健康診断の結果が悪くても、「ちょっと悪いだけだから」「特に痛いところもないし…」と、そのまま放置している人は結構多いでしょう。新刊『 健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと 』の著者である大阪大学特任准教授の野口緑氏は、「『あとで薬を飲めば大丈夫だろう』と思っている人は多いのですが、それは誤解です」と指摘します。一体どういうことでしょうか。

(4コマ漫画:つぼい ひろき)
(4コマ漫画:つぼい ひろき)

血管のコブ「プラーク」は脳梗塞や心筋梗塞の原因になる

 健康診断でLDLコレステロールが基準値を超えても、「特に自覚症状がないから」とそのままにしている方は少なくないでしょう。「最近の医療は進んでいるので、症状が出てきたときに病院に行けばいい」と思っている人もいるかもしれません。しかし、その考え方は危険です。

 というのも、最新の医療をもってしても、どうにもならないことはあり、LDLコレステロールが増えることでできる「プラーク(血管のコブ)」についても同じことがいえるからです。

 LDLコレステロールは悪玉コレステロールといわれ、動脈硬化を進めることがよく知られています。LDLコレステロールの役割の1つは、血管内皮の細胞膜の材料になることです。ところが、LDLコレステロールが多過ぎると酸化されて、「酸化LDL」になります。

 こうしてできた酸化LDLは体にとって異物とみなされ、免疫システムの1つである「マクロファージ」という細胞に取り込まれます。

 マクロファージは血管の壁の中で、たっぷりコレステロールをためてブクブクと太った「泡沫細胞」になります。それによって血管壁が裏側から押し上げられ、血管の内側に盛り上がった「プラーク」というコブができるのです。

LDLコレステロールが増え過ぎると血管にプラークができる
LDLコレステロールが増え過ぎると血管にプラークができる
※一般の人が理解しやすいよう図式化したもので、医学的には厳密でない表現も含まれます。(イラスト:内山弘隆)
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 プラークができると血管壁が分厚くなり、弾力性を失います。また血管の内腔(血液の通り道)が狭くなり、血液がスムーズに流れにくくなります。やがて何かのはずみでプラークが破れると出血し、そこに血小板が集まって血栓(血の塊)ができます。

 このように、もともと狭くなっていた血管にこの血栓が詰まることで血流が途絶え、心筋梗塞や脳梗塞という致命的な病気が起こるわけです。

「あとで薬を飲めば大丈夫だろう」は誤解

 最近はLDLコレステロールを下げるための薬がよく知られるようになりました。だから、「LDLコレステロールが高くなっても、あとで薬を飲めば大丈夫だろう」と思っている人は多いのですが、それは誤解です。

 というのも、薬を飲むことで血液中のLDLコレステロールを下げることはできますが、一度できたプラークを消すことはできないからです。

 「血管にコレステロールがたまる」というと、水アカのように血管の内壁にこびりつくイメージを頭に浮かべる人が多いでしょうが、実は、コレステロールは血液に触れる部分ではなく、血管の壁の「中」にたまるのです。

 きちんと薬を飲んでLDLコレステロールを厳格に管理すれば、プラークが「退縮する」という研究はあるのですが、それでもプラークが完全に消えて元通りになるわけではありません。

 この話をすると「えっ、薬で血管のコブが消えるのだと思っていた」と驚く人は少なくありませんが、そう、薬で消えるわけではないのです。だからこそ、若い頃からコレステロールが高い人は特に、大切な血管にプラークができ、血管が狭くなる前に、薬の力を借りて一刻も早くコレステロールを下げるのが得策です。

「病院に行ってください」と言われて従う人は3割

 健康診断の結果が悪いときに行動を起こす人は、どれくらいの割合でしょうか。

 京都大学のグループが調査したところによると、健康診断で「高血圧」だという結果が出たときに、「病院に行ってください」と伝えられた人のうち、どれぐらいの割合が病院を受診するのかというと、上の血圧が160mmHg以上ある人でさえ(140mmHg以上で高血圧と診断される)、1年以内の受診率は3割程度だったと報告されています(*1)。

 健康診断で重症の高血圧だと指摘されても、7割もの人が1年経っても病院に行かないのです。そう聞いて、「なんだ、自分だけじゃないのか」と安心した方もいるでしょうか。

 いえ、安心している場合ではありません。高血圧を指摘されて、ちゃんと病院に行って治療を始めた人と、病院には行かずにそのまま高血圧を放置した人とでは、差が開いてしまうのです。

 高血圧は重症度別にⅠ度高血圧からⅢ度高血圧までありますが、Ⅰ度高血圧の場合、4年後には、ちゃんと治療をしている人との差が、6㎜Hg程度になります。Ⅱ度以上の高血圧だと、その差は10㎜Hg程度になります。

 病院に行かずに放置している人と、治療を始めた人との差はこんなに大きいのです。ぜひ早めに対策を始めましょう。

*1 BMC Public Health. 2020; 20: 1419.

日経Gooday(グッデイ) 2023年9月15日付の記事を転載/情報は掲載時点のものです]

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野口緑(著)、日経BP、1650円(税込み)