「老後が漠然と不安でどうしたらいいかわからなかったけれど勇気が出た」「何に備えたらいいかわかるようになった」「まったく知らなかった未来のテクノロジーについて知識が得られた」。そんな声が届いているのが、『 2040年の未来予測 (日経ビジネス人文庫) 』(成毛眞著)だ。17万部を突破した単行本『2040年の未来予測』が文庫化され、発売わずか4日で重版が決まっている。この本について、大阪大学名誉教授の仲野徹氏が解説する。
未来予測本はたいてい当たらない、しかしこの本は当たる
未来を予測する本はあまり読まないことにしている。なぜかって? あてにならないからだ。考えてみれば当然のことで、イノベーションなどというものは、その定義からして予測などできるはずがない。
とはいえ、ある程度は予測可能なものもある。その典型的なものは人口動態だ。しかし、これとて、従来のデータに基づいた延長の部分であって、今後の出生率などは不確定である。
この本『2040年の未来予測』は、そのあたりをじつによく考えて書かれている。ある意味では「ずるい」と言えなくもないが、当たるかどうかわからない予測を避けて、現状から推定できそうなテーマに絞られている。そんなでは面白くないと思われるかもしれないが、それは間違いだ。未来予測はフィクションとして読みたいのではない。ある程度当たる「占い」として読んでみたいのだから。
10年先の予測となると近すぎるし、50年となると遠すぎる。単行本として発行されたのは2021年だからほぼ20年先の予測、その設定が絶妙だ。すでに4年がたったので、そこそこの「答え合わせ」が可能である。
今回の文庫化にあたり、データはバージョンアップされているが、内容そのものにはほとんど改訂が加えられていない。これは著者の成毛眞が横着だから、というわけではなくて、変更を加える必要がなかったためだ。素晴らしいではないか。
四つの章から成り立っていて、一番目は、自動運転、無人店舗、DX、AI、電力などテクノロジーの進歩についてである。なんといってもスマホの登場が大きいが、過去20年を振り返っただけでも、技術の進歩がいかに我々の生活を変化させたかは明らか。なによりも知っておくべき項目である。ただ、世界を大きく変えつつある生成AIについては書かれていない。逆に言うと、それだけ大きなイノベーションだったということだ。
二つ目は、年金、税金、医療費など未来の経済について。およそ制度というのは慣性力が強いので、これらについては人口動態でおおよその予測が可能なのだ。
三つ目の「衣・食・住を考えながら未来予測する力をつける」はすこしニュアンスが違う。「衣食住の未来は、短期的にコロコロ変わる」ことを前提に、「不測の未来を予測する力を身につけよう」というのがテーマになっている。
最後の章は「天災は必ず起こる」で、いつかはわからねど、天災に備えておくべきとの心構えが書かれている。
拙著『この座右の銘が効きまっせ!』(ミシマ社刊)でも紹介したのだが、遺伝子発現の調節機構でノーベル生理学医学賞を受賞したフランス人の生物学者フランソワ・ジャコブに「確実に予見できる出来事が一つだけある。それは、自分がいずれ死ぬということである」という言葉がある。
世の中は基本的には予測不能、まさにその通りだ。しかし、だからこそ、自分なりに未来を推しはかりながら生きていくことが大事なのである。
『2040年の未来予測』は単なる未来予測の本という以上に、生きていく上での参考書たりうる本だ。どこまで信じるかはあなた次第。しかし、この本の内容を頭に入れて生きる方向性を決める方がいい。そうすると、間違いなく人生に対する満足度が高くなるはずだ。
