ニュースをおさらいし理解を深めることで、就活や転職、会議、商談など幅広い場面ですぐに生かせる知識が得られます。今さら聞けないニュースをQ&A形式で日経新聞の記者がスパッと解説する『Q&A日本経済のニュースがわかる! 2025年版』(日本経済新聞出版)。本書から一部を抜粋します。4回目は、「世界最大の人口で、勢いが止まらないインドの成長」について。

Q. 躍進目覚ましいインド経済の行方は。
A. 人口増加による豊富な労働力を武器に高い経済成長率を維持しています。産業育成に向けたインフラや法整備が今後の成長力を左右します。

世界最大の人口が押し上げる成長

 インドの人口は14億人を超え、国連推計では2023年に中国を上回って世界最大となりました。30年ごろには15億人に達する見通しです。15~64歳の生産年齢人口も増加基調を保ちます。この「人口ボーナス」が潤沢な労働力の供給につながり、経済に追い風が吹きます。モディ首相は英国から独立して100年の節目となる47年までに先進国入りすることを目標に掲げています。

 国際通貨基金(IMF)の推計によると、インドの名目GDP(国内総生産)は25年に4兆3398億ドル(約690兆円)となり日本を抜いて世界4位に浮上する見込みです。この勢いが続けば27年にはドイツも上回り、世界3位に躍り出ると見られています。円安によってドル換算の日本のGDPが目減りしている影響もありますが、経済規模が拡大基調にあることを映しています。

 成長速度も高い水準を維持しています。インド政府の統計では23年度の実質GDP成長率は8.2%に達しました。インド準備銀行(中央銀行)は24年度の成長率を6月時点で7.2%と予測しています。

 人口増は消費市場の拡大につながります。その主役として期待されるのが比較的豊かな中間層の台頭です。英調査会社ユーロモニターは世帯年収1万5000~3万5000ドルの所得層が30年までにおよそ9462万世帯に増えると見ています。全世帯の3割を占める計算となります。

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 所得が伸びれば家電製品や自動車などの消費に回す余裕が生まれます。インド自動車工業会(SIAM)による23年度のインド国内の新車販売台数(出荷ベース)は22年度より7%増の518万6624台で過去最高を更新しました。

 膨らむ巨大市場は自動車以外の企業も引き寄せます。日本からは自動車をはじめとしたメーカーや金融など1400社が進出しています。10年間で1.5倍ほどに増えました。国際協力銀行の調査では日本企業にとって中期的に最も有望な事業展開先としてインドは2年連続で首位となっています。

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 近年は統制を強める中国に頼らないサプライチェーン(供給網)の整備が日本や米欧主要国の懸案となり、インドは経済安全保障の観点からも無視できない存在となってきました。

1人あたりGDPは世界最貧国と同じ

 インドでは24年6月に開票された総選挙で、モディ首相の率いるインド人民党(BJP)を中心とする与党連合が過半数を確保しました。ただBJPは19年の前回選挙よりも議席を大幅に減らし、単独過半数には届きませんでした。

 その主な要因として指摘されるのが国内の深刻な経済格差や若者の失業問題です。インド経済は全体としては成長しているものの、1人あたりの名目GDPで見ると2500ドル台で、世界最貧国の1つとされるバングラデシュと同じ程度の水準にとどまります。国内の上位1%の富裕層が持つ資産が国全体の富の40%程度を占めます。成長の果実が国民1人ひとりに十分行き渡っていないのが現実です。

 国際労働機関(ILO)によるとインドの若年層の失業率は都市部で2割に迫ります。毎年1000万人から1200万人ほどが労働市場に加わるなかで、十分な雇用の受け皿が整っていないため働き口が見つからないことが背景にあります。同国の産業構成はサービス分野の比率が高いのが現状ですが、雇用の裾野が広い製造業を早急に育てる必要があります。

 政府も課題は認識しています。モディ氏は14年に初めて政権を獲得した後に製造業振興策「メーク・イン・インディア」を打ち出し、産業構造の転換を目指してきました。GDPに占める製造業の割合を22年までに25%に高める目標を掲げたものの実現には至っていません。

 インド進出をもくろむ海外企業にとって壁となるのが貧弱なインフラや複雑な法制度です。電力網が脆弱で電圧の一時的な低下や停電が頻繁に生じたり、道路や港湾が整備されず物流に支障が出たりしています。硬直的な雇用制度の改善も求められています。

 3期目を迎えたモディ政権がこうした経済課題の改革に真正面から取り組むかどうかは日本企業の戦略にも影響を及ぼすでしょう。

インド進出をもくろむ企業にとってはインフラや法制度が壁に。写真はインドのチャンドニー・チョーク(写真:mds0/stock.adobe.com)
インド進出をもくろむ企業にとってはインフラや法制度が壁に。写真はインドのチャンドニー・チョーク(写真:mds0/stock.adobe.com)
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