たぶん、いちばん時間をかけて決めたのは表紙です。皆さんの記憶に残っている本の表紙はありますか? 河村は正直、本の表紙デザインの意味とかあまり考えたことがなかったので、超印象的と思うデザインにまだ出合えていないのですが、今回書籍『 マーケティングの扉 経験を知識に変える一問一答 』をつくって考えが変わりました。超細部にも意味が込められていたりするので、本の内容と照らし合わせながら表紙デザインを見てみると、いろいろ発見があるかもです。私も今度やってみます。

(第1回「誰に何をどう伝える?」から読む)
(第2回「タイトルを決める!」から読む)
(第3回「校正に疲れたら…」から読む)
(第4回「名前が先?好きが先?」から読む)

左から新刊『マーケティングの扉 経験を知識に変える一問一答』の書影、著者の音部大輔さん、河村です
左から新刊『マーケティングの扉 経験を知識に変える一問一答』の書影、著者の音部大輔さん、河村です
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 本日も書籍編集のお話をさせていただきます。

 …が、最初に出版記念イベントのご案内をさせてください!

 2023年5月18日(木)の午後7時から、『マーケティングの扉』の出版記念イベント兼セミナーを行います。ぜひ皆さま、ふるってご参加くださいませ! 著者の音部大輔さんをはじめ、ユーグレナ執行役員の工藤萌さん、傘のシェアリングサービス「アイカサ」を展開するNature Innovation Group(東京・渋谷)の取締役CMO(最高マーケティング責任者)、黒須健さんがご登壇。『マーケティングの扉』の世界を実際に体験いただけます。というのもこのイベント、講師陣に直接日ごろのマーケの疑問やキャリアの悩みを相談していただけるんです! 貴重~。

 ぜひ会場で、音部さんに書籍執筆の舞台裏も聞いてみてください。河村もいるので語りましょう~。私自身も音部さんにリアルでお会いするのは久々なのでいろいろお話しすることがあり、楽しみです。…といいつつ、本コラムでのご案内が開催直前となっておりますので「当日、会場に行くのは難しい…」という方も、どうかご安心を。リアル会場とオンラインのハイブリッド開催を予定しております。
>>詳しくはこちらから

 以上、宣伝でした!

 そしてここからが本題。今日は、『マーケティングの扉』の表紙がどうやって決まっていったかを明かします。これがまた振り返るといろいろフラッシュバックして1万字超えそうなので(たぶん書籍制作過程で発生するさまざまな決定の中で、いちばん時間をかけて決めた)、2回に分けてお送りします!

 今回はデザイン決定までの紆余曲折(うよきょくせつ)。次回は色決定までの紆余曲折。

 事前の打ち合わせで、なんとなく表紙デザインについて話していた要素はこの4つでした。

  1. 洋書風に。
    「Open the door to your next stage !」のような文言を入れる
  2. 新しい世界へ向けた「扉」な感じ
    (想定読者である若手に向けたアドバイス、入門的な本なので)
  3. 少し派手さのあるポップな雰囲気も
    (若手に好まれそう)
  4. 「かわいい」雰囲気は避ける
    (マーケティング本はかっちりした印象のほうが手に取られそうという当社販売部の意見)

 そしてこの4要素を酒井さんがデザイナーさんに伝え、最初の14案が出てきました! というか、書籍内容となんとなくのイメージからデザイン案をつくってくださるデザイナーさん、すごすぎませんか?

 そこから4案に選定。4案を選んだポイントは、まず色やデザインに既視感がないこと。マーケ本・ビジネス本が並ぶコーナーにあまりなさそうな色使いとレイアウトがいいねと絞りました。14案の中には、青や紺色系のもの、そして白地に寒色系のものも多かったのですが、書棚で一目見た時の視認性を考え、黄色やオレンジといった、暖色系を中心にピックアップしました。さらに一目見たときのタイトルの分かりやすさも重要です。

 あと、デザインを決めていくうえで一貫して重視していたのが、「持ち歩きたくなる本かどうか」。持ち歩きたい本は対象読者の年代などにもよってだいぶ変わるだろうし、書籍制作チーム内の各人によってもばらける気がするので難しいですが……。

 想定読者を若手とした本書において「持ち歩きたくなる」を考えていくと、デザインも色使いもどんどんシンプルになっていったように思います。若手向けだからとポップになりすぎないようイラストなどは入れず、色も単色で。

 今ふと思い出したのが、以前同行したZ世代マーケティング連載の取材でのこと。「商品やサービスについてどう感じるか、受け取り方を決めつけてほしくない」というインサイトをすくって、あえて企業側から提供する情報を抑えめにする。そして「Z世代っぽい」を狙ってつくるとZ世代に受けない、という話が印象的でした。シンプルにして余白をつくるのも、若者向けのデザインを考えるうえでは必要かもしれません。

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 次にデザイナーさんからいただいたのは、この10案。

まだドアが全開
まだドアが全開
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 この10案をブラッシュアップする過程では、『マーケティングの扉』というタイトルを目立たせるために、英字や本の帯のコピーなどを容赦なく整理して、すっきりさっぱりしていきました。その代わり、タイトルをより印象付ける意味でも、アイキャッチとしても、扉のイラストは入れようとなりました。

 またここで鍵になったのは、「この本を読んで扉開けていくのは読者本人たちなので、イラストのドアが全開では意図がうまく表せないかも。少し開いている、くらいの表現ができるとすてきです」という音部さんのコメント。

 そしてご覧ください。バージョン3では、扉が半開になりましたね。ほんのちょっとのドアのイラストかもしれませんが、ちゃんと意味があるんです!

ドアが半開になった!
ドアが半開になった!
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ラフを描いてみたりもしました。ちなみに音部さんは、出張先のホテルのドアの写真を送ってくださいました。「ドアの絵描くのってむずいね」って音部さんとなりました
ラフを描いてみたりもしました。ちなみに音部さんは、出張先のホテルのドアの写真を送ってくださいました。「ドアの絵描くのってむずいね」って音部さんとなりました
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 いよいよ大詰め。バージョン3では、タイトルを大きくすることによって「マーケ/ティング」と単語の間で改行されてしまっていました。でも視線の移動なく一発で情報を認識できるようにしたい。そしてこの本のタイトルにおける強いワードは「扉」だとなり、「マーケティング/の扉」となるよう、改行を調整してもらいました。

 加えて、帯の音部さんの写真をカットしたため、シンプルにしたいとはいえだいぶデザインシンプルだな~と思い、どうやったら色で目立たせることができるかを相談していきました。デザインが固まり、ここから色のフェーズに入っていくわけです。ふぅー。

表紙イメージ6
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 あーーーーーなんかやっと完成に近付いてきた。めでたい泣。ここまでで44案(これプラス色調整のバージョン5にも5案ありました)! にしてもほんとにだいぶシンプルになったな。

 というわけで次回、色決めに関する紆余曲折では、音部さんと酒井さんの名言が出ます(個人的につぼってるだけ)。なんで本書が黄色になったのか、黄色で何を表したかったのか、真実はいつも一つ!

 えっ色ってそんな悩むん? と思われるかもしれませんが、河村は実際本屋に行って書棚に近付いたり離れたりしながら、どの色がいちばん目に付くか個人的に調査したほど、今回の書籍づくりを通じて、色って大事なんだろうなと思いました。

 そして大事なことなので2回言うと、5月18日のイベントぜひご参加ください(集客ガチ勢)! 本当に仕事の悩みやキャリアの不安に効く内容になってます。

(第6回に続く)

日経クロストレンド 2023年5月17日付の記事を転載、一部改変]

迷えるマーケターの背中を押す応援の書

マーケティング分野で活躍したいと願う若きビジネスパーソンや学生必読の書。元P&Gを筆頭に数々の著名企業マーケティング部門を率いてきた音部大輔氏が、今さら聞けないマーケの疑問に加え、キャリアや仕事の悩みにも全力回答! あなたの「マーケティングの扉」を開きます。

音部大輔(著)、日経BP、1980円(税込み)