コロナ禍以降、利用者が急増し、自分では出合えない本に出合えると人気の「選書サービス」。季節の本屋さん主宰の選書のプロ・ナカセコエミコさんのおすすめ本を紹介します。

多忙な会社員時代に欲していた「本のサブスク」を自身で実現

 働く女性のための選書サービス「季節の本屋さん」を主宰し、すべての選書を担当するナカセコエミコさん。サービスの立ち上げは、会社員時代、ナカセコさんが大好きな本と縁遠くなってしまったことに起因している。

 「仕事があまりにも忙しく、本を探しに本屋へ行ったり、ネットで検索することすらハードルが高くなってしまって…。もっと言えば、仕事で選択や決断をすることが多く、プライベートでの選択や決断を1つでも減らしたいという思いから、本を選ぶこと自体が煩わしくなってしまった時期がありました」

 まだサブスクという概念がなかった時代に、「本を定期的に届けてくれるサービスがあったらいいのに」との切なる思いを、会社を辞めて実現した。「季節の本屋さん」は、個別の選書ヒアリングは行わず、その月や季節ごとのテーマに沿って選書した本を組み合わせて送付する、おまかせスタイル。

 「今月はどんな本が届くんだろうと楽しみにしてくださっている方がたくさんいます。働く女性や大人の女性の多くは、仕事や子育てや介護に追われ、季節を感じる余裕や暇がない方も多いので、本を読むことでタイムリーに四季を感じてもらえたらと願いながら選書しています」。

ナカセコエミコさん
ナカセコエミコさん
季節の本屋さん 主宰

銀行員、図書館司書を経て、一般企業の商品開発、経営管理、社員研修に長年従事。退職後、2017年に女性のキャリアとライフスタイル、書評を中心に執筆や商品企画を行う会社「FILAGE」を設立。

私の“人生の景色を変えた”本
『発想をお仕事にする人の発想術』 岡本象太 著/春日出版
1970年代生まれのクリエイターたちへのインタビューをまとめた本。「会社員時代に出合った本です。ブックディレクターの幅允孝さんのページを読んで、選書したり、本と出合う場をつくる仕事があることを初めて知りました。今の道に進むきっかけとなった本です」。

インスピレーションとパワーが湧く、112人の女性のお仕事百貨

『自分で「始めた」女たち』
『自分で「始めた」女たち』
グレース・ボニー 著、月谷真紀 訳/海と月社

 さまざまな仕事で活躍する112人の女性たちのカラーフォト&インタビュー集「世の中にはこんなにも多彩な職業があるのかと驚くと同時に、ひとりひとりにピントの合った質問と回答が、読む人のインスピレーションを刺激して、仕事のアイデアが湧いたり、ヒントがもらえます。壁にぶつかったときに読めば、新しい扉が開くはず」。

60代マダムたちの素敵さに、年を重ねることへの期待が膨らむ

『マダムたちのルームシェア』
『マダムたちのルームシェア』
seko koseko 作/KADOKAWA

 古くからの友人である3人のマダムのルームシェアライフ。眠れない夜は一緒に花札をしたり、ネイルを塗り合ったり、何もかもうまくいかない日は踊ってみたり。「年を重ねても、それぞれに自分らしくおしゃれと人生を楽しむマダムたち。今の自分の延長線上にいると思えるマダムたちの姿に、年を重ねる希望が見える1冊です」。

最期まで軽やかに前向きに、「今の自分」を好きでいるために

『がんをデザインする』
『がんをデザインする』
中島ナオ 著/ニジノ絵本屋

 「31歳でがんを患い、2021年に亡くなったQOLデザイナーの7年間の記録ですが、一般的な闘病記ではありません。がんを治せる病気にするため有識者や企業を巻き込んでプロジェクトを発足したり、抗がん剤で抜けた髪をカバーするおしゃれな帽子をデザインしたり。ずっと軽やかで前向きで、創造的だった女性の生き方に学べます

取材・文/宇佐見明日香

日経WOMAN 2023年1月号より転載]