生成AI(人工知能)の次に来るのは、どんな先端技術なのでしょうか。光電融合、人型ロボット、量子コンピューターの3つの技術を取り上げます。日本経済新聞記者が今押さえるべき45個のテーマを解説した新刊『Q&A日本経済のニュースがわかる! 2027年版』から抜粋、再構成。第2回のテーマは「先端技術」です。
A. 光電融合に注目です。ヒト型ロボットや量子コンピューターといった次世代技術を巡っても開発競争が激しさを増しています。いずれの技術もAIとの組み合わせがカギを握ります。
「光を使った通信」が注目集める
2026年3月、米エヌビディアが開いた技術イベント「GTC」。来場者がひときわ集まっていたエリアがありました。同社が開発したデバイスが視線を集めていました。電気によるデータ伝送を光に置き換える光電融合向けの製品です。
エヌビディアは光電融合の分野で急速に存在感を高めています。26年3月以降、関連企業に立て続けに巨費を投じてきました。光部品の米コヒレントや米ルメンタム・ホールディングスといった主力企業に出資し、供給網の掌握を急ぎます。
エヌビディアが光電融合に乗り出す背景には、AI向けデータ処理の課題があります。データセンターで半導体を使って大量の計算処理をこなすのには莫大な電力が必要となります。電気処理を光に置き換えれば、消費電力を大幅に下げられる可能性があります。
半導体企業はこぞって参入しています。米ブロードコムや米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、米マーベル・テクノロジーなど主要各社は技術開発や提携戦略でしのぎを削ります。光電融合はAI半導体を手掛ける企業の主戦場になりつつあります。
光技術の研究開発ではNTTに強みがあります。NTTは次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」を19年に提唱し、20年には国際普及団体を立ち上げました。長年の研究の蓄積を生かして仲間づくりを進める構想です。遠く離れた拠点を高速低遅延の通信技術でつなぐ技術に磨きをかけてきました。
ただ最近では、米企業の動きが目立ちます。ブロードコムやエヌビディアなど主要6社は、26年3月に光電融合向けの標準規格を作る団体を設立すると発表しました。光電融合に脚光が当たるなか、NTTをはじめとした日本企業がどこまで主導権を握れるかに注目が集まります。
ヒト型ロボットに日本は出遅れた
26年5月、東京にホンダや中国系企業のヒト型ロボットが集結しました。アジアで初めて国際技術展示会「ヒューマノイドサミット」が開かれました。米シリコンバレー発祥の技術イベントです。企業ブースにできた人だかりはヒト型ロボへの関心の高さを示しました。
ヒト型ロボは米国と中国が激しい開発競争を繰り広げています。実際のロボット生産で先行するのが中国です。米ゴールドマン・サックスによると、25年にはヒト型ロボの出荷台数は中国が約1万2900台と突出していました。米国は450台にとどまり、研究開発向けの試験導入の用途が中心です。
ヒト型ロボの「頭脳」の開発では米国企業にも強みがあります。米エヌビディアはヒト型ロボに搭載する専用の半導体を手掛けており、ソフト開発に必要なシミュレーション技術を一体で提供しています。米フィギュアAIといった有力なスタートアップも続々と誕生しています。
日本勢は出遅れが目立ちます。日本企業はホンダの「ASIMO(アシモ)」など長らくヒト型ロボの研究に取り組んできたものの、日の目を見ないまま下火になっていました。AIブームの好機を捉えて存在感を示せるでしょうか。日本企業の底力が試されます。
量子コンピューターの実用化には課題も
量子を使ったコンピューターの研究開発の動向も焦点です。米グーグルは25年、量子コンピューターで計算結果の正しさを一定水準で担保しながら高速に計算できる新技術を発表しました。一定の環境下で使えば、既存のスーパーコンピューターに比べ1万3000倍高速になるといいます。量子コンピューターは実現すれば可能性が大きい技術です。創薬や科学、材料開発といった分野への応用が見込まれます。特に今後はAIと組み合わせた技術展開に注目が集まります。
実現に向けては課題も残ります。大規模なコンピューターや、計算中に生じるエラーを訂正する仕組みが欠かせません。ハードウエアとソフトウエアの両面で量子計算に適した技術開発を進める必要があります。
科学的な発見などに基づく革新的な技術は「ディープテック」と呼ばれます。米テクノロジー企業は豊富な資金力と優秀な人材を抱え、次世代技術の覇権を握ろうと研究開発に取り組んでいます。ディープテックで勝ち残るには、長期目線の経営が求められています。
「円安はこの先も続く?」「人手不足は今後どうなる?」など厳選した45の最新ニュースを日経新聞の記者がやさしく解説します。「光電融合」「クロード・ミュトス」など知っておきたいキーワードも多数収録。就活、転職、会議の下調べに最適な1冊です。
日本経済新聞社編/日本経済新聞出版/1980円(税込み)



