株式や投資信託への投資で得た利益にかかる税金がゼロになる少額投資非課税制度(NISA)。2024年から大改正され、投資期間が無期限になり、投資枠が大幅に拡大されます。では、新しいNISAでどのような商品を選べばよいのでしょうか。投信では、指数に連動するインデックスファンド、投資する会社を選んで詰め合わせたアクティブファンド、様々な資産に投資するバランス型投信が考えられますが、ここでは、インデックスファンドとアクティブファンドについて解説します。書籍『 大改正でどう変わる? 新NISA 徹底活用術 』(竹川美奈子著)から抜粋。

※新しいNISAの制度については、「 NISAが2024年に大改正!恒久化、上限引き上げでどう変わる? 」を参照。

投信1本で世界株に投資する方法

 NISAで株式に投資をする場合、まずは世界の株式にまとめて投資することを考えましょう。世界の株式にまとめて投資するには、いくつかの方法があります(図表1)。

図表1 世界の株式を持つ方法
図表1 世界の株式を持つ方法
(出所)『大改正でどう変わる? 新NISA 徹底活用術』(竹川美奈子著)
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 (1)は1本で日本を含む世界の株式にまとめて投資する方法です。具体的には「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI、エムエスシーアイ・アクイ)」や、「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」に連動することを目指すインデックスファンドに投資します。

 MSCI ACWIは先進国23カ国、新興国24カ国の合計47カ国、約3000社(大型株と中型株=比較的時価総額の大きい会社)をカバーしているため、MSCI ACWIに連動する投信はそれだけの国・会社にまとめて投資できます。

 FTSEグローバル・オールキャップ・インデックスは、日本を含む世界47カ国の大型株、中型株から比較的規模の小さい小型株まで、9000社弱で構成されています。

 例えば、前者、MSCI ACWIに連動する投信には「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(三菱UFJ国際投信)などがあります。後者の代表例は「楽天・全世界株式インデックス・ファンド〈愛称:楽天・VT〉」(楽天投信投資顧問)や、「SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド〈愛称:SBI・V・全世界株式〉」(SBIアセットマネジメント)などです(図表2)。

図表2 日本を含む世界株に投資するインデックスファンド例
図表2 日本を含む世界株に投資するインデックスファンド例
(出所)『大改正でどう変わる? 新NISA 徹底活用術』(竹川美奈子著)
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インデックスファンドを組み合わせる

 何本かのインデックスファンドを組み合わせることで、世界の株式にまとめて投資するという方法もあります。例えば、図表1の(2)や(3)の方法です。

 (2)は日本株と日本を除く世界株(先進国株と新興国株がセットになったもの)を組み合わせる方法です。例えば、「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(除く日本、配当込み、円換算ベース)」に連動する投信なら、1本で先進国と新興国の株式にまとめて投資できます。「eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)」(三菱UFJ国際投信)や「野村つみたて外国株投信」(野村アセットマネジメント)、「三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンド」(三井住友DSアセットマネジメント)などがあります(図表3)。

図表3 日本を除く世界株に投資するインデックスファンド例
図表3 日本を除く世界株に投資するインデックスファンド例
(出所)『大改正でどう変わる? 新NISA 徹底活用術』(竹川美奈子著)
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 (3)のように先進国株と新興国株に投資する投信をそれぞれ組み合わせる方法もあります。例えば、先進国株のインデックスファンドには「〈購入・換金手数料なし〉ニッセイ外国株式インデックスファンド」(ニッセイアセットマネジメント)や「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」(三菱UFJ国際投信)、「たわらノーロード 先進国株式」(アセットマネジメントOne)などがあります(図表4)。

図表4 先進国株に投資するインデックスファンド例
図表4 先進国株に投資するインデックスファンド例
(出所)『大改正でどう変わる? 新NISA 徹底活用術』(竹川美奈子著)
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 個人投資家の方に取材をしていると、「複数の投信を組み合わせるのは難しい」「面倒」という声を耳にします。まずは1本で世界の株式にまとめて投資できる、幅広く分散された商品を購入したいという場合には(1)が選択肢になります。

 すでに日本株(個別株や日本株に投資する投信)を保有している場合には、日本を除く世界株に投資する投信や先進国株に投資する投信だけを積み立てていくという選択肢もあります。

インデックスファンド選びの注意点

 インデックスファンドを選ぶ場合、つみたて投資枠で購入できる商品は限定されていますし、すべて購入時手数料はゼロ(ノーロード)で、保有中にかかる運用管理費用(信託報酬)にも上限が設定されています。ただ、そうはいっても注意点はあります。

 対象商品がふえてきて、総資産総額の少ない投信も目立つようになりました。残高が少ないと繰上償還(本来の運用終了予定よりも前に運用がストップされること)される可能性があります。投信が繰上償還された場合は解約と同じ扱いになります。ETF(上場投資信託)が上場廃止になったときも同様です。ですから、なるべく繰上償還される可能性の低い商品を選びたいところです。

 そこで、どの指数に連動するインデックスファンドを買うか決めたら、
・運用管理費用(信託報酬)が相対的に低いか
という視点に加えて、
・資金が安定的に流入しているか、純資産総額が安定的にふえているか
といった点もチェックしましょう。月次レポートや、投信評価会社のウエルスアドバイザー(旧モーニングスター)のウェブサイトなどで確認できます。

アクティブファンドは“主体的に”選ぶ

 ここまでインデックスファンドを中心に説明してきましたが、つみたて投資枠、成長投資枠ともに株式に投資するアクティブファンドを購入することもできます。

 つみたて投資枠の対象となっているアクティブファンドについては、手数料水準(*1)だけでなく、純資産総額50億円以上で、運用実績が5年以上あり、資金が安定的に流入している商品が選ばれています。そのため、確定拠出年金(企業型DCやiDeCo〈個人型確定拠出年金〉)などを通して販売されてきた商品や、積立投資を続ける投資家が多い投信などが目立ちます。

 まずはつみたてNISA対象商品の中から運用方針などが記載された交付目論見書や月次レポートをしっかり読みましょう。投信の説明会(動画・対面の説明会など)があれば視聴・参加したりするなど「主体的に」調べ、その上で、納得・共感するものがあれば候補に加えてもよいでしょう。

つみたて投資枠、成長投資枠ともに、アクティブファンドを購入することもできる(写真/Shutterstock)
つみたて投資枠、成長投資枠ともに、アクティブファンドを購入することもできる(写真/Shutterstock)
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 その際、5つのP(Philosophy=投資哲学、Process=投資プロセス、Portfolio=ポートフォリオ、People=運用体制、Performance=運用実績<*2>)に沿って調べてみるとよいでしょう。そういう意味では、購入するか否か、持ち続けてよいかどうかを判断する上でも、情報開示がしっかりしている投信の中から選ぶのが大前提です。一般投資家が投信を評価するアワード「 投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 」のサイト(特に投票者のコメント)などは参考になります。

 一部のアクティブファンドでは、運用報告会で投資先のビジネスモデルを学ぶ、投資先企業の訪問ツアーを企画するといったイベントを行っており、社会人として役に立つ知識や刺激を得られる可能性もあります。ただ、そうした投信は少数です。自分で調べる手間・時間がない、面倒という人はインデックスファンドだけでも十分です。

*1 購入時手数料なし。信託報酬の水準が一定以下(国内資産を対象とするものは1%以下、海外資産を対象とするものは1.5%以下)。
*2 リターンやリスク、運用の効率性を示す指標であるシャープレシオなど。
第一人者があらゆる疑問に答えます

株や投資信託で得た利益にかかる税金がゼロになる少額投資非課税制度(NISA)が大改正! 「2024年から何が、どう変わるのか?」「今のNISAはどうなるの?」「どんな商品を買えばいい?」など、Q&A方式や図表で分かりやすく解説します。

竹川美奈子著/日本経済新聞出版/1650円(税込み)