成果を出し続けるリーダーは、3つのアクションに注力しています。それは、「信頼関係を築き、人間関係の悩みを解消」「任せ方を磨き、マネジメントと育成を両立」「自走するチームを育て、持続的な成長と成果をもたらす」です。では具体的にどう行動すればいいのか? 連載第5回は「成果につながる研修」について。『一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本』(越川慎司著/日経BP)から抜粋・再構成してお届けします。
どうしたら主体的に「学ぶ」のか?
「研修を実施しても、なかなか成果に結びつかない」
多くのリーダーが、この課題に頭を悩ませているのではないでしょうか。
厚生労働省の令和5年度「能力開発基本調査」によれば、企業の教育訓練費は前年比15%増加。しかし、「研修の効果を実感する」と回答した従業員は、わずか28%にとどまっています。
さらに弊社が2022年に実施した「人材育成実態調査」(対象234社)では、会社が用意した研修プログラムで行動意欲が高まったのは、わずか34%であることが明らかになりました。
残りの66%は「義務的な参加」に終わっていたのです。
なぜ、このような結果になってしまうのでしょうか。
ある大手メーカーの人事部長は、失敗事例をこう語ります。
「年間100時間の必修研修を設定し、全社員に受講を義務付けました。
内容は充実していたはずなのに、『やらされ感』が強かったようで、
研修内容が実践に結びつきませんでした」
一方で、成功事例も存在します。
あるIT企業では、研修プログラムを「投票・応募形式」に変更。
社員自身が受けたい研修を選び、場合によっては新しいプログラムを提案できる仕組みを導入しました。その結果、次の行動変容が起こりました。
【研修を「投票・応募形式」にした効果】
● 研修後に行動意欲が向上した受講生は96%、以前より+14pts
● 実際に活用した受講生は78%、以前より+12pts
● 自主的な学習時間が23%増加、以前より+13pts
この違いは、2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラーの「ナッジ理論」とも一致します。
人は強制されるよりも、自ら選択する機会が与えられたとき、より積極的に行動を変容させるというのです。
研修がうまくいっている企業の3つの共通点
実際、研修の実施に成功している企業には、ある3つの共通点がありました。
1 選択の自由を与える
● 複数のプログラムから選べる
● 受講時期を自己決定できる
● 新たな研修プログラムを提案できる
2 参加者同士の対話を行う
● 経験を共有するグループワークを設定
● 実践する上で逆境と挫折を話し合う
● 相互フィードバックの場をつくる
3 現場での実践と連動する
● 質疑応答や、先輩社員のマッチングなど受講後のフォローアップを拡充
● 受講後の心境や行動の変化をアンケートやヒアリングで確認する
● 受講者同士が行動実験の結果や学びを共有し、刺激し合う共有会を実施
研修がうまく機能していなかった企業18社にこの3つを取り入れてもらったところ、受講者満足度が平均で21%上がりました。
また予想外の結果として、研修受講者の上司の満足度が32%も高まりました。
主体性を引き出す環境には「選択」と「決定」の自由がある
これらの調査から、「強制」ではなく「選択」が成長を促すことがわかりました。
ある中堅企業の人材開発部長は、印象的な成功事例を教えてくれました。
「最初は『選択制にすると、誰も参加しないのでは』と心配でした。
でも実際には、むしろ積極的な参加が増え、研修後の行動変容も著しく向上したんです」
完璧な研修プログラムを用意する必要はありません。
重要なのは、メンバー自身が「選択」と「決定」の主体となる環境を整えること。
その小さな変更が、大きな変化を生み出す第一歩です。
たとえば、次の研修計画を立てるとき、メンバーに「どんな学びが必要か」を問いかけてみてください。あなたのチームでも明日からできることがあるはずです。
その一歩から、真の人材育成が始まります。
越川慎司著/日経BP/1980円(税込み)




