会議、プレゼン、日常会話……。実は、あなたの話は「全く話が見えないんだけど……」と思われているかもしれない。相手の頭の中に具体的なイメージを作り上げるためにはどうすればいいのか。話の内容が、色や形を伴った具体的なビジュアルとして聞き手の頭の中に浮かんでくる状況を作るための方法をテレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」のメインキャスターである豊島晋作氏が解説。新刊『不器用だった僕がたどり着いた「伝え方」の本質』(日経BP)から抜粋・再構成してお届けする(参照:[動画]テレ東キャスター豊島晋作「会議の9割はつまらない」 ではどうする?)。
「さっきからずっと聞いていても、全く話が見えないんだけど……」と言われたことはないでしょうか? 一体、何が言いたいのか分からない。そういう状況を「話が見えない」と言います。
この「話が見えない」とは、相手の話している内容が脳の中でイメージできない状態を指します。文字通り、場面が「見えない」のです。典型的な例が、IT企業の会社紹介などにありがちな、次のような文章です。
この文章を読んで、どんなイメージが頭に浮かんだでしょうか。私は、全く何も思い浮かびませんでした。この伝え方では、いったい会社が何をやっているのか全く分からないからです。「顧客支援のソリューション」「全社データ管理システム」といった言葉では、聞き手は頭の中で何もイメージできません。
このように、「聞いても、頭の中で何も思い浮かばない」話し方をする人は少なくありません。たいてい、そういう人は伝え方が下手です。
話が「見える」から理解できる
私の仕事柄、コンサルやIT企業、ソフトウエア企業の方などをインタビューする機会がありますが、そうした方々の仕事の中身は特にイメージするのが難しいと感じます。もっとも、これはコンサルやIT企業に限った話ではありません。多くの人が、自分のビジネスを専門外の人に分かりやすく伝えることがうまくできないのです。
仕事の説明だけではありません。普段から使う言葉も同じです。例えば「再生可能エネルギー」という言葉。これも、どこか抽象的で、伝わりにくい言葉です。
テレビでは、風車やダム、太陽光パネルなどの映像を同時に流しておけばイメージが伝わりますが、普段の会話ではそうはいきません。このため、言葉で説明する際には「巨大な風車や水力発電用のダムなどの再生可能エネルギーが……」といったように、「風車や「ダム」など聞き手が想像できるものを言葉で登場させて伝えることが必要になります。
つまり、説明が相手に「伝わる」とは、「話の内容が、色や形を伴った具体的なビジュアルとして聞き手の頭の中に浮かんでくる」状況のことです。人間は基本的に、ビジュアルを通して、物事を理解するからです。ビジュアルが見えない話は、誰にとっても理解しにくく、文字通り「見えない話」なので、全く伝わりません。
このため、伝えるときは、色や形などのビジュアルや、肌触りなどの感覚について話す、あるいは人やモノが動いている場面を話す必要があります。
人は過去に見たことがあるものしか想像できない
さらに、基本的に人間は過去に見たことがあるものや場面しか想像できません。だから、伝えるときは、誰もが見たことのあるものや場面を使って話すことが重要です。
例えば、地球などの星には「重力」がありますが、重力は目には見えません。高校の物理の先生から、
と教えられても、生徒たちはすぐには理解できません。なので、
という場面を伝えれば、少しは重力というものが「見えて」きます。リンゴも木も地面も、誰でも過去に見たことがあるからです。だから、リンゴが落ちた場面を見た経験がなくても簡単に想像できるのです。
このリンゴの話はいわゆる「例え話」ですが、こうした「例え話」が伝わりやすいのは話が「見える」ようになるからです。
伝えるときは具体的な場面、あるいは色や形を描写して、話を「見える化」するクセをつけてください。先ほどの例え話で私がリンゴをあえて「真っ赤なリンゴ」にしたのは、具体的な色を伝えたほうが、読者のみなさんがビジュアルをイメージしやすいと考えたからです。

また、聞き手が直面する状況を描写して伝えることも効果的です
と伝えるより
というほうが伝わるでしょう。
夏用のジャケットも、汗の感覚も、誰もが見たり感じたことがあるので想像できます。そして、聞き手は自分が汗をかく場面、汗を拭く場面もうっすらと想像してくれるので、より伝わりやすくなります。このように、細かい描写を使い、聞き手の経験や想像力を利用するのです。これは、小説などでも使われている手法です。
[日経ビジネス電子版 2025年6月19日付の記事を転載、一部改訂]
豊島晋作(著)、日経BP、1980円(税込み)
