ニュースをおさらいし理解を深めることで、就活や転職、会議、商談など幅広い場面ですぐに生かせる知識が得られます。今さら聞けないニュースをQ&A形式で日経新聞の記者がスパッと解説する『Q&A日本経済のニュースがわかる! 2025年版』(日本経済新聞出版)。本書から一部を抜粋します。3回目は、「日本の住宅価格の値上がり」について。

Q. 不動産はなぜ高騰しているのか。
A. コスト高の転嫁に加え、日本の不動産を有望な投資対象と見る海外の不動産投資家などが積極的に購入しているためです。

東京23区、平均価格が1億円を突破

 不動産経済研究所(東京・新宿)が発表した2023年の新築分譲マンションの平均価格は、東京23区が前年比39.4%高い1億1483万円と、データを遡れる1974年以降で初めて1億円を突破しました。

 マンションに代表される日本の不動産が高騰している理由は大きく分けて2つあります。

 まず1つ目は、資材費や人件費といったコスト高の転嫁です。マンションやオフィスビルの建築費は21年以降、上昇基調が続いています。新型コロナウイルス禍で起きた供給制約から資源高が始まり、22年はロシアのウクライナ侵略によって拍車がかかりました。鉄骨や生コンクリートといった資材の価格が大きく上昇しました。23年からは人手不足を背景にした人件費の上昇が建築費を押し上げています。建物の基礎を造るのに必要な鉄筋工事やコンクリート型枠工事の職人を確保するために賃金を引き上げる必要があるからです。

 建設物価調査会(東京・中央)がまとめた24年6月の東京地区の建築費指数(速報値、2015年=100)は、マンション(鉄筋コンクリート造)が131.5と過去最高となりました。このほか、地価の上昇から建設用地の取得費用も膨らんでいます。デベロッパーはこれらのコスト上昇分を販売価格に転嫁してきました。

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海外投資家にとっては「割安」

 理由の2つ目は、海外の投資マネーの流入です。日本の不動産を魅力的な投資対象と見る海外勢が積極的に購入し、不動産価格に上昇圧力をかけました。不動産サービス大手の米ジョーンズラングラサール(JLL)によると、海外投資家による日本の不動産の購入額を表す「インバウンド投資額」は24年1〜3月期に1773億円と、23年10〜12月期の451億円から大幅に増えました。

 海外勢が日本の不動産を魅力的と考える要因の1つが「割安」さにあります。日本不動産研究所(東京・港)がまとめた国際不動産価格賃料指数の24年4月調査によると、東京の港区元麻布にある分譲マンション1室の1坪(3.3平方メートル)あたりの単価を100とした場合(円換算ベース)、大阪は68.2でした。世界主要15都市のなかで最も高い香港(268.2)やロンドン(207.5)に比べて半分以下となっています。オフィスについても、東京を100とした場合、最も高い香港(202.0)の半分程度でした。為替相場が一時円安に振れたことでさらに割安感が強まりました。

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 海外勢にとってアジアで有力な投資対象になるのは主に日本と中国になりますが、中国は政府当局による規制強化などで不動産市場が不安定になる懸念があります。不動産市場や政治が比較的安定していることから日本の不動産が好まれている側面もあります。

 23年春以降の日本株高による資産効果も影響していそうです。株式投資で膨らんだ資産をマンション購入に充当する富裕層の存在が指摘されています。近年は地方都市でも販売価格が1億円を超えるマンション、「億ション」の供給が増えていますが、株高で資産を膨らませた地元の富裕層が有力な買い手になっています。

 高騰の波は中古マンション市場にも押し寄せています。東京カンテイ(東京・品川)によると、東京都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)における中古マンションの平均希望売り出し価格は、24年6月が1億2058万円でした。中古マンションは新築マンションに比べた値ごろ感が住宅購入希望者をひき付けてきましたが、都心部では23年以降、1億円台が定着しました。

 こうした状況から「実需層」と呼ばれる国内の一般家庭はマンションの購入を諦め、賃貸物件に流れつつあります。海外勢から人気な都心6区で値上がりが続く一方、実需層の割合が多い品川区や世田谷区といった城南・城西6区及び練馬区や江戸川区といった城北・城東11区では中古マンション価格が頭打ちとなっています。

 東京カンテイの高橋雅之主任研究員は「マンション相場は海外勢が好む港区や千代田区、渋谷区では上昇余地がある。一方、それ以外の区や周辺3県などでは上昇しにくいだろう」と指摘します。

海外勢から人気な都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)で物件価格の値上がりが続く。写真は中央区佃のタワーマンション(写真:camera papa/stock.adobe.com)
海外勢から人気な都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)で物件価格の値上がりが続く。写真は中央区佃のタワーマンション(写真:camera papa/stock.adobe.com)
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