その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は平野友朗さんの 『仕事ができる人は実践している!ビジネスメール最速時短術』 です。

【はじめに】

 本書を手に取ったあなたは、おそらく次のような悩みを抱えているのではないでしょうか。

「メールの作成時間を1秒でも減らしたい」
「悩むことなくメールをスラスラ書けるようになりたい」
「少ないやり取りで的確に伝えたい」
「相手の意図を正確に読み取りたい」

 メールは、送信したら瞬時に相手に届く便利なツールです。郵便のように時間がかかるわけでもなく、電話のようにその都度コストがかかるわけでもないため、多くの人が仕事で毎日のように使っています。
 「ビジネス文書は慎重に作成する必要があるけれど、メールは手軽に使える点がいい」と考えている人は少なくないでしょう。一方で、その手軽さゆえか、内容が整理されていない、意図のわからないメールが増えたように思います。
 メールを使いこなすには書く力だけでなく、読み解く力も必要です。しかし、その力が身についていない、足りないことによる弊害が顕著になりつつあります。
 私が常々研修などで伝え続けていることがあります。それは「メールを送ること自体は目的になり得ない」ということです。
 購入代金の振り込みを依頼するメールなら振り込みがある、書類を確認してもらうメールなら確認してフィードバックされる、営業のアポイントメントを取るメールならアポイントメントが取れる──そこで初めて目的を達成したといえます。
 メールを送ることで、望む結果(相手の反応)が得られてこそ、成功なのです

1日のメールの処理時間は3時間以上

 職場のIT環境が整備されたことに加え、コロナ禍を経てテレワークが普及したことなどの影響もあり、メールを使ったテキストコミュニケーションが増えました。私が代表理事を務める一般社団法人日本ビジネスメール協会が行った『ビジネスメール実態調査2022』によると、次のような結果が出ています。

●1日に送信しているメールは、平均16.27通
●1日に受信しているメールは、平均66.87通

 受け取るメールは自分宛てだけではありません。毎日のように届くCCでの共有メール、メルマガや営業メール、管理者宛てに届く通知メールなど、さまざまなメールが受信トレイに押し寄せてきます。
 一方で、Microsoft TeamsやSlackといった「コミュニケーションツール」の利用が増えたという声も聞きます。確かに、これらのツールを導入すれば、メールそのものは大幅に削減することができるでしょう。しかし、テキストコミュニケーションが残ることには変わりありません
 メールだと挨拶や名乗りを書く時間が無駄だからチャットのほうが効率的だという声もあるようですが、挨拶や名乗りを書くのにかかるのはほんの数秒です。どう伝えたらいいか、不快感を与えないか、これで正しいか──そのような点で悩むために時間がかかるのです。それはチャットを使っても同じです。
 つまり、ツールを変更するだけでは、時短への恩恵は少ないといえます。むしろ管理するツールが増えることで効率を落とす可能性すらあります。
 前述の実態調査によると、メール作成に費やす平均時間は次の通りです。

●メールを1通読むのにかかる平均時間は、1分24秒
●メールを1通書くのにかかる平均時間は、6分5秒

 通数とかかる時間をもとに単純に計算すると、1日のメール処理にかかる平均時間は3時間12分36秒となります。コミュニケーション自体を簡略化することは難しいものです。ツールを変えても正直、大差はありません。だからこそ、原因をツールに求めるのではなく、文章の読解と作成のスキルを高めて取り組み方を根底から変えるべきなのです。

速読力×理解力×共感力

 仕事は周囲とコミュニケーションを取りながら進めるものです。テキストでコミュニケーションを取ることが増えている以上、そのスキルを磨いて仕事力全般を高める必要があります。不要なコミュニケーションを整理して合理化を図ります。それでも処理しなくてはいけないメールが大量に残るでしょう。
 そこで、まず取り組むべきことは、読解力を上げることです。メールのトラブルは、誤読によるものが多くを占めます。書いてあることをそのまま読むのではなく、相手が何をオーダーしたいのかを、正しく理解することが重要です。
 例えば、次のようなメールが届いたら、相手は何を求めていると思いますか。

【メールの例】
先日、ネット通販でパソコンを購入しました。
電源を入れたのですが、作動しません。
初期不良の可能性もありますので、交換か修理をお願いしたいです。
来週末の出張で利用したいので、ご対応よろしくお願いいたします。

 相手は「パソコンの交換か修理を願っている」──それだけでは不正解です。相手の望みや頼みを理解できていません。重要なのは「パソコンを出張先で使いたい」という点です。これが読み解ければ、「出張に間に合うように修理する」という目指すべき結果が導き出せます。期日までに修理ができないなら代替機を貸し出すなどの対応ができます。これこそ、メールの正しい読解です。
 深い意味をとらえてメールを読む力がつくと、無駄なやり取りが減り、行き違いを防げるようになります。さらにメールを速く読めれば、効率化ができます
 読解の次には当然、メールを書くことの効率アップを図ります。コツはメールの処理をパターン化すること。メールを速く書けるかは、適切な言葉をいかに速く選べるかにかかっています。そしてその言葉を速く入力するだけです
 メールを使いこなすというと、語彙の多さ、日本語や敬語の正しさに関心が寄せられますが、文章の改善は最後です。いくら美しい文章が書けても、内容がかみ合わなければ、必要なことが書かれていなければ、コミュニケーションは成立しません。メールを使いこなしているとはいえません。

メールのプロが語る時短の極意

 私は、ビジネスメール教育の専門家として、2005年から研修を中心に活動しています。今まで私の研修やセミナーを受けた人は、のべ10万人を超えていることでしょう。そのほかにも、ビジネスメールを中心に33冊の本を出版し、1500回以上メディアで取材を受け、寄稿してきました。17年がたち、メールのマナーはある程度浸透したように思いますが、メールの悩みを聞かない日はありません。
 私が仕事でメールを使い始めてから25年。毎日200~300通のメールを受け取り、50~100通のメールを送っています。コミュニケーションに占める電話や対面の比重を小さくして、メールだけで仕事ができないか。そう考え、試行錯誤を重ねてきました。

「どうやったら一度で伝わるだろうか」
「どうやったらメールの回数を減らせるだろうか」
「どうやったら催促しなくて済むだろうか」
「どうやったら相手が気持ちよく動いてくれるだろうか」

 円滑なコミュニケーションを効率よく取ることが、メールを使いこなすことにつながります。正しい言葉づかいで素晴らしい文章を書くことにとらわれていませんか。送信者と受信者が気持ちよく意思の疎通を図れる、しかも互いに時間をかけずに──それが時短の狙いです。
 本書には、テキストコミュニケーションに費やす時間を削減するための方法をまとめています。その中でもメールに焦点を絞りました。ただそれらは、チャットなどほかのツールにも応用できることばかりです。

「メールを速く読みたい」
「メールを速く書きたい」
「メールの処理時間を短縮したい」

 このような悩みを解決するために、私が持っている力をすべて注いだ一冊です。メールに毎日1時間以上かけている人が対象で、目標はメール1通を10秒で読み、3分で書くこと。そのために必要な要素を本書に盛り込みました。今すぐ効率化のヒントを手にしてください。
 メールの作成に費やしている時間は、1日約99分です。仮に、1通を3分で書けるようになったらどのくらいの時間を削減できるでしょう。答えは、約50分です。年間250日仕事をするなら、これだけで約208時間の削減となります。しかもこの効果は、1年で終わるものではありません。メールを書き続けている限り永遠に受け取ることができる削減効果です。
 それではメール時短の世界にご案内しましょう!

平野 友朗

【本書の紹介動画をご覧いただけます】
■『仕事ができる人は実践している!ビジネスメール最速時短術』紹介動画


【目次】

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