頑張って節約しているのになかなか貯まらない。それは、収入のせいではなく、日々の行動・考え方に問題があるかもしれません。家計相談で多くのご家庭を訪ねるFPの黒田尚子さんが発見したのは「貯蓄ベタな人の家は散らかっている」という法則でした。黒田さんの新刊 『お金が貯まる人は、なぜ部屋がきれいなのか』(日本経済新聞出版) より抜粋のうえ紹介します。
部屋が汚い人の家計簿の共通点とは
「お金を貯めたいと思っているのに、なかなか貯まらないんです」といった人は多いと思います。
そんな人は、まず自分の部屋や家の中を見回してみてください。今、急にインターホンが鳴って、お客さんが来たら、「どうぞお上がりください」と言えるくらい片付いているでしょうか?
FPとして独立して20年超の間、私はさまざまなお宅を訪問して、家計相談を受けてきました。
そこで確信したのは、「お金を貯めている人は部屋が片付いている」という点です。
もちろん、私が相談者の方を訪問する際はあらかじめ日時を指定しますので、もしかするとそれまでに慌ててリビングの片付けや掃除をしたのかもしれません。しかし、日ごろから片付けている人かどうかは、会話の中からすぐにわかるものです。
例えば、面談中に、家計に関するさまざまな資料を追加で見せていただくことが多いのですが、「すみません。この保険の証券も拝見できますか?」といった場合でも、片付け習慣が身についている人は、必要な書類がすぐ出てきます。
それに対して、引き出しや書類が入っているボックスをいくつも探しながら、「うーん、前はここにあったんですけど……」という人は、普段からあまり整理整頓ができていない様子がうかがえます。
そして、そういう人の家計状況を見せてもらうと、本人が気づいていない無駄な支出が多く、「片付けベタは貯金できない」ことを証明しているかのようです。
なお、お金持ちでも、お世辞にも自宅が片付いているとは言えず、モノにあふれた生活を送っている人はいます。でも、その多くは、実家が資産家で不動産を多く保有していたり、事業を承継したりして、財産を引き継いだ方々。家も大きいし、ムリにモノを処分する必要はないのでしょう。事業などを成功させ一代で財産を築いた人にも、「家事代行サービスを使っていて、掃除や片付けなど自分では一切やらない」という人がいます。
しかし、私の知る限り、ゼロからスタートして自分でコツコツお金を貯められた人で、家の中がそんな混沌とした状態になっているケースは見たことがありません。
整理整頓と貯蓄は同じ原理?
貯められない人は、掃除や片付け、整理整頓が苦手、もしくは、できていない傾向が強い。これは、逆に言うと、お金が貯められる人は、これらの当たり前の生活がきちんとできている場合が多い、ということになります。
お金を貯めるという行為は、目的を考えて、そのためにどうすればよいか具体的な方法を検討、それを実行する意思や行動力が必要です。
きちんと貯蓄するには、支出の管理が必須であり、それには自分の「ウォンツ(Wants)」と「ニーズ(Needs)」の見極めが不可欠です。つまり、それが自分に必要なモノであれば、「ニーズ」。単に欲しいものなら「ウォンツ」となります。
例えば、収入が多くなくてもしっかりお金を貯めているタイプの人は、「疲れた」「ちょっと喉が渇いた」と頻繁にカフェに立ち寄ったりはしません。カフェで飲むフラペチーノは「ウォンツ」であって「ニーズ」ではないことがわかっているからです。
片付けも同じです。整理整頓ができない、モノが捨てられないのは、自分にとって必要なものとそうでないものを把握できていないから。つまり、「ニーズ」と「ウォンツ」が判断できないために起こりやすい状態と言えます。その思考の「混沌」は家計管理にもつながってきます。
片付けベタ、貯金ベタに共通する傾向
例えば、「ニーズ」と「ウォンツ」の判断ができていない人がよくとる行動の傾向として、下記のようなものがあげられます。
- 買い物好きでつい衝動買いをしてしまう…いわゆる「浪費癖」がある。見ると欲しくなって、必要のないものまで買ってしまう傾向にあるので、お金が減る一方で、モノはどんどんたまっていく。
- 買い置きやまとめ買いをしていないと不安…片付けられない人は、モノの管理がルーズな傾向がある。在庫が少なくなると不安で、同じようなものがあるのに買ってしまう。買い置きやまとめ買いが習慣化している人は要注意。
- 「無料」や「おまけ」に弱い…おトクだからと、無料のノベルティやグッズ、おまけに弱い人は、つい必要ないものまで買ってしまいがち。人はモノに対して払ったお金の分の価値しか見いださないもので、タダでもらったモノは、部屋の片隅に放置されるなど、それなりの扱いになるのがオチ。
- もったいなくて捨てられない…片付けられない最大の原因は、「モノが捨てられない」こと。子どもの思い出の品や高かった洋服やアクセサリーなど、モノには少なからず思い入れがあるもの。片付けられない人は、捨てるかどうか判断できない傾向が強い。
いかがでしょうか? 片付けられない、貯められない人の多くは無意識的にこれらの行動をしているのではと思います。
部屋を片付けるとお金が貯まるのはなぜ
ではなぜ、部屋を片付けるとお金が貯まるようになるのでしょうか。まず、片付けるとモノが「見える化」されて、「なんで、フライ返しが10個も!?」など、現在のモノの量に驚くことになります。
それをちゃんと収納に収まるよう適正な量まで減らせば、スッキリした空間に気持ちが良くなるはず。そして、わが家のモノの適正量もわかります。
モノ自体が減りますので、一つ一つの存在が大きくなり、今の自分に本当に必要なモノ、好きなモノを意識するようになります。そうなれば、漫然と買い物することがなくなり、無駄遣いも減少。それが自然と節約となって、お金が貯まり始めるといったしくみなのです。
家計が苦しいなら「まず節約!」と考えがちですが、まずは身の回りを振り返って、ちょっと行動や意識を変えてみませんか? 実は、それがお金の貯まる確実な道だったりします。
「玄関先にビニール傘」「カードを3枚持ち歩く」はなぜキケンなのか? イヌ派はネコ派よりもお金が貯まりにくい? 貯蓄と関係がなさそうでありそうな「日々の行動」と「貯蓄の効率性」の相関性について、FPが読み解きます。
黒田尚子(著)、日本経済新聞出版、1540円(税込)