スマホ以来の革命として、GAFAをはじめ世界が注目するボイステック。2021年6月22日に発売された 『ボイステック革命』 の著者で、音声プラットフォームVoicyのCEOである緒方憲太郎さんに、本作りの裏話と読みどころを聞いた。今回は1回目。(聞き手は、『ボイステック革命』編集担当の雨宮百子)
アジェンダを作るより、しゃべったほうが早い
雨宮百子・『ボイステック革命』編集担当(以下、雨宮) 緖方さんは、音声コンテンツでいろいろな情報を仕入れているイメージがあります。実際、音声コンテンツをどのように活用されていますか。
緒方憲太郎(以下、緒方) 音声には、「発信」と「受信」がありますよね。僕は、特に「発信」のテクノロジーを日々活用しています。こまめな発信は、ほぼ声でやっている。今週はこういうことに気を付けよう、今日のプロジェクトはこういう話にしようといった社内向けの発信も、アジェンダを作っている暇があったら、5分しゃべって聞いてもらうほうが早いんですよ。企業として採用情報を発信する際にも、声でコンテンツを残しておいて活用することもある。とにかく、僕は声で発信するようにしています。
「受信」としての聞く時間は、移動中が活用しやすいと思うのですが、僕には移動時間がほとんどないんです。今、毎日の移動時間を縮小しようという計画で、オフィスの6軒隣に住んでいて。だから、寝起きのベッドで、スマホで今日のニュースなどを音声で流すようにしています。服を着替え終わる頃には番組を2つほど聞けている。お風呂の中でも聞いていますね。
雨宮 スピーカーフォンやAmazon Echoなどのデバイスで聞いているのですか。
緒方 スマホのアプリで、スピーカーフォンを使って聞いていますね。朝、目覚ましを止めるついでにVoicyを開いて再生するんです。ちなみに僕は目が悪くて、コンタクトを入れていない状態では視覚によるインプットがしにくいので、耳からインプットするようにしていますね。
忙しい人用の音声コンテンツが増加
雨宮 今回、書籍を編集して、私が音声コンテンツに関して一番面白いなと思ったのは、忙しい人ほど有用なメディアだというところです。最近、Voicyでもいろいろな方が発信するようになりましたが、どんな反応がありますか。
緒方 本に書いたように、音声の特徴はいろいろあります。何かしながら情報収集できるという意味では、かなり有用です。インターネットでは、時間をかけて発信している人が多く、発信しているのは、時間に余裕がある人かプロか、のどちらかだったんじゃないかと思うんですよね。
でも、暇な人やプロが考えたコンテンツって、忙しい人向けじゃない。すごくしっかり作られていたり、長く抑揚をつけて作られていたり。短い時間でサッと情報取得できるコンテンツは、ネット上にあまりたくさんはなかったと思うんです。Voicyなどを通して、忙しい人用のコンテンツが音声でたくさん出てきたというところには、新しい面白さを感じています。
雨宮 発信者はVoicyでも増えていますか。
緒方 一昨年くらいまでは、発信者は300人ほどでしたが、最近は800人ほどに。審査で選ばれた人がどんどん入ってきています。審査通過率が1~3%にもかかわらず、今、増えていますね。そろそろ1000人台に乗る感じです。
雨宮 すごいですね、ジャンルも多岐にわたっていますよね。
緒方 ニュースなどフレッシュな時事ネタはもちろん、自分の人生について話す人も結構多く、ビジネスマンからミュージシャン、芸人までいろいろな人が発信者になっていますね。実際に会ってお話を聞きたいと思うような人たちが、インターネット上に声を残してくれるようになった。そういう世界がきています。
地球上にある音声が全て財産になる
雨宮 これから特に増やしていきたいジャンルはありますか。
緒方 もう、いっそのこと、地球上にある音声が全部載ったらいいのにと思っています。だって、それが全部資産になるから。今まで、人が話した内容をそのまま残しておきたかったシーンはたくさんあるでしょう。でも結局、音声ってその場にいないと聞けなくて、全部垂れ流されていたんですよ。それが全て社会全体でシェアできるようになった。こうして、インターネット上で、その人の思考に触れる時代がもうそこまできたなという感じですね。
雨宮 書籍を作っている過程で、声の遺言状というお話も出てきましたね。
緒方 雨宮さんには相当お時間をいただいて、いろいろ話しましたね。逆に、一緒に作ってみてどうでしたか。
雨宮 最初は、『ボイステック革命』というと、Clubhouseの印象が強くて。Clubhouseは一時期すごいブームになりましたけど、だんだん下火になってしまいましたよね。何かすごいというのは分かるけど、ラジオやスマートスピーカーと何が違うんだろうとモヤモヤしていました。しかし、取材をしながら話して、教えていただくにつれて、なるほど、だからGAFAが注目しているのかと腑(ふ)に落ちました。これだけ情報が世の中にあって、しかも情報革命につながるんだという流れを理解できるようになりました。
緒方 おお、うれしい。初めは半信半疑でしたもんね(笑)。
雨宮 そうですね(笑)。でも、同じ感覚の人はたくさんいるような気がします。
緒方 だからこそこの本で、活字の力だけを信じている人たちにも、声の可能性について届けたかったんです。
雨宮 その思いは多分届いていますね。Twitterなどの皆さんの反応を面白く楽しく読ませていただきながら、そう実感しています。
構成/佐々木恵美