「金利」を意識したことはありますか? 最も身近な金利は、銀行預金の金利でしょう。では、いまの銀行預金の金利だと、元本が何年で倍になるか、ご存じでしょうか。10年? 20年? 40年くらい? あるいは1億円の預金があったとして、1年後の利息はどれくらいになるか、すぐに答えられますか? 『うかる!FPシリーズ』 に収録している項目をもとに、暮らしに役立つ知識を紹介します。第1回は、金利計算に役立つ「72の法則」を解説します。
預金を倍にするには〇年かかる
日本銀行の「ゼロ金利政策」は1999年にスタートしました。それからすでに20年以上が経過し、いまだに超・低金利が続いています。
現在、メガバンクの定期預金の金利は、おおむね1年定期から10年定期まで0.002%です。単純計算した場合、1,000万円預けても、1年間の利息はわずか200円。10年間預けても利息は2,000円そこそこにしかなりません。さらにそこから税金が20.315%引かれてしまいます。
一方、高度経済成長からバブル経済と呼ばれた時代、1960年代~1990年代前半までの預貯金の金利は、高いときは5~6%でした。郵便局の定額貯金にいたっては、8%もありました。
国債の利回りでも、現在の10年利付国債の利回りは0.25%程度です。少し前まではマイナス金利になっていたため、満期まで保有すれば元本割れで損していました。
10年満期の個人向け国債の利回りでも、最低金利の0.05%です。過去の10年国債の利回りは、高いときで8%を超えていることもありました。
では、冒頭の質問に戻ります。現在の定期預金の金利で預けた場合、何年で元本は倍になるのでしょうか?
それを簡単に計算する方式があります。それが、「72の法則」です。72の法則とは、現在の金利で複利運用した場合、元本が倍になるのに何年かかるかを計算する方法です。72を現在の金利で割ると、元本が倍になる年数が計算できます。
[72の法則] 72 ÷金利=元本が倍になる年数
現在の定期預金の金利0.002%で計算すると……
72 ÷ 0.002 = 36000
……なんと、3万6000年もかかります。
3万6000年前というと、旧石器時代。ネアンデルタール人やホモ・サピエンスの時代です。彼らが現在の金利で定期預金をしていたら、ようやくいま、元本が倍になるのです。
過去の郵便貯金の金利である8%で計算すると……
72 ÷ 8 = 9 年
9年で元本が倍になります。10年満期で1,000万円を貯金していたとすると、満期の時には1,000万円が2,000万円以上になっているわけです。
この20年は預貯金に預けていてもまったく増えない時代であったのかが分かります。この預貯金の状況は「増えないリスク」といわれています。
72の法則で「お金の価値」も計算できる
72を「倍にしたい年数」で割ると、何%の金利で運用しなければならないかが計算できます。例えば、元本を「10年」で倍にしたければ、
72 ÷ 10 年= 7.2%
7.2%で運用すれば10年で元本が倍になることになります。
また、物価が上がりインフレになってきた場合、お金の価値が何年で半分になってしまうかも計算できます。例えば、インフレ率(物価上昇率)が3%だとすると、
72 ÷ 3 = 24 年
24年でお金の価値が半分になってしまうことがわかります。
いま、仮に1万円あった場合、1,000円のラーメンが10杯食べられます。ところが物価が毎年3%上がっていくと、24年で1,000円のラーメンが2,000円になるので、同じ1万円では5杯しか食べられなくなります。1万円の価値が24年で半分になるということです。
インフレ対策としては、インフレに強いとされる株式や株式投資信託、外貨商品等で運用することが必要だといわれています。
株式などの知識は、『うかる!FP3級テキスト』3章 金融資産運用で詳しく学ぶことができます。本編もぜひ、ご確認ください。
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