いつまでも上司や顧客のOKが出ない。やたらと仕事の手戻りが発生する。グダグダな議論が続く……職場でよくあるこんな悩みを解決するのが構造化思考アプローチ。MBAでも学ぶスキルで、問題解決のプロがやっている手法だ。今回は、書籍 『構造化思考トレーニング』 をもとに、キーとなる考え方についてご紹介し、顧客や上司から指摘されがちな論理構造の粗(あら)について見ていきたい。

ゴールを正しく設定する

 構造化思考を身につけるうえでまず理解する必要があるのが、構造化の出発点となる“キークエスチョン”の概念である。キークエスチョンとはあなたがその状況において目指すゴールを疑問形に言い換えた形式である。
 ここでいうゴールとは、「誰が」「どのような状態になっている必要があるか/望ましいか」を表す。

  1回目の記事 でも示した例で説明してみよう。

 仮にあなたが小売店を顧客とする中堅総合商社(XY商事)の新人営業だったとする。あなたの上司から「今後の営業先へのアプローチのために、営業先リストを作成してほしい」と頼まれたとしたらどうするだろうか。

 この例で言えば、ゴールは「依頼された営業先リストが完成し、上司(仕事の依頼主)が次のアクションに移れる状態」などといえる。
 これをキークエスチョンに言い換えると「依頼された営業先リストが完成し、上司が次のアクションに移れるようにするためには?」となる。

 上記をご覧になれば、ゴールが正しく設定できればキークエスチョンの設定自体は基本的に単なる言い換えであることがご理解いただけると思う。

 このキークエスチョンが構造化思考アプローチの出発点となるが、この際のポイントは、前提となるゴールの設定(「誰が」「どのような状態になっている必要があるか/望ましいか」)をいかに具体的にできるかである。

 例えば、「依頼された営業先リストが完成し、上司が次のアクションに移れる状態」というゴールにおいて“次のアクション”が具体的に何であるかによって、そのきっかけとなる営業先リストのコンテンツのあるべき姿は左右される。

 このようにゴール設定の時点で曖昧な点を排除し、いかに具体化できるかが、構造化思考の出発点として特に重要となる。

キークエスチョンを分解する

 ゴールを設定し、キークエスチョンが設定できれば、ここからキークエスチョンを解くための構造化プロセスに入る。

 基本的な考え方としては、次の図に示したようにキークエスチョンを解くうえで必要となる論点を設定していき、解けるイメージのつく詳細なレベルまで分解したのち、実際に末端の論点から解を出していき、その解を積み上げることで、キークエスチョンに回答するというものである。

構造化思考の実践プロセス(概要)
構造化思考の実践プロセス(概要)
(出所)『構造化思考トレーニング』
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 なぜ、このような方法論が重要なのかここで改めて解説しておきたい。筆者が現場で経営コンサルティング業務を行う中で、クライアントから論理性の面で指摘を受けるパターンは大きく次の4つであることを学んだ。

 1つ目は「問いや論点を外している」パターン。
 2つ目は「論理構造に漏れがある」パターン。
 3つ目は「論理に飛躍がある」パターン。
 そして4つ目は「ファクトが疑わしい」パターンである。

 以下、順番に見ていこう。

「ダメだし」の4パターン

 1つ目の「問いや論点を外している」とは、クライアントが知りたいことに答えられていないパターンである。

  1回目 でも取り上げた中堅総合商社の例でいえば、「20%売上を向上させる際のメインターゲットと、そのアプローチをどうすべきか?」という課長の知りたいことに対して、「○○というSaaS型デジタルマーケティングツールの導入」と回答してしまうことがこのパターンに該当する。

 このパターンは他の3つのパターンと比較して、“そもそも”の部分を外してしまっており、どんなに精緻な解析をもとに、壮大なメッセージを展開しても、クライアントなど仕事の依頼主にとって最も無意味なパターンである。

「そもそも」を外してしまうと、上司や顧客から手厳しい指摘を受けることも……(写真:Shutterstock)
「そもそも」を外してしまうと、上司や顧客から手厳しい指摘を受けることも……(写真:Shutterstock)
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 2つ目の「論点構造に漏れがある」とは、メッセージを伝えるうえで、解くべき論点を踏まえられていないことを指す。

 先述の例で説明すると、「20%売上を向上させる際のメインターゲットと、そのターゲットに対するアプローチをどうすべきか?」というキークエスチョンは適切に設定できたのだが、そのアプローチについて「直接訪問すべき」とだけ結論づけてしまい、ウェブ上で広告を出すといった方法論については検討が漏れているといった状態が、このパターンに該当する。

 3つ目の「論理に飛躍がある」パターンとは、端的にいえば「話のつながりがおかしい」というものである。
 先の例を用いていうと、ターゲットへのアプローチの手段として訪問型営業(プッシュ型営業)とネットなどへの広告掲載(プル型営業)の分類があるときに、なぜか優先順位付けの議論を経ずに「ネットなどへの広告掲載(プル型営業)をより重視する」といった結論を早急に出すようなイメージである。

 4つ目の「ファクトが疑わしい」とは、例えばアプローチの優先順位付けの議論をするために、どちらの営業効率が良いかのデータを用いたとして、そのデータの出所が個人のブログに掲載されているだけといった、科学的に証明されていない(事実として疑わしい)話だったりするようなパターンを指す。

 上記のようなクライアントから指摘される論理の“粗(あら)”の4つのパターンのうち、「問いや論点を外している」「論理構造に漏れがある」「論理に飛躍がある」の3つについては、構造化思考における「論点の構造化」がしっかりできていれば避けられるものである。

課題解決のプロがやっている思考法を解説。

いつまでも上司や顧客のOKが出ない。やたらと仕事の手戻りが発生する。グダグダな議論が続く……職場でよくあるこんな悩みを解決する、構造化思考アプローチについて解説。実践問題を解くことで、使いこなせるスキルが身につきます。

中島将貴著/日経BP/1760円(税込み)