスやAIは、すでにビジネスの現場や日常生活において幅広く活用されていて、私たちの生活になくてはならないものになっているのです。

 一方で、AIやデータサイエンスを有効に活用できる人材は、まったく足りていないといわれています。経済産業省が2019年3月にまとめた「IT人材需給に関する調査」では、今後のITニーズの拡大により、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると試算されました。同調査では、特にAIやビッグデータを使いこなし、新しいビジネスの担い手として付加価値の創出や革新的な効率化、生産性の向上に寄与するIT人材の確保が重要だとされています。

 そのような事態を受け、政府は「AI戦略2019」において、2025年までにすべての大学・高等専門学校生が初級レベルの数理・データサイエンス・AIを習得するという目標を掲げました。そして2021年には文部科学省などが「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル)」をスタート。大学などでのデータサイエンス・AI教育を政府が認定することで、その取り組みを支援しています。昨今は、データサイエンスやAIの授業を全学生に対して必修化する大学も増え、文系・理系を問わず、基本的なデータサイエンス・AIの知識とスキルを身に付ける時代になりつつあります。

 本書は、前述の認定制度において大学などが参考にする「数理・データサイエンス・AI(リテラシーレベル)モデルカリキュラム」に対応すべく、現代社会におけるデータ・AI の活用動向から、基本的なデータリテラシー、さらに統計やデータ分析の基礎までを学べるように配慮しました。第1章では、データ・AIがいかに活用され、社会に変革をもたらしているのかを紹介。またそれらを活用するうえでの留意事項を解説しています。そして第2章からは、多くの人にとって身近な「Excel」というツールを使い、データ分析を実践的に学習します。第2章では統計学の基礎、第3章ではマクロ(VBA)を使った自動化の方法、第4章ではマクロによるシミュレーション、第5章は統計的推定、検定などについて学びます。

 ときには複雑な数式も登場するので、特に文系の方にとっては、面食らう場面もあるかもしれません。でも、安心してください。数式を理解できなかったり、自分で解けなかったりしても、ほとんどの計算はExcelでできるものばかりです。分析の考え方と、Excelの活用方法をマスターすれば、誰にでも基本的な統計分析、シミュレーションが可能です。尻込みする必要はありません。

 ぜひ本書を手に、データサイエンスの世界に足を踏み入れてください。データサイエンスは今や、万人に必要な“ 教養” であり、誰もが持つべき必修スキルなのです。さあ、始めましょう!


【目次】

画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示