ニュースをおさらいし理解を深めることで、就活や転職、会議、商談など幅広い場面ですぐに生かせる知識が得られます。今さら聞けないニュースをQ&A形式で日経新聞の記者がスパッと解説する『Q&A日本経済のニュースがわかる! 2025年版』(日本経済新聞出版)。本書から一部を抜粋します。1回目は、「大阪・関西万博の経済効果と日本への影響」について。
上振れした開催費用に見合うのか
2025年4月に開幕する国際博覧会(大阪・関西万博)は大阪湾に浮かぶ人工島・夢洲(ゆめしま)を舞台に、会期の半年間で2820万人の来場が想定されています。開催は日本政府が主体です。160以上の国・地域や国際機関が参加を表明しており、日本政府や国内の自治体、民間企業も数多く出展します。日本での万博開催は1970年の大阪、2005年の愛知などに続き6回目になります。直近の万博は21年開幕のドバイ万博ですが、新型コロナウイルス禍の影響で当初からは1年延期されました。
24年3月に経済産業省が公表した試算によると、大阪・関西万博の経済波及効果はおよそ2.9兆円に上ります。内訳は建設投資が8570億円、運営やイベントで6808億円、来場者の消費額は1兆3777億円となっています。一方で開催にかかる費用は、開閉会式などを行う「EXPOホール(大催事場)」などメイン会場の建設費に最大2350億円、スタッフの人件費や輸送管理費などの運営費に1160億円を投じます。
これまで開催費用は上振れしてきました。会場建設費は誘致の時点で最大1250億円としていましたが、会場デザインの変更や資材高の影響もあり、1.8倍超に膨らみました。政府と大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担することになっています。入場券やグッズの販売収入を充てる運営費は20年に公表した基本計画で809億円と想定していましたが、警備体制の強化などで4割超の増額になりました。
巨額の投資に見合う効果を上げられるよう、今後は官民で周辺地域の観光コンテンツの磨き上げなどを進めることも重要です。シンクタンクのアジア太平洋研究所(APIR、大阪市)は万博の期間中、周辺地域が積極的にイベントを展開する「拡張万博」を提案しています。APIRは「拡張万博」でインバウンド(訪日外国人)などの宿泊日数が延びれば、最大で経済効果は3兆3667億円まで高まると試算します。
万博を商機と捉えた民間の動きも本格化してきました。大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)は御堂筋線と中央線の主要15駅のリニューアルを進めています。万博会場の最寄り駅となる新駅「夢洲駅」も25年1月の開業を目指して工事が進められています。ロイヤルホテルも旗艦ホテルのリーガロイヤルホテル(大阪市)を大規模改修します。135億円を投じて老朽化した客室やレストランを刷新し、海外富裕層を取り込んで客室単価の上昇につなげたい考えです。
注目の新しい技術や芸術とは
大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。かつての万博は参加国が国力を誇示する「国威発揚(こくいはつよう)型」が主流でしたが、人類が抱える課題の解決を念頭に、新しい技術や芸術などを発信する場に形を変えてきました。今回の万博では会場へのアクセス手段として電気自動車(EV)仕様の自動運転バスや、水素で動く船も活用される予定です。会場内の決済手段は全面キャッシュレス化され、顔認証を使った決済も導入されます。
再生医療などの分野で披露される様々な技術も、今回の万博の目玉コンテンツとなりそうです。大阪府と大阪市が運営する「大阪ヘルスケアパビリオン」とパソナグループのパビリオンでは、iPS細胞から育てた心臓の細胞をシート状に加工した「心筋シート」が出展されます。大阪大学の澤芳樹特任教授らが開発しました。重症の心不全患者の治療ではドナー(提供者)不足などの課題がありますが、心臓にこのシートを貼り付けて心機能を回復させる新たな道を開きます。万博出展を通じ、本格的な普及を目指します。
万博のテーマを体現する「テーマ事業」に携わる8人のプロデューサーも、未来の社会を先取りしたアイデアを競います。大阪大学の石黒浩教授や慶応義塾大学の宮田裕章教授、メディアアーティストの落合陽一氏らが名前を連ねています。石黒教授は自身が企画するパビリオンで、人間そっくりのアンドロイドや人工知能(AI)を搭載したロボットなど計約50体を披露する計画です。石黒教授は「科学技術が強大な力を持つ現代は、人間自らが責任を持って未来をデザインする時代。どんな未来をつくらねばならないか、来場者には具体的なイメージを持って帰ってもらいたい」と話しています。
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日本経済新聞社編/日本経済新聞出版/1870円(税込み)



