ニュースをおさらいし理解を深めることで、就活や転職、会議、商談など幅広い場面ですぐに生かせる知識が得られます。今さら聞けないニュースをQ&A形式で日経新聞の記者がスパッと解説する『Q&A日本経済のニュースがわかる! 2025年版』(日本経済新聞出版)。本書から一部を抜粋します。2回目は、「国内スタートアップの現状と今後の動向」について。

Q. 国内スタートアップの現状とは。これからどうなるのか。
A. 優れた技術やビジネスモデルを持ち、持続的な成長が期待できるかどうかによって企業への選択と集中が進んでいます。大型の資金調達が活発な一方で、資金が続かず、淘汰される企業も増えています。

盛り上がりに欠けるスタートアップ投資

 2022年以降、欧米の利上げやウクライナ危機を受けて、世界のスタートアップ投資は減速しています。米調査会社CBインサイツによると、24年1~6月(上半期)の世界のスタートアップの資金調達額は1266億ドルで、前年同期と比べて7%減少しました。新規株式公開(IPO)市場の低迷を受けて、未上場企業に資金を供給するベンチャーキャピタル(VC)などが投資に慎重になっていることが背景にあります。

 日本国内を見てみると、投資件数は22年をピークに減っており、選択と集中の色が強まっています。スピーダ スタートアップ情報リサーチによると、23年の国内スタートアップの資金調達額は18%減の8039億円、調達社数は12%減の3551社となりました。選択と集中が進んだ結果、1社あたりの平均資金調達額は2億7400万円と22年と比べて8%減りました。

 スタートアップは短期間で事業を広げるために、自社サービスの開発やマーケティングに多額の投資をします。コスト負担が膨らみ、営業赤字を計上し続けている場合がほとんどです。21年までは世界的なカネ余りを背景にVCなどはこうした赤字のスタートアップにも積極的に投資していました。

 しかし、22年以降は売上高の伸びに加えて、損益を黒字化しているか、または近い将来黒字化できる可能性が高い企業でなければ、市場で高い評価を受けにくくなりました。これを受けてスタートアップは上場の数年前から実績や収益化のシナリオを示すことが求められるようになりました。これが難しい企業は廃業やピボット(事業転換)、他社へのM&A(合併・買収)などの検討を余儀なくされるでしょう。

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 米オープンAIの「Chat(チャット)GPT」などで注目される生成AI(人工知能)や、モビリティーなどの成長分野でも淘汰の波は押し寄せています。地上から浮上して走行する「ホバーバイク」の開発を手掛けていたA.L.I.テクノロジーズは24年1月、東京地裁から破産手続きの開始決定を受けました。AIの運用に使う半導体チップの開発を手掛けるLeapMind(リープマインド)は24年7月、解散すると発表しました。

 それでは、どのような企業に投資が集まるのでしょうか。24年上半期に大型資金調達をしたスタートアップを見ると、独自技術で脱炭素、AI、宇宙などのトレンドを捉えたビジネスモデルが目立ちます。

100億円規模の調達に成功する企業も

 日本経済新聞社が出資する投資家向けサービスのケップルグループ(東京・港)が、2000年以降に設立された未上場企業を対象に24年1~6月に調達した資金を算出したところ、低環境負荷の人工たんぱく質素材を開発するSpiber(スパイバー、山形県鶴岡市)が2位に入りました。同社の素材は製造時の二酸化炭素(CO2)排出量や水の使用量が少なく、畜産農業由来のカシミヤやウールに比べて環境負荷を抑えられる特徴があります。調達資金のうち数十億円を投じ、26年をめどに年間生産能力を現状の10倍に引き上げる計画です。

 8位のアスエネ(東京・港)はAIを活用したCO2排出量の正確な計測や削減支援に強みを持ち、導入社数は6000社を超えています。第三者割当増資の引受先には三井住友銀行やリコー、村田製作所などが名を連ねました。各社は取引先にアスエネの導入を促し、供給網全体のCO2の見える化を後押しします。

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 創業1年以内に100億円規模の大型調達に成功する企業も現れています。米グーグル出身の著名なAI研究者らが23年7月に日本で設立したSakana(サカナ)AI(東京・港)は約200億円を調達し、ユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)になると伝えられました。24年1月設立でライドシェア事業を手掛けるnewmo(ニューモ、東京・港)はVCなどから120億円超を調達し、大阪のタクシー会社を買収しました。

 もっとも全体としてIPOに至る企業は低水準にとどまっているほか、地方に行くとVCが少なく、優れた技術を持っていてもうまく起業に結びついていないのが現状です。起業後の事業拡大支援や地方における起業支援の充実が課題になります。

独自技術で脱炭素、AI、宇宙などのトレンドを捉えたスタートアップが大型資金調達に成功(写真:Sutthiphong/stock.adobe.com)
独自技術で脱炭素、AI、宇宙などのトレンドを捉えたスタートアップが大型資金調達に成功(写真:Sutthiphong/stock.adobe.com)
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日経記者がスパッと解説!

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