「戦略が『わかっていない』方だけでなく、『わかっている』と思っている方にも読んでいただきたい」。こう語るのは、戦略コンサルタントとしての経験も豊富な、慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授である清水勝彦氏です。清水氏が『経営戦略がわかる』(内田大輔著/日経文庫)の魅力を力強く紹介します。
文庫にはもったいない(?)ほど内容の充実した本である。基本に絞ったことで、全4章それぞれで、重要な点が事例をあげながらじっくりと説明されている。
戦略に関する本はあまたあるが、ビジネスモデルを類型化して一覧にし、規模の経済性だけでなく、密度の経済性、ネットワークの経済性などの「6つのE(economies=経済性)」を丁寧に説明した(いずれも第2章)書籍にはじめてお目にかかった気がする。
また多くの企業で使われているファイブフォース分析、VRIOといった基礎的なフレームワークがアップデートされながら解説されているだけでなく、両利きの経営、リバース・イノベーションといった比較的新しい重要なコンセプトもしっかりとカバーされているのもよい。
各章の要約が非常によくまとまっているので、まず要約を読んで全体像を頭に入れてからそれぞれの章を読み進めることを個人的にはおすすめしたい。
『経営戦略がわかる』というタイトル通り、企業の戦略とその結果としての成功、あるいは失敗を分析して「わかる」ために、本書は必要十分な視点、ツール、コンセプトを提供してくれるだろう。
「この本はあくまで入門テキストであり「門」に「入」った後にも道は続いています」と著者がまえがきで指摘するように、分析の後には、自分で戦略を作り実行していくフェーズが待っている。
「わかる」と「できる」の間には大きな隔たりがあるが、そもそも「わかる」ことがなければ「できる」へ進むことはできない。時々「野生の勘」で「できて」から「わかる」経営者もいらっしゃるが、復習し、成功の再現性を上げるためにも本書は有益だろう。
第1章の冒頭にあるように、戦略を議論・立案・実行するときの社内での「目線合わせ」は実は非常に重要だが、意外に見逃されていることが多い。結果として「自社ではできない」と思い込み、コンサルティング会社に外注してばかりでは、人は育たない。
その意味で、初学者はもちろん、自分の考えや経験をもう一度体系的に整理したいと考えるベテラン、優秀な人材はそろえたはずなのになぜか凡庸な戦略しか生まれてこないと悩む経営者にもお勧めしたい。
