仕事で成果を上げるためには、自分の価値を高めることが重要。Twitterフォロワー数12.5万人を誇るmotoこと戸塚俊介さんは、著書の『WORK 価値ある人材こそ生き残る』で自分の価値を高める70の考え方を紹介しています。その内容や反響について聞きました。今回は3回目。(聞き手は、日経BP編集者で同書担当の中野亜海)

ミッション達成も大切だけれど…

中野亜海・日経BP編集者(以下、中野) 今回は、 『WORK 価値ある人材こそ生き残る』 から、「本当のユーザーは誰か」についてお話を伺います。これはつまり、仕事をする上で、あなたの仕事に対して対価を払っているのは誰なのかを考えよう、ということでしょうか。

戸塚俊介(以下、moto) 本当のユーザーは誰なのかをちゃんと考えると、仕事のやり方が変わってくるという話です。本作では、僕がリクルート時代、「リクナビ」(新卒採用サイト)の会員登録数を増やすという会社のミッションに対して、大学と協力してアクションしていったものの、結果として大学のためになっても、学生のためにはなっていなかったのではないかと会社で問われたエピソードを紹介しています。

目先の数字やノルマにとらわれていないだろうか? 本当の価値は、もっと先にある
目先の数字やノルマにとらわれていないだろうか? 本当の価値は、もっと先にある
画像のクリックで拡大表示

moto 僕らに課されていたミッションは、「リクナビ」の会員数を増やし、就活生により多く使ってもらうこと。そこで、学生にリーチするのではなく、大学と協力しました。会員登録者を増やすという、会社から与えられたミッションを達成すれば確かに自分は評価されるけれど、その先にいるユーザーである学生に「リクナビは微妙じゃん」と思われたら終わりなんです。学生に対してきちんと価値を提供しなければいけないと、当時、僕は学びました。このように本当のユーザーを見失ってしまうことは、他の会社でもよくあるのではないでしょうか。

中野 なるほど。数やお金、自分のノルマみたいなことばかり考えてしまって、本当に大事なものが見えなくなってしまう…ということですね。

moto その通りです。もちろん会社のいう数字を達成することは大事で、KPI(重要業績評価指標)の設定が会員数になってしまうのは仕方がないと思います。ただ、本来、誰に対してどんな価値を提供したらいいのかをきちんと考えることが大切だと思います。

中野 これこそ、会社に使われてしまう問題に通じるというか。

moto 難しいところで、会社の目標を達成していればいいという意見も依然としてあって、それが別に悪いとは言いません。けれど、本来のユーザーは誰なのでしょう。結局、自分たちだけ満足しても実際に使っているユーザーが微妙だと思っていたら、いつか会社としては終わってしまう可能性があるわけで、そういうところも考えて仕事をしようという話です。

中野 常にそういったことを考えておくことで、本当に価値あるものを作ろうという気にもなります。しかも、会社自体が本質を考え抜いていれば、会社も成長するのですね。

部門や予算の枠を取り払おう

中野 本質を考えるという意味では、本の中に「課題解決のためには、予算なんてあってないようなもの」という項目もあります。これは上級編だなと思いました。

moto お客さんのためにできることを考えていったとき、予算内でできることは限られています。しかも、お客さんが部門ごとに切り出されていると、それも考えた上でできることを提案しがちです。それでももっと深く考えて、その部門だけの問題ではないという話まで持っていけるかどうかがカギです。

 例えば、人事で採用の課題についての話になったとき、ホームページの改修や採用イベントをしましょうという話で片付けてしまうのではなく、そもそも社長がもっとメッセージを打ち出したほうがいいとか、会社の事業内容をもっと世の中に伝えるような広報をしたほうが回り回って採用につながるとか、そういう提案もできるはずです。

 本当にお客さんの課題解決になっているのか、本来解決すべきことは何かと自分に問いかけ、解を持って行動していくことが自分の市場価値の向上につながります。それが実現できれば、成功も失敗も含めて、お客さんにとっても自分にとってもいいものになると思います。

本質的課題と目の前の課題をひも付ける

中野 それは、経営者の視点にも通じますね。

moto そうなんです。僕は営業に行くとき、お客さんが何に困っているのかをフロントの人に聞いて理解する一方で、上場企業ならIR(投資家向け広報)資料を見て、今後の経営課題を把握して動くようにしています。本質的な経営課題と、自分が向き合っているフロントの担当者の課題がどうひも付いているのかを自分なりに考え、仮説を持って動いていくことが大事なのではないでしょうか。

中野 なるほど。本質的な課題と目の前の課題をひも付ける視点も大事なのですね。

moto IRに経営課題が出ていて、だからフロントからこういう課題を解決してほしいという話が来るんだなとつながると、こちらからの提案も変わるわけです。

中野 お客さんのためを考えるところを起点に、仕事の可能性がどんどん広がっていく感じがありますね。では最後に、motoさんから読者へメッセージをお願いします。

moto 帯にあるように、今、目の前にある仕事に全力を尽くしてください。これに尽きます。仕事で悩んだときなどに『WORK』を何度も読み返し、参考にしてもらえるとうれしいです。

構成/佐々木恵美

音声でこの記事を楽しみたい人は…