工場と直接取引をすることで高品質の衣料品などを販売するファッションブランド、「Factelier(ファクトリエ)」を展開するライフスタイルアクセント。同社では毎週月曜日に読書会を開催し、当番の社員1人が好きな本を紹介しています。ファクトリエ代表の山田敏夫さんに、その読書会で紹介されて特に良かった本や、これまでの読書経験で心に残った本を聞きました。
本の知識を生かす3行レビュー
前回「 ファクトリエ 『品のある大人』を目指す毎週月曜の読書会 」はファクトリエの読書会と選書リストを紹介しました。今回は僕自身が読んできた本と、読書会で心に残った本を取り上げたいと思います。
もともと僕は本が好きで、週に1冊は読みます。2010年頃からは1冊読んだら、3行レビューを書くようになりました。最初は本を読むだけだったのですが、やはりどの本に何が書いてあったかを忘れてしまうんですよね。「著者はこういう意見を述べていたはず」と思って読み返してみると、自分の記憶がズレていることもある。本で得た知識を生かし、実際の行動につなげるには記録を取ることが大事だと思い、習慣化しています。
今は書店や電子書籍サイトで気になる本を買ったり、ファクトリエの読書会で社員が薦めていた本を手に取ったりしています。誰かのお薦め本は比較的すぐ読みます。
ライフスタイルアクセント代表取締役、ファクトリエ代表
最近読んだ本をざっと挙げてみると、『すてるデザイン 持続可能な社会をつくるアイデア』(永井一史+多摩美術大学すてるデザインプロジェクト著/パイ インターナショナル)『シャネル 最強ブランドの秘密』(山田登世子著/朝日新書)、イタリアのアパレルメーカー、ブルネロ・クチネリが自らの経営について書いた『人間主義的経営』(岩崎春夫訳/クロスメディア・パブリッシング)など、デザインやアパレルに関連する本が多いですね。
こうしたジャンル以外にも、『推しエコノミー 「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』(中山淳雄著/日経BP)『冒険の書 AI時代のアンラーニング』(孫泰蔵著/同)といったビジネス書も読みます。他にも、『禅僧沢庵 不動智神妙録 身体心理学で読み解く武道的人生哲学』(湯川進太郎著/誠信書房)など哲学の本や、『孤独の宰相 菅義偉とは何者だったのか』(柳沢高志著/文藝春秋)といった政治関連の本も面白かったですね。本当に何でも読みます。
ファクトリエが目指すリーダー像
では、最近読んだ中から特に面白かった3冊を紹介します。
まず1冊目は『 チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論 』(畑中翔太著/朝日新書)。最近のファクトリエの読書会で紹介された本です。
本書は、内村光良さんにかかわりのある24人がそのリーダーシップについて証言するという内容なのですが、すごい人だな、と感心しました。ベテランになっても「内村文化祭」というコントライブを続けていたり、ロケ先で雨が降ったら、関係者と一緒に雨でグチャグチャのグラウンドを整備したり。人と並走しつつ、誰よりも努力するという姿勢をずっと持ち続けられるのは尊敬します。
ファクトリエには「誠実・挑戦・楽しむ」というバリューがあるのですが、内村さんのリーダーシップはそれに近いものがあり、この本から僕自身も学ぶところがありました。社員のみんなにも読んでもらい、こうしたリーダー像を目指してほしいと思います。
2冊目は『 ガチャガチャの経済学 』(小野尾勝彦著/プレジデント社)。こちらも以前、読書会で紹介された本です。
ガチャガチャとは、あの小銭を入れてレバーを回すと出てくるものですが、日本全国の設置台数は約60万台。郵便ポストが約18万本なので3倍以上の数です。開発メーカーはおよそ40社、市場規模は610億円にまで成長しています。ここまで伸びた理由はカプセルの中身はもちろん、「ガチャガチャの森」という専門店ができたことも関係しています。
カプセルの中身は、ブームになった「コップのフチ子」や、本当にギャルが折ったという「ギャルが折った折り鶴」、懐かしの街並みを再現した「地元ガチャ 立石」など、もう何でもあり。今まで知らない世界を知るって面白いな、と感心しました。
そして、3冊目はドイツで発売された『 樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声 』(ペーター・ヴォールレーベン著/長谷川圭訳/ハヤカワ・ノンフィクション文庫)です。
実は、森の木にも仲間意識がある、言葉を交わしている──と聞くと、「本当に?」と思いますよね。でも、本当なんです。ただ、樹木における会話は芳香物質。香りでコミュニケーションを取るそうです。そして、ブナの木は特に仲間意識が強く、弱っている木がいると、自分の栄養を分け与えるのだとか。そうした樹木たちの知られざる生活を知ると、共依存する組織とはどうあるべきか? と考えさせられました。
何年も読み続けている本
今回、記事で紹介するために読んできた本を振り返りましたが、世の中には名著がたくさんありますね。まだまだ僕も読んでいない本がありますし、もっと多くの本を読みたいと思っています。なぜかというと、自分自身ができない人間だと理解しているから、あらゆるものから学びたいんです。
僕は子どもの頃に水泳、野球、バスケットボール、サッカー、剣道をしていて、誰よりも練習したのですが、レギュラーに選ばれるどころか、うまくもならず。水泳は3歳から始めたのに、中学生になっても飛び込みができませんでした。
そのときに救われたのが、武者小路実篤の『 愛と死 』(新潮文庫)です。「上手昔より上手ならず。下手いつまでも下手ならず」という言葉が出てくるのですが、何も満足にできなかった中学生の僕は、この言葉にずいぶん励まされました。当時の文庫本を今でも大事にしていますし、ファクトリエもずっと続けることに意味がある、続ければ続けるほど社会が良くなると信じています。
もう何年も読み続けているといえば、ウォルマートの創業者であるサム・ウォルトンの『ロープライス エブリデイ』(ジョン・ヒューイとの共著/竹内宏監修/同文書院インターナショナル)、マクドナルドを世界規模の企業に成長させたレイ・クロックの『 成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝 世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者 』(ロバート・アンダーソンとの共著/野崎稚恵訳)もそう。
経営のお手本というよりは、オジサンになっても頑張る姿がカッコいいなと感じています。彼らがビジネスを大きくしたのは50代で、日本の50代というと、「定年までつつがなく……」という思考になる人も多いと思いますが、50代、60代でも青春を謳歌しているオジサンのほうが絶対カッコいいですよね。
僕もせっかく「日本のモノづくりから世界一流のブランドをつくる」という使命を見つけたので、いくつになっても頑張りたいと思います。
取材・文/三浦香代子
店舗なし、セールなし、生産工場を公開、価格は工場に決めてもらう――。アパレル業界のタブーを破って日本のものづくりを変えた革命児は、「無力」だからこそ仲間を巻き込み、古い常識を飛び越えられた。
山田敏夫著/日経BP/1540円(税込み)





