Windowsの内部構造を詳細に解き明かす定番書籍「インサイドWindows」。1992年の初版発行以来(初版の訳書は1993年発行)、Windowsに接するすべてのITエンジニアのバイブルとして永く読み継がれてきた。本稿執筆時点で最新版の第7版は、2018年5月に 上巻 の訳書が発行されたのち、4年の歳月を経て2022年9月に待望の 下巻 の訳書が発行された。第7版完結を機に、「インサイドWindows」の読みどころを、Windows関連の教育研修で実績豊富な横山哲也氏がいち早く解説する。

 自動車の運転をするのに、エンジンの構造を知る必要はない。しかし、エンジンの構造を知っていればその車の「癖」が分かり、目的に合わせた選択ができるかもしれない。また、自動車の整備工は、エンジンの構造を正しく知っておくべきである。

 「インサイドWindows」は、Windowsの内部構造を解説した、世界で最も詳しく、そしてほとんど唯一の書籍である。これを読んだからといってWindowsの操作がうまくなることはないし、今までできなかったことができるようにもならない。だが、ITエンジニアはトラブルの原因を推測する能力は高まるだろう(直せるとは限らないが)。エンジニアでなくても、普段使っているWindowsの内部構造を知るのは非常に面白いはずだ。

 「オペレーティングシステム(OS)」は「人類が作り出した最も複雑な構造物」と言われるくらいで、全体を把握することはもちろん、特定の機能だけでも実際の動作を理解することは非常に難しい。「インサイドWindows」の優れた点は、随所に配置された「実習」を通して、Windowsの内部を探っていくところにある。実習の意味や実行結果を理解するには、ある程度のITスキルが必要なものも多く、手順を追うだけでも難しい場合もあるだろう。しかし、単にドキュメントを読むだけよりはずっと理解が進むはずだ。使用するツールは原著者らが作成したものも含め、すべて無償公開されている。ぜひチャレンジしたいところだ。

 翻訳も非常に優秀で、正確な文章であることはもちろん、最新のWindowsとの相違点や原著の記載ミス、出典の追加、公式ドキュメントとの訳語の違いなども詳細に記載されている。また、Windowsの上級エンジニアにとっては常識でも、一般になじみのない機能やコマンドについては補足説明があり、初学者でも安心して読める(とは言え、OSに関するある程度の基礎知識は必要であるが)。

 各章は独立していて、興味のあるところだけを読んで構わないが、上巻第1章「概念とツール」と第2章「システムアーキテクチャ」だけは最初に読むことをお勧めする。その点さえ注意すれば、「インサイドWindows」は、Windowsの複雑な構造を探るためのガイドとして手放せないものになるだろう。

<評者> 横山哲也(よこやま・てつや)
1987年、日本ディジタル イクイップメント株式会社(現HP)に入社、SEおよびプログラマー向け教育に従事。1994年からマイクロソフト認定トレーナー(MCT)としてWindows NT教育コースを実施。1996年にグローバルナレッジネットワーク株式会社(現トレノケート株式会社)に移籍、現在に至る。主な業務は、WindowsおよびAzure関連教育コースの企画・開発・実施。著書・共著書に『ストーリーで学ぶWindows Server』(日経BP、2022年)、『徹底攻略Microsoft Azure Fundamentals教科書[AZ-900]対応』(インプレス、2021年)、『ひと目でわかるAzure 基本から学ぶサーバー&ネットワーク構築 第3版』(日経BP、2019年)、『グループポリシー逆引きリファレンス厳選98』(日経BP、2017年)などがある。各種勉強会の講師やWeb記事が評価され、2003年4月から2019年6月まで16年間連続でMicrosoft MVP(Most Valuable Professional)として表彰される(最終受賞時の専門はCloud and Datacenter Management)。