青山ブックセンター本店は2024年11月に『ChatGPTを使い尽くす! 深津式プロンプト読本』(深津貴之、岩元直久著/日経BP)刊行記念として「深津貴之×けんすう(古川健介) トークイベント」を開催した。ChatGPTなどの生成AIの使いこなし術から、生成AI時代の人間の生き残り方、さらに参加者から寄せられた「お悩み」への回答まで、盛りだくさんな生成AIをめぐるトピックが展開された。深津貴之氏、けんすう氏の知の世界をのぞいてみよう。

青山ブックセンター本店で開催されたトークイベント。参加者からは生成AIの活用法についてアツい質問が寄せられた
青山ブックセンター本店で開催されたトークイベント。参加者からは生成AIの活用法についてアツい質問が寄せられた
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深津 けんすうさんとのトークは久しぶりですね。お互いの生成AIの最新の認識や実践していることなどを、リアルタイムにバンバン交換しましょう。

けんすう 生成AIを使っている人間として、実際にどう使っているかといった話を共有できたらいいと思います。例えば、ぼくは毎日ブログ書いているんですが、その際にChatGPTを活用しています。でもこのやり方が最近変わってきていて…。これまではChatGPTに「ちゃんと質問しなきゃ」と思っていたんですね。でも、ちゃんと質問する意味はないなということに最近ようやく気づきました。
 やり方としては、持っている内容を5分とか10分ぐらい音声入力で適当にしゃべるんです。それをChatGPTに「まとめてください」とお願いしつつ、僕のブログのリンクを貼って、「これを参考にして書いてください」と命令すると、大体の記事がアウトプットとして出てきます。次にそれを修正する、といった作業でほぼブログの原稿が完成です。要は頭に思い浮かぶ単語を10分ぐらいChatGPTに言い続けて、それをまとめてもらう、という方法がとても使いやすいと思っているということです。

けんすう(古川健介)氏
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けんすう(古川健介)氏
NFT(非代替性トークン)を創ったり、AIをフル活用したクリエイター向けのサービスを出版社などと作ったりするル社の代表。コミュニティづくりが好き。近刊『物語思考 「やりたいこと」が見つからなくて悩む人のキャリア設計術』(幻冬舎)が好評販売中

深津 ぼくも、食事などをしながらX(旧Twitter)にちょこちょこ連続ポストして考えをまとめたりします。そのポストをChatGPTに送って「まとめて整理して」とか「この話の論旨の穴は」とか、「想定していない角度の偏見が含まれていたら教えて」などと依頼する。AIがポストから自分の考えを構造化してくれるわけです。

深津貴之(ふかつ・たかゆき)
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深津貴之(ふかつ・たかゆき)
インタラクションデザインデザイナー。note株式会社CXO、株式会社THE GUILD代表取締役など。「ChatGPTを使い尽くす! 深津式プロンプト読本」(日経BP)が好評販売中

けんすう ChatGPTなどの生成AIが出てきた当初は、いい質問しなきゃいけないみたいなプロンプト至上主義的な考え方があったと思うのですが、逆に相手がAIなんだから雑に投げていいということに最近は気づいている人が多くなっていると感じています。

反応の収集から語学学習まで、アイデア次第で活用の幅は広がる

けんすう 生成AIの使い方として、偏見の指摘のように自分のバイアスを外すために使うのはかなりいいと思います。生成AIは、賛成意見も反対意見も両方とも知っているわけですから。

深津 ちょっと前から実験的に始めているのが、政治思想シミュレーター的な使い方です。大統領選についてはいろんなニュースが出てきましたよね。そのニュースに対して、生成AIに「このニュースを読んだら典型的な共和党員は何と言う?」とか「典型的な民主党員は何て言う?」と送ってみる。ウォール街の人は、シリコンバレーの人は、キリスト教保守の人はどう言うかなどと列挙していくと、ニュースの全体像を理解できるぞ! というわけです。

けんすう 確かに、生成AIを使うことでいろんな人の意見を再現させることができますね。

深津 生成AIは、平均的なことを答えるのが得意じゃないですか。だから特定の属性を持つ人間のシミュレーションとして共和党員が言いそうなことやキリスト教保守が言いそうなことはこうだよということを、かなり高い精度で再現してくれます。運用にバイアスへの注意は必要ですが。

けんすう 確かにそれいいですね。生成AIは幅広い知識を持っているという効用をどれだけ活用するかが大事ですから。ぼくが最近やるのは、英語だとこう表現するけど、フランス語、スペイン語、中国語、韓国語だとどういうニュアンスで表現するといったことを比べる使い方です。例えば「英語では過去形が婉曲の意味になるけど、他の言語はどうですか」などと聞くと答えてくれるわけです。これは言語学者でも、数多くの言語に精通するのは難しいので、生成AIでしか出せない答えだと思います。

深津 そういった使い方では、ぼくは勉強的な意味で、TOEICの長文問題形式の「仮想問題」を作らせています。例えばゲームの攻略方法などで長文問題を作れば、英語読解の練習でも辛くないんですよ。

けんすう ありますね。日本語の記事を入力して、この文章をこのぐらいのレベルの英語にしてと依頼することもできますしね。

深津 TOEICの長文問題、普通にやると地球温暖化とかエコロジーとか政治や経済のトピックなどが多くて、ちょっとやると「もういいや」ってなっちゃうんですよ。でも、その長文が「ポケモンカードで負けないための立ち回り方」だったりすればぜんぜん辛くない。

けんすう そういうことですよね。

深津 この辺のネタだけでも、1時間は話せてしまいます。

けんすう ネタは無限にありますね。

生成AIで一周回って「フィジカル」が大切な時代がやってくる

けんすう 我々はIT業界に身を置いているのですが、本当に最先端で超分かってる人たちが何を言っているかというと「これからはフィジカルだよ」ということです。そちらに中心を置き始めていて、正しいなと感じています。

深津 いま生成AIは、課金をすれば知識や知性が手に入るって言っているわけですが、いずれは知性に対する課金力の勝負になるのか、生成AIを使うことで全員の知性の部分が同じようになって買わなくなるかのいずれかになるので、最後は筋肉が勝つといった見方ですよね。

けんすう このイベントも、青山ブックセンターで深津さんとの議論だから出ようかなと思うけれど、全然違う場所だったら断るかなといったフィジカルな部分が影響したりします。

「生成AIで置き換えられないリアルイベントのようなフィジカルな体験の価値は今後、相対的に高まります」
「生成AIで置き換えられないリアルイベントのようなフィジカルな体験の価値は今後、相対的に高まります」
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深津 生成AI時代に生き残るにはという意味では、「君でいい」という仕事は全部なくなるかも。「君がいい」という仕事は最後まで残るので、どうやって「君でいい」を「君がいい」に変えるかが大事です。変え方は色々あると思うんですよ、スキルで君しかできないということもあるし、君と一緒だと楽しいということもあるわけです。なんでもいいから「君がいい」を作ることです。

けんすう 確かに、この前、とある翻訳家の人と話をして、その人はすごい仕事が増えているんだそうです。生成AIのおかげでさばける量が増えているので、単価が下がっても生きていけるんですって。別の翻訳家の人は、生成AI時代になって仕事がほとんどなくなったんで廃業しましたというんです。だから「君でいい」「君がいい」のイメージ、よくわかります。

 そしてこれはとても怖いなと思ったんです。多分、半額だけど倍の仕事を受けられるといったことはいろいろなところですでに起こっています。しがらみがあったから頼まれていたといったタイプの人は、仕事が激減するようなことがリアルで起きているんだろうなと思います。

深津 そうなんですよ。だからどうやって「君がいい」になるかなんです。意外と最後は、社長と飲み友だちになれるなんてことが効いたりするかもしれません。

けんすう そうですね。お酒が強いとか、一緒にゴルフ行くとか、そういったフィジカルな関係が有効なのかもしれませんね。

深津 本当にそんなウエットな部分が有効だと、IT技術自体がほとんど関係なくなる気もします。

けんすう 生成AIやテクノロジーで、アウトプットの差がやっぱりどんどんなくなっちゃうと、最後は人柄とかで選ばれちゃうかなってこともありますね。やばいですね。

深津 でも、日本はこれから超高齢化社会で人口減少が進んでいくと、人が足りなくなるわけです。人が残っていないのだから、生成AIが仕事を奪うとか言っていられなくて、市の仕事の半分以上を生成AIにしないと自治体や国が回らなくなるということになっていくわけです。人口問題の解決に向けて、生成AIをなんとか使ってもらう必要が高まってくると思います。

けんすう 人が足りない業界と、人をトレーニングしなきゃいけない業界では、生成AIの使いこなしは超重要ですね。

感動ストーリーをいきなり作らせるのはダメ

深津 ここで皆さんのお悩みの話に移りましょう。投稿いただいたお悩みはクリエイティブ系が多かった印象です。結構かっ飛んだ相談として「漫画やイラストを描いています。今度、大量の人をゾンビにした戦略ゲームを作ろうと思っています。ChatGPTを使っていろいろな戦術や戦略を織り交ぜたいのですが、どうやったらうまくできるでしょう」。

けんすう これ、とても良い使い方ですよ。すごく描きやすいと思います。ChatGPTは世界中の戦略や戦術を知ってるので。

深津 著名な漫画のような感動ストーリーを新しくいきなり考えさせるのは、生成AIの苦手なことなんですね。でもワーテルローの戦いはどういう戦いで、どのように決着がついたかといったことを聞かれるのは得意です。

けんすう そうですね。ぼくがこうしたストーリーを考えるようなときには、例えば「ロシアで有名な小説を10本、ただし翻訳されてないものをお願いします」といった使い方をします。すると、ロシアで超有名な小説が10本出てきます。そのストーリーを聞いて、さらに「太宰治の人間失格を混ぜて設定を作ってください」などと依頼すると、普遍的だけど日本人が見たことない設定ができたりするわけです。

深津 ありがとうございます。もう1つお悩みです。「子どもにプログラミングを教えるとき、生成AIに頼ってしまっていいのか、それとも最初の取り組みは自分で考えさせたがいいのか。悩んでいます」

けんすう これ、ありますよね。あらゆるところで聞きます。組織でも、新卒のエンジニアに生成AIを使わせていいのかどうかといった議論になります。

深津 今までのテクノロジーの歴史から見ていくと、 漢字が書けなくなるから日本語変換の利用をやめようとか、調べる癖がつかなくなるからGoogle検索を使わせるのをやめようとか、常に議論されてきたじゃないですか。でも10年ぐらいすると、日本語変換は使って良いよね、Googleがある方が賢くなるのでは、なんてことになるんですね。これを生成AIに当てはめてみると、生成AIを使うことでそのコードを直接書く能力は得られなくなるかもしれませんが、設計するチャンスが100倍来て数多くデプロイできるのなら、細かいプログラミングの文法など、そこまで知らなくてもいいのではという話になりそうな気がします。

けんすう そうですね。極論すれば、プログラマーも高級言語はみんな書けるけど、マシン語は書けなくてもいいんですよね、という話が近いですね。

深津 打席に立つ回数を無限に増やせることは、やっぱり生成AIのすごいところだと思います。参考にしていただけたらうれしいです。

トークイベント終了後、著書を手に満面の笑顔を浮かべる二人
トークイベント終了後、著書を手に満面の笑顔を浮かべる二人
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文/岩元直久、構成/進藤 寛(日経BOOKSユニット)、写真/鈴木愛子

ChatGPTの効力を余すことなく発揮するには、動作の起点となる「プロンプト(命令文)」をいかに適切に入力できるかがカギとなります。本書は、生成AI活用の第一人者である深津貴之さんが考案した、効果的なプロンプトのパターン「深津式プロンプト」について、ビジネスシナリオを交えて詳しく解説。深津式プロンプトを使えば、ChatGPTの性能を最大化し、日々の業務を効率化できます!

深津貴之、岩元直久(著)/日経BP/2640円(税込み)