健康診断の結果が悪く、血糖値、血圧、LDLコレステロールなど、複数の項目で基準値を外れている場合、いったい何を優先して改善していけばいいのか悩むかもしれません。高血圧と高血糖とコレステロールの薬を全部飲む必要があるのでしょうか。新刊『 健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと 』の著者である大阪大学特任准教授の野口緑氏は、「健康診断の結果を項目ごとにバラバラに見て、基準値から外れた項目すべてについて対策を講じようとするのはとても大変」と指摘します。では、どうすればいいのか、解説していただきました。

健康診断を受け、血糖値、血圧、LDLコレステロールなど、複数の項目で基準値を外れていると、いったい何を優先して改善していけばいいのかわからなくなり、困ってしまうことがあるかもしれません。
そんなとき、健康診断の結果を項目ごとにバラバラに見ていると、「高血糖と高血圧とLDLコレステロールの薬を全部飲まなければならないのか?」と不安に思うでしょう。
しかし、基準値から外れた項目すべてについて対策を講じようとするのはとても大変。これはまるで、「モグラ叩き」です。
モグラ叩きのゲームで、いきなりモグラが3つも4つも同時に現れたらどうでしょうか。手に持ったハンマーで、いったいどれを叩けばいいのか、困ってしまいますよね。複数の項目について同時に対策するのは、とても難しいものです。
健康診断の結果が悪いときの対策は、モグラ叩きではなく、「ダルマ落とし」で行うことが大切です。ダルマ落としでは、積み上げられたダルマのうち、下のほうをハンマーで叩きます。モグラ叩きのように「上から1つ1つ叩く」のではなく、ダルマ落としのように「下から削る」のが対策の鉄則なのです。
メタボ健診の結果を項目ごとにバラバラに見てはいけない
では、ダルマ落としのような対策とはどんなものでしょう。それについて解説する前に、理解していただきたいことがあります。それは、「健康診断の結果から、血管の状態を推測できる」ということです。
会社や自治体で健康診断を受けた後、結果の表にある1つ1つの値を見て、基準値を超えているかどうか一喜一憂している人が多いように思います。
「血圧が高いんだよね。最近は悪玉コレステロールも増えてきた」
「血糖値はそんなに高くないんだよ。でも中性脂肪がなぁ」
という感じです。
しかし、健康診断の結果について、そのように項目ごとにバラバラに見て終わりにするのは、正しい見方ではありません。
特定健診(メタボ健診)の結果は、項目ごとにバラバラに見るのではなく、そこからあなたの「血管の状態がどうなっているか」を知ることが重要になります。自分の血管を取り出してその状態を調べることはできませんが、健康診断の結果を見れば血管の状態を推測できるのです。
例えば、中性脂肪の値が基準値を超えたり、肝機能の値(γ-GTPなど)が悪くなったりすると、「血管の問題が潜在的に進んでいる」可能性があります。さらに、血圧やLDL(悪玉)コレステロールの値が高くなると、その次の「血管が傷み始めている」段階になります。そして、尿たんぱくやクレアチニンなどの腎機能の値が悪くなってきたら、「血管に深刻な変化が生じている」と考えられます。
次の図をご覧ください。健康診断で異常値が出た項目にチェックを入れると、あなたの血管の障害がどれぐらい進んでいるかがわかるのです。

1つ下を見れば「原因」がわかる、その原因を叩くことが大事
そして、先述した「ダルマ落とし」的な対策を行うには、今紹介した「健康診断の結果から今の『血管の状態』がわかる」の図が役に立ちます。
この図のすごいところは、自分の血管の状態が確認できるだけでなく、「どの結果値を改善したら、今の状態が良くなるか」のヒントも得られることです。
下の図は①~④の段階に分かれていますが、下のほうの段にある項目は上のほうの段にある項目の悪化の原因になっていることが多いのです。

例えば、図のように「血圧」と「血糖」に問題がある場合に、どちらの対策を優先して行えばいいのでしょうか。両方同時に行うべきでしょうか。
図では、血圧と血糖は、「②血管が傷み始める段階」のところにあります。血圧と血糖が高くなっているのであれば、あなたの血管は現在、傷み始めているということです。
ダルマ落とし式に対策を行うためには、そのすぐ下にある「①潜在的に進行する段階」を見てみましょう。ここでは「BMI」と「腹囲」にチェックが入っています。もし、体重が重くてBMIの数字が大きくなり、腹囲も基準値を超えていて内臓脂肪がたまっているのであれば、それが原因で1つ上の「血圧」と「血糖」に問題が起きている可能性があります。
ダルマ落とし式に「下から削る」ためにまずやるべきなのは、BMIと腹囲を改善すること、つまり「減量」だということがわかります。太って内臓脂肪がたまったことが、血圧や血糖が高くなった原因である可能性が高いからです。
体重を減らすことで内臓脂肪が減れば、BMIや腹囲が改善するだけでなく、血圧や血糖も自然と下がってくるというわけです。
ただし、血圧が基準値を超えているけれども、BMIや腹囲は正常の範囲にあるという人もいます。その場合は、内臓脂肪が高血圧の原因ではなく、塩分のとり過ぎや遺伝的素因によって血圧が上がっていることが考えられます。そうやって原因を探ることで、予防が可能になってくるのです。
ほかにも、「①潜在的に進行する段階」にある項目のうち、「肝機能」が悪くなると、糖代謝やコレステロールの合成がうまくできなくなることで、その上にある「血糖」や「LDLコレステロール」の値に関係します。また、「中性脂肪」が上がると、超悪玉のLDLが増え、間接的に血管障害が促進されます。
高血圧や高血糖などを放置していると、血管の障害が進んでしまい、やがて血管疾患や糖尿病の合併症、慢性腎不全などにつながってしまう恐れがあります。そうならないよう、ダルマ落とし式で大元の原因から対策をとりましょう。そうすれば、深刻な血管の病気をより効果的に予防することができます。
(図版制作:増田真一)
[日経Gooday(グッデイ) 2023年9月19日付の記事を転載/情報は掲載時点のものです]
血圧・血糖・中性脂肪・コレステロール・γ-GTP…これらの結果を1つ1つ見て、一喜一憂していませんか? 健診データは項目ごとにバラバラに見るのではなく、そこからあなたの「血管の状態」を知ることが大切です。「症状がないから…」と放っておくのではなく、20年後の健康のために、今から始めましょう!
野口緑(著)、日経BP、1650円(税込み)
