声優を核に、舞台やドラマ、ラジオまで活躍の場を広げる梶裕貴さん。2018年から3年にわたる「日経エンタテインメント!」の人気連載を単行本化した『梶裕貴 対談集「えん」』について、同書の執筆を担当したライターの実川瑞穂さんと、「日経エンタテインメント!」編集部の平島綾子さんに話を聞きました。今回は1回目。(聞き手は、「日経の本ラジオ」パーソナリティの尾上真也)
仕事への真摯な姿勢を感じられる1冊
尾上真也・「日経の本ラジオ」パーソナリティ(以下、尾上) 今回は、声優の梶裕貴さんによる人気連載を書籍化した『 梶裕貴 対談集「えん」 』を取り上げます。「日経エンタテインメント!」編集の平島綾子さん、担当ライターの実川瑞穂さんにお越しいただきました。まずは平島さん、こちらの本の紹介をお願いします。
平島綾子・「日経エンタテインメント!」編集(以下、平島) 声優の梶裕貴さんが「日経エンタテインメント!」誌で2018年9月から連載した3年分を再構成して、1冊にまとめた書籍です。
尾上 梶裕貴さんといえば、代表作に『進撃の巨人』のエレン・イェーガー役などがあり、トップ声優になられています。また、声優としての活動だけでなく、テレビなどにも出演なさっていますね。
平島 そうですね。ドラマ、舞台、朗読劇、情報番組などでもご活躍です。
尾上 対談集を読んでみると、梶さんは本当に多彩なお仕事をされていて、それぞれのお仕事に真摯に取り組まれている姿勢が感じられました。
平島 まさにその通りだと思います。『進撃の巨人』をはじめトップ声優として活躍しながら、特に新型コロナウイルス禍になった連載の後半は、いろいろ悩みながらも、とても真摯にお仕事と向き合われていました。さまざまな方との対談を通して自身の考えを成長させていったことも感じられて、魅力的な本に仕上がっていると思います。
「えん」という言葉に込められた思い
尾上 タイトルの「えん」には、どんな思いが込められているのでしょうか。
平島 このタイトルは、梶さんご本人が決められました。ご縁の「縁」と、演じるの「演」、この2つの意味を込めたタイトルになっていて、お仕事の現場でご縁があった29人の方たちと対談を展開しています。
尾上 演じることに対しての梶さんの思い入れも、言葉の端々から見て取れますね。
実川瑞穂・ライター(以下、実川) 声優さんは今、いろいろなメディアで注目されています。だからこそ、ただキャラクターの声を吹き替えているだけではなく、実際にどうやって演じていくのか、声優という仕事の本質をちゃんと伝えられているのかという思いが梶さんのなかにあったと思います。声優さんがどんなことを考えて仕事に向き合っているのかが語られているので、梶さんや声優について詳しくない読者の方でも、声優は声の役者なのだと理解してもらえる本になっていると思います。
尾上 声優の仕事というと、アニメのキャラクターなどの吹き替えなのかなという認識でしたが、梶さんご自身は「声だけで表現する技術者」「声の役者」とおっしゃっています。まさに演じるということに対して、梶さんの強い思いを感じました。
平島 そうですね。対談のお相手は、山寺宏一さんのような声優の大先輩や同業の方、映画監督、アニメーション監督、舞台の演出家、俳優、芸人、作家、漫画家まで、エンタテインメント界の第一線で活躍されている方がそろいました。仕事に対する心構えまで掘り下げて対談されているので、アニメや声優に興味があってもなくても楽しんでいただけると思います。
本のカバーを外すと、そこには
尾上 本の冒頭には、梶さんご自身へのインタビューが載っています。梶さんがキャリアを築くなかで、中学生から高校生、養成所、事務所と現在に至るまでの間にもいろいろなご縁があったと話されていますね。
平島 はい、対談集にはところどころに梶さんのお話が入っています。経歴に関わることや1年の振り返りなど、ご自身の言葉でしっかり語ってくださいました。
梶さんはご自身でTwitterやInstagramでも発信していて、ファンの皆さんとの交流をとても大切にされていると思います。
尾上 そういう一つ一つのご縁を大切にしながらここまでキャリアを築いてこられて、3年間の連載を通じて積み重ねられてきたものが、この1冊の本にまとまったのですね。
平島 発売時、本のカバーには3つのバリエーションを用意しました。全国の書店さんに置かれたカバーは白いTシャツを着た梶さんの写真。Amazonさん限定のカバーは外で撮影したもので、アニメイトさん限定のカバーは伸びをしている笑顔の梶さん、の3タイプです。
尾上 カバーを外した表紙には、梶さん直筆の「えん」という平仮名と丸いマークが描かれていて、これもすごくすてきだなと思いました。
平島 これは連載のとき、梶さんご自身に筆で書いていただいたものです。数種類の筆ペンや紙をお送りして、「えん」という平仮名と、それを囲う丸もご本人が描かれました。
尾上 相当こだわりのある「えん」と丸なんですね。本を手に取られた方は、ぜひカバーを外して見ていただきたいなと思いました。
構成/佐々木恵美