大学受験対策といえば、猛勉強して知識を頭にたたきこむこと――長らくそんな時代が続いていました。しかし今、大学受験が大きな変化を遂げています。センター試験が大学入学共通テストに変わったことを筆頭に、それまで知識を問うものであった一般入試は、思考力や表現力を問うものに変わりつつあります。それ以上に大きく変わっているのが、「総合型選抜」と「推薦入試」です。いまや大学生の50%は、一般入試以外の方法で入学しているといいます。今、大学受験では、どんな変化が起こっているのか? 新刊『 勉強嫌いな子でも一流難関大学に入れる方法 』(竹内健登・著)から抜粋します。4回目は、就活と大学入試の関係性について。

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なぜ「アピール入試」がオススメなのか

 当塾の門をたたいてくださった親御さん・お子さんには、勉強や一発勝負の試験が本当に得意な場合を除いては、アピール入試(総合型選抜・公募推薦など、アピール力が問われる入試形式)を検討していただきたい、とお話ししています。
 それは、就職活動において一流企業が求めている条件と、アピール入試で難関大学が求めている条件は似ている部分が多いから。言い換えれば、効果的なアピール入試対策が、効果的な就活対策にもつながるからです。

 次の表は、上位大学のアピール入試におけるアドミッションポリシー(入学者受け入れ方針)です。ここでは、各大学の全体のアドミッションポリシーを紹介します。大学によっては、学部ごとにさらに定められていることもありますので、志望する場合は必ず個別に確認してください。

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 学校によって多少の違いはあるものの、「自ら思考」「主体性」「問題解決」「創造」「コミュニケーション力」「グローバル」などの単語が何度も出てくることに気づくと思います。
 学問分野における上位大学の役割は、「研究で新しい知を論文という形で社会に打ち立てていくこと」です。そして研究においては、調査やフィールドワークの際に多様な関係者と協働していく必要があります。こうした背景から、前述のようなアドミッションポリシーになるのでしょう。

 こうしたキーワードを念頭に置きつつ、就活のほうにも目を向けてみましょう。当社のシンクタンク「ホワイト企業総合研究所」では、毎年、ホワイト企業ランキング上位50社と、それらの企業が求めている人材の要件をまとめています(詳細は書籍を参照)。
 その要件に見られるのは、「自ら思考」「主体性」「問題解決」「創造」「コミュニケーション力」「グローバル」などの単語です。

 この一致は偶然ではありません。企画・調整をしながらビジネス課題の解決を行ったり、新商品を開発したり、営業部署なども含めた周囲を巻き込んで関係各所に展開していくものが多いため、このような人材像を求めているのだと思います。これらの共通点がIQとEQ(こころの知能指数)であることは、拙著『 子どもを一流ホワイト企業に内定させる方法 改訂新版 』で述べている通り。
 このように、上位大学と一流企業が求めている人材には、かなりの共通点があるのです。

 さらに言えば、上位大学も一流企業も、選抜の際に見ているのは受験者の「ポテンシャル」であり、「どのような人材が〝ポテンシャルあり〞とみなされるか」という評価も似通っています。

 これは就活塾と大学受験塾の2つを運営していて如実に感じることですが、どちらの試験も「かわいげのある後輩・若者」が受かる傾向にあるのです。
 なぜ、そうなるのか。それは、新卒入社の大学生も、大学に入学してくる高校生も、どちらも受け入れ側からすれば「弟子」や「育成対象」であり、これから成長していく卵であるからです。
 指導する側の人間からすれば、ある程度の地頭のよさがありつつも、熱意やコミュニケーション力があるような「指導しがい」と「伸びしろ」、そして「かわいげ」のある候補者を求めているということになります。そのため、アピール入試も就活も、見るポイントが似てくるのです。

「大学受験が就活に生きる」とはどういうことか?

 上位大学と一流企業が求める人材には共通点があり、さらにその選考スタンスも似通っている。それはつまり、受験の段階でアピール入試に慣れておけば、就活でも十分に実力を発揮できるということに他なりません。

 事実、求められる能力面においても、やるべきタスクという観点においても、アピール入試と就活は非常に似ています。
 どちらの試験も、自分の志望する学問や業界についての情報を事細かに調べると同時に、自分がこれまでに行ってきたことと今後行っていきたいことをうまく関連づけてアピールしなければなりません。

 アピールをする際には、ある程度の論理的思考力と、人当たりよく相手の質問に回答していくコミュニケーション力が必要であるということも似通っています。加えて、アピール入試においては小論文試験で論理的思考力が測られ、就活においてはSPI試験で国語と算数の論理的思考力が測られる、という点も酷似しています。

 こうした点から、昨今の入試改革に対応すると同時に先々の就活のことも見据えるのであれば、大学受験においてはアピール入試に挑戦してほしいのです。そのほうが、より上位校に合格しやすいですし、受験の経験が就活でも生かせるのですから。

「アピール入試強者」が「就活強者」にもなる

 実は、私がホワイトアカデミー高等部をつくったのは、この「大学受験(アピール入試)と就活の類似性」が深く関連しています。多くの大学生は、就活で「人生初」ともいえる壁にぶつかります。それは、一般入試を経て大学に入った学生の多くは就活になってはじめて「学力」以外の基準で選考を受け、「表現力」や「発信力」を問われることになるからです。

「あなたにはどんなポテンシャルがありますか?」
「自ら思考できますか?」
「主体性はありますか?」
「問題解決能力はどうですか?」
「創造性やコミュニケーション力はどのくらいですか?」
「グローバルへの視野はありますか?」
……。

 こうした、「企業が知りたいこと」をアピールするのは簡単ではありません。「就活では何を見られているのか」を理解できず、挫折する人もたくさん見てきました。多くの学生が本当に大きな苦労をするのです。

 しかし、「アピール入試」対策でこうした能力を磨き始めることができれば、その取り組みはそのまま、就活対策となります。アピール入試で大学受験を頑張るというのは、学歴だけではなく、その後の人生に直接的によい影響を与えてくれます。
 こうした思いから、大学受験と就活の両方を成功させ、みなさんの人生の質を大きく向上させるためにとつくったのが、高等部なのです。

 さらに言えば、自分の考えをアピールして相手を説得していくという能力は、受験・就活にとどまらず、その後の社会人として活躍していく中でも常に求められるものです。営業、渉外、広告、企画、経営などあらゆる仕事で、自身の考えを持ち、論理的かつ熱意のある形で相手に伝え、相手を動かすことは不可欠です。
「日本は今、世界から遅れをとっている」という主張は様々なところで目にしますが、そうした背景にも、こうしたアピール不足、発信力不足があるのではないでしょうか。

 今回の入試改革を機に、自身の意見を発信して他者を動かす成功体験を持った若者が増え、今後の日本の経済や外交面におけるプレゼンスが向上されることを願うばかりです。

(写真:Shutterstock)
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大学生の5割は「総合型選抜」「推薦」で入学する時代。国公立大学・難関大学も例外ではありません。勉強が本当に得意な子以外は、「一般入試」以外の戦略が有効です。「親世代の古い常識」でチャンスを逃しては大変。最新の受験動向を知り、「考える力」「表現する力」を身に付けさせましょう。効果的な大学入試対策が分かり、将来の就職活動にも役に立つ、必読の一冊です。

竹内 健登(著)、日経BP、1760円(税込み)