読書の秋を盛り上げるキャンペーン「BOOK MEETS NEXT」。今年は「本を愛する気持ちを、未来へ。KYOTO BOOK SUMMIT」と題して、豪華ゲストによる講演会や対談が行われました。11月8日、紅葉が始まった京都国際会館には、本好きの老若男女が大勢詰めかけるなか、ジャーナリストの池上彰さんと増田ユリヤさんが登壇。 「池上彰と増田ユリヤのYouTube学園」 のコラボ企画として「世界の歴史『本』にまつわる10大ニュース!」をテーマに語り合いました。

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聖書をみんなが読めるようになったのは、技術革新のおかげ

池上彰さん(以下、池上) 本を愛する人とその思いが、京都に集まって、本の「今」と「未来」について語り合う 「KYOTO BOOK SUMMIT」ですが、実は私と増田さんは、YouTuberでもあるんです。そこで、今日は私たちのYouTube「池上彰と増田ユリヤのYouTube学園」とのコラボ企画としてお送りいたします。

増田ユリヤさん(以下、増田) 題して「世界の歴史『本』にまつわる10大ニュース!」ここからは、10大ニュースをクイズ形式で見ていきたいと思います。

池上 彰
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池上 彰(いけがみ あきら)
ジャーナリスト、名城大学教授、東京工業大学特命教授
1950年長野県松本市生まれ。慶應義塾大学卒業後、1973年にNHK入局。報道記者として、さまざまな事件、災害、消費者問題、教育問題を担当する。1994年から11年にわたり「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。2005年よりフリーになり、書籍やテレビ、選挙報道等でニュースを分かりやすく解説し幅広い人気を得ている。名城大学教授、東京工業大学特命教授ほか、現在9つの大学で教壇に立つ。著書に 『池上彰のやさしい経済学[令和新版]』(日本経済新聞出版) 『歴史で読み解く!世界情勢のきほん』(ポプラ新書) など、ベストセラー多数。
増田 ユリヤ
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増田 ユリヤ(ますだ ゆりや)
ジャーナリスト
神奈川県出身。國學院大学文学部卒業。私立高校の社会科講師のほか、NHKでリポーターなどを務めた。国内外の政治・教育問題を中心に取材している。共著に 『世界の歩き方:歴史と宗教がわかる!』((ポプラ新書)

ニュース① そもそも「本」の歴史の始まりは?

増田 パピルス、聖書、ラスコーの壁画とありますが、これが本の始まりでしょうか。

池上 英語のpaperの語源がパピルスですよね。当時から記録したい、伝えたい、そのために何か必要だということでパピルスがあみだされたのですね。さらに聖書。ユダヤ教ではトーラー(旧約聖書の言葉で律法)という形で伝わってきたのが、本の形になったということですね。

増田 もともとキリスト教の教えは、教会にステンドグラスを造ったり、絵を描いたりして伝えていました。

池上 ヨーロッパに行くといろんな教会があります。その教会がカトリックとプロテスタントのどちらなのかをどう判断するか。カトリックでは、聖書はギリシャ語かラテン語で書かれていたので、庶民は読むことができなかったのですが、宗教画やステンドグラスが聖書にはこんなことが書かれていると教えてくれた。カトリックの教会にはそういう宗教画がたくさんあります。

 一方、プロテスタントでは、信者は自分で聖書を読まないといけない。そこで聖書がドイツ語、英語、フランス語に翻訳され、ちょうど活版印刷術が発達して大量に印刷できるようになり、みんなが読めるようになった。だからプロテスタントの教会では、わざわざ宗教画を描く必要がないのですよね。

増田 グーテンベルクが印刷技術を発明したという言い方を今はあまりしません。もともとは中国の発明だといわれています。でも中国や日本は漢字を使っていたので、なかなか活版印刷が浸透しなかったのです。アルファベットは、記号のように文字を拾えばよかった。だからヨーロッパでは印刷技術が発達したといえます。

 フランスのラスコー洞窟の壁画も、昔の人が自分たちの生活などを伝えようとしたというのであれば、「本」といえなくはないかもしれません。

池上 大昔からみんな、見たものを伝えたいとか、自分の思いを人に伝えたいという思いはずっと持っていた。それが媒体として、壁画になるのか、パピルスになるのか、いわゆる冊子の本の形になるのか違いはあるけれど、そういう思いをのせてきたものが本になるというのでしょうね。

ニュース② 日本で初めての「本」は?

増田 聖徳太子の自筆とされる『法華義疏(ほっけぎしょ)』が最初といわれています。お経の注釈書として『三経義疏(さんぎょうぎしょ)』というのがありました。そのなかの法華経について、おそらく聖徳太子の自筆ではないかといわれるものが残っていて、これが現存する日本最古の本といわれています。

池上 なるほど。法華経についての注釈書ということですね。

増田 現在は皇室の御物(ぎょぶつ)として大切に保管されているそうです。

ニュース➂ 世界で初めての出版社は?

増田  カクストン、ケンブリッジ、オックスフォードと諸説ありますね。

池上 カクストンとは、1476年にウエストミンスターで印刷業を始めた人の名前でそのまま出版社名になりました。ケンブリッジ大学は1584年から出版・印刷業を始め、世界最古の大学出版会となります。大学としてはオックスフォードのほうが古いのに、出版はケンブリッジのほうが早かった。オックスフォード大学は、少し遅れて1586年に出版を始めていますね。

増田 大学ではいろいろな本を読んで研究するし、研究した成果も出版するというので出版界が発展したのでしょうね。

ニュース④ 日本で初めての出版社とは?

増田 柳原出版(書肆河内屋・しょしかわちや)ですね。

池上 江戸時代中期(1740年ごろ)に初代柳原喜兵衛が、大坂で創業し、大塩平八郎の『洗心洞剳記(せんしんどうさっき)』や、頼山陽(らいさんよう)の『日本外史』などを出版しています。

増田 大塩平八郎は、大塩平八郎の乱を起こした方ですね。冷害や天保の飢饉があって、暮らしが厳しくなったときに、一揆を起こそうとして鎮圧され、自殺するという運命をたどった人ですが、ここに書き残したので、後世の人たちが彼の考えを知ることができた。

池上 いろいろな考え方やイデオロギーが伝わっていくのは、出版社があるからこそというわけですね。

ニュース⑤ 世界で初めての書店とは? 日本で初めての書店とは?

増田 世界では、ベルトラン書店、日本では、平楽寺書店ということですね。

池上 世界最古のベルトラン書店は、1732年創業で、ポルトガル・リスボンにあります。世界で一番古い現役の書店としてギネスにも認定されていますね。

 日本で初めての書店・平楽寺書店は、村上浄徳(じょうとく)が、慶長年間に京都で始め、現在まで仏教関連を中心とした出版販売を続けています。今も脈々と続いているとはさすが京都ですね。

増田 海外で出合った本屋さんの思い出ですが、ベトナム・ホーチミンの書店街が印象に残っています。東京の書店街・神保町のようなところで、両側に新刊書店はもちろん、古書店、移動図書館、カフェが併設されたお店がずらっと並んでいました。

 店員さんに「こんな本ありませんか」と熱心に尋ねているカップルもいて、ベトナムの人というのは勤勉で本が大好きなのだとよく分かりました。(後編に続く)

ホーチミンのブックストリートの様子。両側にたくさんの本屋さんが並んでいる(増田ユリヤさん提供)
ホーチミンのブックストリートの様子。両側にたくさんの本屋さんが並んでいる(増田ユリヤさん提供)
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夜なのにお客さんが絶えず、本屋さんも夜9時ごろまで開いている(増田ユリヤさん提供)
夜なのにお客さんが絶えず、本屋さんも夜9時ごろまで開いている(増田ユリヤさん提供)
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この通りにはカフェや古本屋もある(増田ユリヤさん提供)
この通りにはカフェや古本屋もある(増田ユリヤさん提供)
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文/笠原仁子、写真/山本尚侍