工場と直接取引をすることで高品質の衣料品などを販売するファッションブランド、「Factelier(ファクトリエ)」を展開するライフスタイルアクセント。全国の高い技術を持った工場を発掘し、日本から世界的なブランドを生み出すことを目指しています。同社では毎週月曜日朝に読書会を行っているといいます。代表の山田敏夫さんに、読書会の内容と開催の狙いについて聞きました。

工場と直接取引するメリット

 僕は熊本県で100年続く老舗婦人服店の息子として生まれ、自分でも2012年に工場直結ファッションブランド「ファクトリエ」を展開するライフスタイルアクセントを設立しました。

 「工場直結ファッションブランドって何?」と思われるかもしれませんが、工場と一緒に洋服を作って、直接お客様に届けています。イメージとしては余計な仲介業者が存在しない「産直野菜の洋服版」ですね。日本全国にはニットやデニム生地など、その土地の特定の工場にしかできない技術が多数存在しています。ファクトリエでは800軒ほどの工場を回り、その中から厳選した約60軒の工場と一緒にモノづくりをしています。

800軒の工場を回り、その中から厳選した約60軒の工場と取引しているという山田敏夫さん
800軒の工場を回り、その中から厳選した約60軒の工場と取引しているという山田敏夫さん
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山田敏夫(やまだ・としお)
ライフスタイルアクセント代表取締役、ファクトリエ代表
1982年生まれ。熊本県熊本市出身。創業100年の老舗婦人服店の息子として育つ。大学在学中、フランスへ留学しグッチ・パリ店で勤務し、一流のものづくり、商品へのこだわり・プロ意識を学ぶ。2012年1月、工場直結ファッションブランド「ファクトリエ」を展開するライフスタイルアクセントを設立。著書に『 ものがたりのあるものづくり ファクトリエが起こす「服」革命 』(日経BP)など。

 どうやって工場を探すかというと、“突撃”に近いスタイルです。工場はネット上に情報がない場合も多いので、電車で郊外の駅に行き、駅に置いてある懐かしの「タウンページ」をチェックします。そして「縫製」など関連がありそうなカテゴリーのページを見て、一軒一軒、電話をします。実際に電話をして話を聞くまで、そこで作っているのが洋服なのか水着なのか、分からないんですよね。話を聞いた結果、関係がありそうなものを作っている工場で「今ならいるよ」と言っていただけたら、工場まで出向き、直接会って当社のビジネスを説明します。

 工場がファクトリエと直接取引をするメリットは3つあります。1つは工場にきちんと利益が出ること。アパレルメーカー、卸といった中抜きがないので、工場が製品の価格を決められます。これは小売り側が価格を決めるアパレル業界では画期的なことです。今、大手アパレルの原価は15~20%程度といわれていますが、ファクトリエでは「工場が設定した価格の倍の金額で売る」と決めています。例えば、同じ小売価格1万円のシャツでも、大手アパレルの原価2000円のものと、原価5000円のファクトリエのものなら、お客様に品質の良さやお得感を感じてもらいやすいと思います。

 そして2つ目は繁忙期、閑散期の差が小さくなること。今までの流通のシステムだとニット工場は夏が暇ですし、Tシャツ工場は冬が暇です。でも、ファクトリエでは年間を通じて定番の商品を販売するので、繁忙期、閑散期をなくせます。工場が暇なときに作っておくことも可能です。

 3つ目は工場の従業員のモチベーションが上がること。ファクトリエは前述の通り工場の利益をしっかり確保しますし、また、商品には必ず生産工場の名前の入ったタグを付けています。そうすることで自分たちのモノづくりに誇りを持ってもらえたらと願っています。

ファクトリエでは工場と直接取引をすることによって、高品質の商品を販売している(取材を行ったファクトリエ銀座店)
ファクトリエでは工場と直接取引をすることによって、高品質の商品を販売している(取材を行ったファクトリエ銀座店)
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「品のある大人」を目指す

 日本全国の優秀な工場とタッグを組み、日本から世界的なブランドを生み出したい──それがファクトリエの願いです。そして、ファクトリエの商品を求めているのは「品のある大人」のみなさんだと感じています。いたずらに流行を追うのではなく、素材の良さやシルエットの美しさ、モノづくりに込められたストーリーに共感してファクトリエの商品を購入していただく。そのため、「ファンはアーティストの鏡」という言葉もありますが、まずは僕たち自身が「品のある大人」にならなくてはいけません。知性や好奇心を自ら育む必要があります。

 そこで、ファクトリエでは、2016年から毎週月曜日の朝に読書会を行っています。新型コロナウイルス禍以前は対面でしたが、今はオンラインで30分です。最初の15分はルーレットで選ばれた数人が直近1週間の近況報告をしてそこから得た気づきを述べ、残り15分で事前に指名された1人が自分の好きな本を紹介します。参加者は全職種の社員で、出席者は20人ほど。参加者の人数よりも熱気のほうが大事なので、自由参加で本当に出たい人に出てもらっています。

 なぜ読書会なのかというと、やはり本は学びのクオリティーが高いからです。今は動画で学べるものもありますが、自称専門家が語っていて真偽のほどが分からない場合も。膨大な動画から良いコンテンツを探すより、本を読んだほうがはるかに効果的です。

 ちなみに当社では、本は経費で無制限に買えます。過去には1カ月で10万円ぐらい購入した社員もいましたね。「読んだ本は会社の本棚に置いておくように」などと口うるさいことは言いませんし、どんなジャンルの本でもOK。こう言うと社外の人に驚かれるのですが、読んだ本人が「品のある大人」になってくれれば、十分に費用対効果があります。

読書は社員の自走も促す

 実際に社員たちがどんな本を選んでいるかは本のリストを見てもらうと分かります(下表)。ビジネス書あり、デザイン関連あり、歴史の本あり……とバラエティーに富んでいて、これも読書会のいいところですね。自分がまったく興味のなかった本でも、誰かが薦めていれば「読んでみようかな」と思いますし、本を通じて対話が生まれます。

■読書会で取り上げられた主な本
書名 著者名 出版社
一気読み世界史 出口治明 日経BP
すてるデザイン 永井一史+多摩美術大学 すてるデザインプロジェクト パイ インターナショナル
ガチャガチャの経済学 小野尾勝彦 プレジデント社
なまえデザイン 小藥元 宣伝会議
1000枚の服を捨てたら、人生がすごい勢いで動き出した話 昼田祥子 講談社
丁寧道 武田双雲 祥伝社
目の見えない白鳥さんとアートを見にいく 川内有緒 集英社インターナショナル
今日、誰のために生きる? ひすいこたろう、SHOGEN 廣済堂出版
「のび太」という生きかた 横山泰行 アスコム
チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論 畑中翔太 朝日新書
(注)2023年3月~24年4月の読書会で取り上げた本から抜粋

 読書会に参加することによって、自分が本を紹介するために書店に出かけたり、近況報告をするために美術展や映画館、カフェに行ったりします。そうすると、仕事でパソコンばかり見ていたとしても、毎日に“引っかかり”ができます。僕たちは忙しさにかまけて、下手をしたら春に桜を見ず、秋にいちょうを見ず、ただ漫然と季節をやり過ごしてしまいますが、それでは知性や好奇心は育めません。「品のある大人」になるためには、日々の中に何かしらの爪あとを残すことが大切です。

 みんな、自分が本を紹介するときは頑張って、パワーポイントで10枚ぐらいの資料を作っていますね。本の読みどころを抽出してまとめており、初めてその本を見た人でも内容がつかめるように工夫しています。なお、読書会に出られなかったとしても、Slackで読書会の資料や感想を見ることができます。

 本の紹介は、ファクトリエの社員にとって、その物の優れている点を確実に相手に伝えるというスキルを磨くことにもつながります。また、読書習慣が身に付くことで、例えば誰か専門家にアドバイスを請うときに、知識ゼロで話を聞くのではなく、事前に80%ぐらいまでは本から知識をインプットしている状態でのぞむといったことができます。読書会は、社員が自分で学んで行動する自走能力を育てることにも役立つと実感しています。

 次回は、読書会で印象に残った本や僕自身のお薦め本を紹介します。

「『品のある大人』になるためには、日々の中に何かしらの爪あとを残すことが大切」
「『品のある大人』になるためには、日々の中に何かしらの爪あとを残すことが大切」
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取材・文/三浦香代子 写真/鈴木愛子

メイド・イン・ジャパンの新しいものづくりがここに!

店舗なし、セールなし、生産工場を公開、価格は工場に決めてもらう――。アパレル業界のタブーを破って日本のものづくりを変えた革命児は、「無力」だからこそ仲間を巻き込み、古い常識を飛び越えられた。

山田敏夫著/日経BP/1540円(税込み)