ChatGPTの登場後、生成AIが世間の注目を集めています。さまざまなコンテンツを生成できるAI(人工知能)の登場は、業界を超えた大きな衝撃をもたらしました。AIは以前から活用されてきましたが、生成AIはどう異なるのでしょうか? その特徴や今後の可能性は? 日経文庫『 まるわかりChatGPT&生成AI 』(野村総合研究所編/日本経済新聞出版)から抜粋・再構成してお届けします。

生成AIとは

 ChatGPTの誕生により「Generative AI:ジェネレーティブAI」(生成AI、または生成系AI)という言葉が注目されるようになってきました。「Generative」という単語は、生産または発生することができるという意味です。「Generative AI」とは、何かを生成することができるAIといえるでしょう。

 生成AIについての厳密な定義はありませんが、「さまざまなコンテンツを生成できる人工知能(AI)」または「さまざまなコンテンツを生成する学習能力がある人工知能(AI)」といえます。人工知能(AI)の1つの種類ではありますし、結果として何かを生成できるだけではなく、生成するために学習することができるのが特徴です。

 たとえば、ChatGPTであれば、条件に応じた文章を生成することができますし、新たなデータを入力して学習することができ、生成する文章の精度を高めることができます。

 どのようなものを生成できるのでしょうか。文章(テキスト)、画像、音声、音楽、動画、プログラムコードなどが有名です。

 文章といっても、ウェブ上にある情報から、条件に応じた内容を検索して表示するのではありません。さまざまな情報を組み合わせて、新しい文章を生成することができます。たとえば、メールの文案、論文、ポエム、歌詞などを生成することができるのです。

 同様に、画像や音楽についても、既存の作品からの抜粋・組み合わせではなく、新しいコンテンツを生成できます。

 変わったところでは、プログラムコードを生成することも可能です。自分が作成したいコンピュータープログラムの内容を文章で入力することで、プログラムコードを生成することができます。

 プログラミングやシステム開発のためには、正しく稼働しているのかを確認するためにテストデータが必要です。ランダムに発生させたテストデータでは、正しく稼働できているのかを確認できないため、ある程度、現実味のあるデータが求められます。こうした構造化されたデータを作り出す生成AIもあります。

従来のAIと生成AIの違い

 このように生成AIを定義・説明しても、従来からいわれているAIとは何が違うのかという疑問が生まれるでしょう。生成AIは、その名の通り、AI(Artificial Intelligence:人工知能)の一種であり、広義のAIの中に含まれます。

 それでも生成AIという言葉が注目されるようになった理由としては、生成AIが出てくる前のAI(ここでは、従来のAIと呼ぶ)とはいくつかの違いがあることが挙げられます。違いを整理したものが図1-1です。

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 従来のAIでも、データに基づいて学習をし、その結果に基づいて予測を行い、アウトプットを出力します。出力されるものは、数値のデータや、テキストデータなど、構造化されたものが多く、新しい形で創造されたものではありません。従来のAIの場合は、決められた行為の自動化が目的であり、そのために必要な出力を行うことが主な役割でした。

 一方で生成AIの場合は、新しいコンテンツを創造することを目的としています。両者とも学習に使うアルゴリズムはニューラルネットワークですが、目的が異なるため、学習するためのデータの種類・形式が異なります。

 従来のAIと生成AIの厳密な境目はないため、両方の特性を持ったアプリケーションやモデルも存在しています。ここでは、厳密な定義の違いをいいたいわけではありません。従来のAIの考え方と対比することで、生成AIの特徴をイメージしてもらえればと思います。

 それまでのAIと比べて、生成AIは「創造性」という領域を意識したものなのです。

なぜ今、生成AIが注目されているのか

 最近になって生成AIが注目されるようになった理由としては、ChatGPTをきっかけとしたいくつかの要因があります。

 1つ目は「精度」の向上です。従来から、何かしらのコンテンツを創造するアプリケーションは存在していましたが、その精度の低さのため使われていませんでした。

 ChatGPTを使ったことがある人はわかると思いますが、出力される文章の表現は自然であり、内容についても正しいものが出力されることが多いです。まだ100%の精度ではありませんが、ビジネスなどで使えるレベルまで向上しているといえるでしょう。

 ミッドジャーニー(Midjourney)やステーブルディフュージョン(Stable Diffusion)というアプリケーションでは、自然で魅力的な画像を生成でき、ウェブ画面のデザインなどでは十分に活用することができます。

 2つ目に、精度向上の背景にある「学習量」の多さです。生成AIは、さまざまなデータをもとに学習し、新しいコンテンツを生成しています。コンピューター能力の進化などもあり、学習するためのデータ量が飛躍的に拡大し、モデルの精度が高まりました。

 3つ目は生成するために必要な「スピード」が速くなったことです。コンテンツを生成するために学習する時間は莫大ですが、一方で、アプリケーションなどを用いて、条件を入力し、条件に応じた文章を出力することや、画像を描くための時間は格段に短くなりました。

 背後では複雑な処理をしているにもかかわらず、学習モデルやアプリケーション側の工夫により、ビジネスで使うには十分な速さでアウトプットが出るようになりました。

 4つ目は「使いやすさ」が挙げられるでしょう。ChatGPTなどのアプリケーションは、誰でも簡単に使うことができ、特にマニュアルなどを見なくても、簡単に条件を入力することができます。

 優れた生成AIのアプリケーションでは、対話型で条件を入力することができ、万人にとって使いやすくなっています。単純ではありますが、優れたユーザーインターフェースにより、利用が急速に進み、生成AIが浸透するようになったといえます。

 5つ目として、生成AIで扱う「コンテンツの種類の多さ」が挙げられます。テキスト、数値、プログラムコード、音声、映像など、さまざまなコンテンツが扱われています。

 学習するための情報は、テキスト、数値、画像など、個々に扱われてきましたが、近年は異なる種類の情報も同時に、組み合わせて処理できるようになりました。テキストで条件を入力して、その条件にあった画像を生成することができます。文章や数式、図からなるテスト問題を解く(文章で正解を記載する)こともできるようになりました。

 複数種類のデータを関連付けて処理・学習することをマルチモーダルといいます。完全なマルチモーダルになるためには、まだ時間が必要ですが、情報の種類という垣根はなくなりつつあります。

生成AIが注目されるようになったのには5つの要因がある(写真/Shutterstock)
生成AIが注目されるようになったのには5つの要因がある(写真/Shutterstock)
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野村総合研究所編/日本経済新聞出版/990円(税込み)