なかなか90を切れない停滞ゴルファーと、安定して80台~70台で回る上級ゴルファーの違いとは何か? それはいつも最高の結果をイメージしてゴルフをするのか、最悪の結果を考えて危機回避に徹するのか、といった「考え方」の違いによるところが大きい。3万人以上のアマチュアゴルファーのスコアを改善してきた、尾林弘太郎レッスンプロの『ロジカルゴルフ スコアアップの方程式』を紹介する。
ゴルフのスコアアップには方程式がある
ゴルフの本は本のジャンルの中でも不思議なものだと思う。有名なプロゴルファーが著した本がヒットするかといえばそんなことは決してない。無名なレッスンプロが書いたものでもヒットすることはある。要は内容が重要なのだ。それも読んで楽しければよいといった小説の類いとは違い、読んでみて自分のゴルフが上達できる本にヒットの可能性がある。
つまり、いくら有名なプロゴルファーが書いたものでも、読者が上達できると思えるものでなければヒットしない。では、上達するとはどういうことか。それはスコアを良くすること。そしてこのことは、スイングを改善すれば達成できることでは決してない。重要なのは「ゴルフ頭脳」を改善することなのである。
本書『ロジカルゴルフ スコアアップの方程式』は尾林弘太郎というレッスンプロが著したゴルフ上達の指南書である。一介の無名のプロであった彼が私の所に持ち込んだ原稿は、一読するなり、これは本当に読むだけでスコアアップできるかもしれないと思わせるものだった。
『書斎のゴルフ』の編集長であった私の所には多くのレッスンプロから売り込みがあったが、いずれもスイングを改善できるとうたうものばかりで、スコアが良くなることをうたったものはほとんどなかった。
スイングが良くなってもスコアは必ずしも良くはならないのがゴルフである。ところが、レッスンプロの多くはスイングの改善ばかりにこだわる。よって、往々にして生徒は少しもスコアが縮まらないというのが実情だ。しかし、尾林プロは違っていた。生徒のスコアを少しでも良くしたいと心底思っているプロだった。よって、この本は徹底的にそこに焦点が当てられていて、まさに「ゴルフ頭脳」を良くする内容だったのだ。
上達したければ上級者のように考える
この本の「はじめに」を読んでもらえれば、まずはそのことが一目瞭然である。「上達したければ上級者のようにゴルフを考えること」とうたっている。つまり、上級者の「ゴルフ頭脳」を持つことがスコアを縮めることにつながると尾林プロは看破している。
そして、まずは男性であれば89のスコア、女性であれば95のスコアを目標にすることを提案する。そのスコアを平均して出せるようにすること。それはどんなゴルファーであっても可能だと尾林プロは断言する。つまり、年老いた人でも、体力のない人でも、運動音痴と言われる人でも「上級者のゴルフ頭脳」を持てば達成可能なスコアだというわけである。
こうして、第1章から「上級者の思考」を一つ一つ書いていくわけである。「上級者の思考」を知り、それを理解して実践すれば、たとえそれが完璧にできなくとも、100を打つ人、90を切れない人も、80台のスコアが出せると断言する。
ちなみに尾林プロは長年ゴルフをしてきて、100をたたくようなゴルファーを「停滞ゴルファー」と呼んでいる。ゴルフの停滞トラックをぐるぐる回っている人を袋小路から脱出させたいと真剣に考えているのだ。ただし、何もしなくても上達するという魔法はないこと、練習をしないでも上達することはあり得ないことを最初に断っている。とはいえ、この本に書かれていることを理解して実践するだけで、練習をさほどしなくてもスコアを10打縮めることは不可能ではないと私は考える。読めば読むほどうまくなる本である。
「ゴルフ頭脳」を鍛えよう
では、「上級者の思考」とはいかなるものか。尾林プロは大きく2つあると言う。1つはスイング思考であり、もう1つはコース攻略思考である。スイング思考は良いスイングを行おうとすることよりも、ミスをしないスイングをするということ。そのためには自分の犯しやすいミスを知り、それを防止する体の部品管理を行うことだとしている。上級者のスイングマネジメントだ。
コース攻略思考も、上級者の考え方を理解できるようにアドバイスする。それだけで考える力が付いて、スコアを縮めることができるようになるというわけである。それには各ホールでティショットを打つ前にレイアウトを見て危険なエリアを知ること。知った上でどこに打つのかを決めること。風を感知して、影響を考慮すること。使うクラブを決めて、8割の力でスムーズにスイングすること。正確に構えたら余計なことは考えず、ボールに集中して、クラブヘッドの芯で打ち抜くことである。
実際にはそのことを完璧にできなくともいい。考えられるようになるだけでスコアは縮まるわけで、これまでのようにがむしゃらに飛ばすことだけを考えていたのとは大違いであると知ることが重要なのだ。
セカンドショットではまずは必ずボールのライをチェックすること。フェアウェイでも傾斜を丹念に見る。小さな傾斜でも結果は左右されるし、ミスも生まれる。ラフではボールがどれほど芝に潜っているかをチェック。ピンの位置やグリーンの形状、グリーン周りの状況も知った上で、風なども考慮してパーの取りやすい場所を狙う。状況によってはグリーンを狙うことをやめて安全な所へ刻む。ボギーオンでもパーのチャンスのあることを考える。パーはパーオンしなくても取れる。そうしたことを考えられるようになることが大切なのである。
アプローチもまずはライを確認する。ピンの位置を確認して、最も寄りやすいクラブと打ち方を選択する。つまり、パターやアイアンでの転がしから考え、それができなければウェッジを持つという段階的な思考だ。こうしてピンに寄るボールの落としどころを考える。あとはそこに打つだけである。そうすればピンを狙わずとも自然に寄るということになる。となれば、パーになるチャンスは増えるし、仮に寄らなくてもボギーでは上がれることになる。
グリーンに乗ったらいかに3パットをしないか、2パットで収められるかを考える。ボールからホールまでの傾斜を見る。まずは上りか下りかよく見て距離感を決める。次にどれほど曲がるかをチェックする。こうしてボールからカップまでのラインを想定し、そのライン上を転がるように打つだけである。それができるようになれば2パットでは収まるし、ワンパットで入る確率も増える。
何も考えず、むやみやたらにピンを狙いカップを狙っていた人にとっては驚くべき内容ばかりだろう。しかし、尾林プロが教える「上級者の思考」を知るだけで「ゴルフ頭脳」が鍛えられ、スコアが縮まるのである。まさに世のゴルファーにとって、読む価値のある希少本である。
(後編に続く)



