東京大学の学生が好んでよく読んでいる本として、「古典・名著」を挙げ、 「東大生や頭がいい人が好んで読む「古典・名著」5冊 王道編」 では、5冊の古典・名著を紹介しましたが、皆さんも、僕が紹介した以外の本で、日ごろから「やっぱりこれは読んでおくべきだよな」と思う本があるかもしれません。そういう本って、他の本を読んでいるときに引用されていたり、参考文献として出てきたりすることはありませんか。

 前編で、クラウゼヴィッツやジョージ・オーウェルは、「他書での引用が多い」という話をしましたが、名著と呼ばれる本やベストセラーになっている本の中に引用されている本を、追って読んでみるだけで、読書の幅は一気に広がります。

 文章そのものが引用されている本を読むのもいいですし、「この本ではこういう考え方が紹介されているけれども、反対意見はどうなるんだろう?」と視点を変えてみるのもいいと思います。

 以前、増田寛也さんが『 地方消滅─東京一極集中が招く人口急減 』(中央公論新社、2014年8月発刊)いう本を出版されました。するとその後に、『 農山村は消滅しない 』(岩波書店、2014年12月発刊)という本を小田切徳美さんが出版されました。えっ、地方は消滅するの? しないの? と気になりますよね。

 このように、ある本を読んでいるうちに引用や参照で出てきた本、正反対の意見の本を読んでいく「数珠つなぎ読書法」を続けていると、読書の幅が広がります。僕も1冊の本を読むと、新たに5冊ぐらい気になる本が出てくる。だから、常に「あれもこれも読みたい」状態です。

「同時並行して何冊か読むので、結果として多読になっています」
「同時並行して何冊か読むので、結果として多読になっています」
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 それでは、改めて、東大生が好んで読んでいる古典・名著の10冊のうち、残りの5冊を紹介します。前回の記事で紹介した5冊が「王道の古典」だとしたら、今回の5冊はここ数十年の「トレンド古典」かもしれません。ぜひ、ここを起点として読書の幅を広げてみてください。

ほかの5冊を知りたい人は 東大生や頭がいい人が好んで読む「古典・名著」5冊 王道編

1. 『銃・病原菌・鉄』ジャレド・ダイアモンド著、草思社

 なぜ、アメリカ大陸の先住民は旧大陸の住民に征服されたのか。現在の世界に広がる富とパワーの「地域格差」を生み出したものとは何か。人類史に隠された壮大な謎を進化生物学、生物地理学、文化人類学、言語学など広範な最新知見から解き明かす1冊。

 この『銃・病原菌・鉄』は、今の現役東大生たちがよく読んでいる印象があります。

 今の世界を知るために、どういう流れの中でこのパワーバランスが生まれたのか、背景を知らないと理解しづらいことはたくさんありますよね。その点において、この本はとても役立つ。人類1万3000年の歴史が解き明かされている名著です。

2. 『サピエンス全史』 ユヴァル・ノア・ハラリ著、河出書房新社

 ホモ・サピエンスの過去、現在、未来の全史を俯瞰(ふかん)した1冊。国家や貨幣の存在が他者との協力を可能にし、文明を発展させてきた。しかし、その文明は人類を幸せにしたのか?を問いかける1冊。

 ユヴァル・ノア・ハラリを読んでいる東大生も多いですね。『ホモ・デウス』や『コロナ後の未来』『21 Lessons』といった、他の代表作もありますが、この『サピエンス全史』は、人類の歴史を網羅するのにうってつけの1冊です。

3. 『暇と退屈の倫理学』 國分功一郎著、新潮文庫

 スピノザ、ルソー、ニーチェ、ハイデッガーなど先哲たちの教えをひもときつつ、「求めていた豊かさを手に入れると、人は退屈して不幸になってしまう」など、「暇と退屈」の問題点を考える、哲学入門書。

 この本は現在、東大の生協でよく売れている本です。『思考の整理学』に代わる東大生の新定番といえるでしょう。

 ひと昔前は、東大生には「頭が良くなることが正義だ」という風潮があり、学問を究めたい人が多かったと思います。でも、コロナ禍を経験したことによって、「もしかしたらそれだけが全てではない、豊かに生きるとは、いったい、どういうことなのか」という問いが生まれてきているのかもしれませんね。

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4. 『フルライフ』石川善樹著、NewsPicksパブリッシング

 人生100年時代が到来し、75歳頃まで一生懸命に働くであろう現代人に必要な「戦略」とは何かを考える。そもそも「フルライフ(充実した人生)」とは何かを問いかける1冊。

 かくいう僕も以前はSF作品が好きで、よく読んでいましたが、最近はウェルビーイング関連の本を読んでいます。書店に行っても「より良い生き方」に関する本は多いですし、世の中の関心がそちらに移っていると感じます。

 本書では「仕事でより良い成果を出すこと」と「より良く生きること」の共存方法について書かれていて、なるほどと思わされます。そして、この本を読んでいたら、またしてもクラウゼヴィッツの一文が引用されていました。いい引用の仕方でしたので、そちらも探してみてください。

5. 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』フィリップ・K・ディック著、ハヤカワ文庫SF

 第3次大戦後、放射能灰に汚された地球では「生きた動物を持っているかどうか」が地位の象徴になっていた。人工の電気羊しか持っていないリックは、本物の動物を手に入れるため、決死の狩りを始めるが──。リドリー・スコット監督の映画『ブレードランナー』(1982年)の原作でもある。

 SFや科学関連の本を読んでいると、ジョージ・オーウェルと並んで、必ず名前が出てくるフィリップ・K・ディック。僕もこの本は当然読んでいたのですが、映画『ブレードランナー』やその続編の『ブレードランナー2049』(2017年)は見ていませんでした。「原作と映画は解釈が違うから、映画もちゃんと見ておかないとまずいな…」と焦った思い出があります(笑)。

 そう、数珠つなぎ法は、本だけではなく、映画にも使えるんですよね。読むべき本、見るべき映画が増えていくと、常にインプットに追われている感覚がありますが、そうやって自分の興味を広げ、深掘りしていく知的な遊びは、何より楽しいはずです。

取材・文/三浦香代子 構成/長野洋子(日経BOOKプラス編集部) 撮影/junko(西岡さん)、スタジオキャスパー(本)