新人・河村が音部大輔さんの新刊『 マーケティングの扉 経験を知識に変える一問一答 』の編集中に学んだtipsを、つれづれなるままに書いています。今回はちょっと真面目になっちゃいましたー。商品を手に取ってもらうには、名前を覚えてもらうのが先か、それとも好きになってもらうのが先か、というお話。
(第1回「誰に何をどう伝える?」から読む)
(第2回「タイトルを決める!」から読む)
(第3回「校正に疲れたら…」から読む)
今日は前回お約束した通り、河村が『マーケティングの扉』編集中に学んだマーケティングtipsをお伝えします。
第24項「認知先行の誤解 人は『好き』になったから名前を知る」から。こちらの質問に回答した項です。
消費者に商品を買ってもらったり、提案を受け入れてもらったりするためには、ベネフィットや課題を認知してもらうことが大切だと思っています。消費者に商品を認知してもらうために、音部さんが大切にしていることや工夫していることがあればお聞かせください。
そもそも商品を認知してもらうためには、まず商品名を知ってもらうことが必須なのでしょうか? 音部さんは「否」と言います。
「名前を知ってから好きになった人と、好きになってから名前を知った人は、どちらが多いでしょう。たぶん後者です」(本書第24項より)
たしかに。例えば、あなたは今、ネットショッピングをしているとします。いろいろ見てると広告が出てきて、「あ~なんか新しいビール出たんだ~」となります。でも、一瞬名前を見ただけでは、次の日も覚えてるかなんて分からないですよね。だからその新ビールを好きになる余地などないかもしれません。
今度は、めちゃめちゃ飲酒したい日を想像してみてください(河村さん、どんだけお酒が好きなんですか? 編集・酒井)(実際そこまで好きでもないです 河村)。まず出社のため外に出ると暑い、ビール飲みたい。原稿が進まなくて嫌になる、ビール飲みたい。できれば暑さも嫌なことも吹っ飛ぶような、きんきんに冷えたやつ。そんなときふと思い出したのが、最近よく目にするビールのCM。あのイケメン俳優がビジネスパーソンにふんし、上司に怒られたりしながら夏空の下、オフィス街を駆け回ります。CMの最後にはビールをごくごくと喉を鳴らしながら飲んで体をクールダウンし、「く~っ」とか「ぷは~!」とか「うまい!」とか叫んでリフレッシュする、というあれです(架空)。
商品名はしっかり覚えてないけど、青っぽいイメージで、なんか体の熱を取ってくれそう。買ってみるか。スーパーで買う前に、「俳優の名前 青 クールダウン ビール」と検索すると、商品名がヒットします。まだ実際にそのビールを飲んだことはありませんが、CMのイメージから、なんとなくの好感は持っている状態です。
「最初に名前を覚えてもらわなくても、まずは好きになってもらえたら、恐らく消費者は名前を調べるでしょう。検索のリテラシーも環境も随分と良くなっているので、消費者自身が商品を通じて解決すべき課題が分かっていて、特徴をちゃんと理解してもらえていれば、きっと探し出してもらえます。ブランドの名前を知ってもらえているということは、マーケティングにおいて大事なことと思われていますが、実践的には大して重要ではありません。(中略)あれがあると生活が良くなりそうだし、便利そうだ。あれがあったらきっとすてきだ。そう思ってもらえることのほうが、名前を覚えてもらうよりも随分と大事なことが多いです。これらは課題やベネフィットの認知であり、ブランド名の認知と誤認するのは不幸なことです」(本書第24項より)
消費者が解決したいことを消費者自身に認識してもらうこと。もしくは、ベネフィット=ブランドを通して消費者がどんな良い体験をできるか、を認識してもらうこと。
ただ「覚えてください!」「このビールほんとにおいしいですよ!」と言ったって、それは提供する側の一方的な呼び掛けであって、消費者的には「ほえ~」で終わってしまいそうです。
何でも押しつけがましさを感じると、ちょっと引きたくなりますよね。だから、消費者に自発的に見たい、知りたい、試したいと思ってもらえるような動機を用意できたら、それはもうエクセレント。上に例で出した「青っぽい、体の熱を取ってくれるビール」は、「暑い日に効くもの」というイメージを描くことで、暑くて飲みたい気分の日に、試してみよう! という主体的な動機で選んでもらえたわけです。
自発的に動きたくなるような動機を考えるには、「人間を理解しましょう」と音部さんは言います。マーケティングではないですが、考えてみれば主体的な動機を用意するって普段の人間関係でもやっている(というかできたらいい)ことですよね。
この前この連載を読んだ某日経デザイン編集長から、突然チャットが来ました。以前から企画していた連載をやってみないか?と。「河村編集中に感動し(※河村の心中:感動……?)お願いしたい仕事があり。こういうテンションに合いそうな企画だし、著者さんと二人三脚で長期連載をやることは、いい経験になるよ」(←意訳)
ただ「やってください」と言われるのと、「あなたのこういうところがいいと思うから、この仕事をやることでもっとそこが伸びるし、他にもいいことあると思うよ」と言われるのでは、大きくモチベも、仕事への向き合い方も変わりそうですよね。
本書の第17項「消費者理解は『相手を気にかける』ことにほぼ等しい」では、相手を気にかけ理解することでパートナーや友人といい関係を築けるのと同じように、消費者理解にも相手を気にかける姿勢が必要だと書かれています。
某日経デザイン編集長、連載読んでくれたんだ~と、見てくれている感がうれしかったです。新連載がんばります。その前に『マーケティングの扉』、がんばります。いっぱい売るぞー。
4月、新たなスタートの時期。音部さんもこの春から、早稲田大学MBAの非常勤講師として「マーケティング論」の担当をされることになったそうです。新学期、新生活のスタートを切られた方へ、音部さんからメッセージ
「4月から大学院に通い始めたり、就職や転職、異動があったり、環境や職場が変化された方々は、緊張が続いているかもしれません。でも、もう少しでゴールデンウィークです。あと一息がんばっていきましょう! 『マーケティングの扉』もいよいよ発売開始です。ぜひ手に取ってみてくださいな」
(第5回に続く)
[日経クロストレンド 2023年4月25日付の記事を転載、一部改変]
マーケティング分野で活躍したいと願う若きビジネスパーソンや学生必読の書。元P&Gを筆頭に数々の著名企業マーケティング部門を率いてきた音部大輔氏が、今さら聞けないマーケの疑問に加え、キャリアや仕事の悩みにも全力回答! あなたの「マーケティングの扉」を開きます。
音部大輔(著)、日経BP、1980円(税込み)
『マーケティングの扉』発売記念
著者・音部大輔氏が皆さんのマーケの疑問に答えます!
詳しくはこちらから↓ https://xtrend.nikkei.com/info/18/00006/00188/


