クレームを受けた際、ひたすら「申し訳ありません」と謝るだけでは、さらなるクレームを招くことになりかねません。まずは相手の話をよく聴くことが重要です。相手の話に耳を傾け、話を引き出すための手法が「アクティブ・リスニング」。その極意を『アクティブ・リスニング ビジネスに役立つ傾聴術』(戸田久実著/日経文庫)より抜粋のうえ紹介します。

クレームに耳を傾けて解決方法を探る

 相手がクレームを言うときは、不満を抱えたり、不愉快な思いをしたりしているということ。相手がネガティブな感情を持っているときには、怒りをぶつけてくることもあるので、まず初期の対応として相手の話にお詫びをしつつ、耳を傾けます。

 当然、こちらに非があると判断したら、すぐに「大変申し訳ありません」と誠意のあるお詫びが必要です。

 そして、クレームを言っている人が

・何が原因なのか
・そのときどんな状況だったのか
・どのような気持ちになったのか
・今後どうしてほしいと望んでいるのか

ということを把握するために耳を傾けましょう。

 その後、こちらとしてどのような提案ができるのか、解決方法に話を持っていくという段取りで進めていくのです。

ただ謝るだけでは不快感を与えることも

 クレーム時、ひたすら「申し訳ありません」と謝り倒すだけになっていませんか?

 「申し訳ありません」と何度も繰り返し言うだけでは、本当に悪いと思っているのか、早く終わらせようと思っているのではないかと思わせ、さらに不快感を与えてしまうケースもあります。

 また商品に何らかの欠陥があった、こんな失礼な対応をされたとお客様から言われた瞬間に、

 「本当に申し訳ございません。今後は~のように対応します」
 「では、交換します。今度このようなご提案ができます」

とすぐに解決策を提示すると、

 「ちょっと待って。わたしの話をちゃんと聴いてないよね」
 「早く片づけようと思っているよね」と、さらなるクレームに発展してしまうことも…。

 まず、初期対応で大切なのは、相手の話に耳を傾けることです。

 先ほどお伝えしたように、「何が原因で、どのような状況で、どのような気持ちを抱え、どうして欲しいと相手が望んでいるのか」を把握できるように耳を傾けましょう。このステップを忘れて飛び越えると、「私の話をきちんと聞いてくれなかった」という2次クレームが起きてしまうこともあるのです。

 お客様からの要望を100%かなえる提案ができなかったとしても「この担当者はひとまず私の話を真摯(しんし)に聴いてくれた」「誠意をもって聴いてくれた」と思ってもらえれば、相手の気持ちも静まり、満足するケースもあります。その逆に、十分に話を聴かないまま解決策や提案をして火に油を注がないよう注意しましょう。

お詫びの言葉は事実確認ができてから

 クレームを言われたときに、絶対にこちらに非があると分かるケースがあります。例えば、壊れた商品を見せられ、明らかに「これは欠陥品だ」と分かるときや、お客様が何分も待たされているときなどです。

 その際は、即座に「大変申し訳ございません」とお詫びをすることも必要ですが、一方で、事実確認をせずにむやみに謝ることで、後からトラブルにつながるケースもあります。例えば、

 「病院で処方された薬を飲んだら、具合が悪くなった。処方を間違えて出したよね」

と患者からクレームを言われたときに、

 「大変申し訳ございません」

とすぐに返してしまったら、「病院側が間違った薬を処方したことを認めた」と受け取られるかもしれません。

 でもこれは、事実確認をしてみなければ分からないことです。
 その他のケースでも、相手の勘違いによるクレームだということもあるので、まずは

 「恐れ入ります。もう少し詳しくお話を伺えませんか?」
 「申し訳ありませんが、もう少しこの件に関して、事情を伺ってもいいですか?」

と聴く姿勢を示し、どんなことがあったのか、事情を聴くよう切り替え、むやみに謝らないことも大切なことです。

どんなことがあったのか事情を聴き、むやみに謝らない(写真: metamorworks/stock.adobe.com)
どんなことがあったのか事情を聴き、むやみに謝らない(写真: metamorworks/stock.adobe.com)
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 ただ、むやみに謝らないほうがいいとはいえ、言葉遣いには配慮が必要です。

 「それは○○様の勘違いだと思います」
 「お客様の思い過ごしです」
 「そんなはずはないのですが」

といった、相手のせいにする表現によって、

 「クレームを言ったら、逆にこっちが責められた!」

といった、新たなクレームが発生してしまう可能性があるので要注意です。

言葉や相づちでお客様を怒らせることも

 相づちに使うには難しい言葉があります。

 「そうですか」もそのひとつです。

 相手が怒っているときや不快な思いをしているとき、何かクレームを言ったときに、

 「あ、そうですか」

と言った瞬間に、

 「『そうですか』じゃないよね。そういう他人事みたいな反応、やめてくれないかな」

と怒られるケースがコールセンターでありました。聴き手にはそんなつもりはなくても、表情や態度が見えない電話では、よほど気持ちを込めないと心がこもっていないように聴こえてしまう可能性が高い相づちとなってしまいます。

 そのほかにも、「はぁ」という気のない返答や「はい、はい」という単調な相づちの繰り返しも、さらに相手を怒らせます。真剣に聴いていないように聞こえるからです。

 こういった言葉の使い方にも、気を配る必要があるでしょう。

 逆に、クレーム時にも有効なのは、共感です。
 「かなり待たされたんです」と言う相手に対して、

 「そうですよね…。本当にお待たせいたしました」
 「お待ちになっている間、不安な思いをされましたよね」

というように、本当に申し訳ないというこちらの思いと、相手の感情に共感を示す言葉を入れるといいでしょう。

相手の話した大事なポイントを復唱する

 クレーム対応のときは、相手の感情のボルテージが上がっていることがあります。

 感情的になっている相手の話を聴くときには、共感だけでなく、相手の話の大事なポイントを繰り返すことも有効です。例えば、

 お客様「ずっと、午前中に荷物が届くから待っていたのに!」
 こちら「そうですよね。ずっとお待ちいただいたんですよね」
 お客様「3時間も待っているんだけれど!」
 こちら「3時間も申し訳ありません」

と、大事な話のポイントを繰り返すと、この人は私の話を間違いなく正確に聴いてくれているなと相手も把握できます。さらに、自分の言った重要なポイントを相手の口から耳にすることで、自分の言ったことの確認にもなります。

 このやりとりのなかで、お客様もだんだん冷静さを取り戻していくのです。

 クレーム対応時、特に相手の怒りのボルテージが高いときは、共感の相づちをして、相手の話の大事なポイントを復唱し、確認しながら、繰り返し聴いていくことが大切です。

対話の主導権は聴き手が握っている。相手の話を共感して受け止め、価値観の違いを埋めることで人間関係は改善する。聴く力を鍛えると話す力も身に付く。「アクティブ・リスニング」の基本と実践を解説。

戸田久実著/日本経済新聞出版/990円(税込み)