いまや生成AIは毎日の仕事や生活に不可欠といえるほど、身近なツールになりました。先駆けとなったChatGPT以外にも、Gemini、Copilot、さらにClaudeなど、強力な生成AIが次々と登場して話題を集めています。書店には多くの解説書が並んでいますが、どの書籍を参考にすればよいのか悩んでしまう人もいるかもしれません。そこで、技術系の書籍を編集している部長2人が、全力でおすすめできる日経の本を8冊厳選。技術プロダクツユニットクロスメディア編集部の田村規雄部長と日経BOOKSユニット編集部の安東一真部長が解説します。

技術プロダクツユニット クロスメディア編集部長 田村規雄(以下、田村):「部長2人が、全力でおすすめ」するというこのシリーズ、生成AIのおすすめ本を紹介したのはおよそ1年前ですね。この1年の間にも、生成AIには驚くべき進化が目白押しでした。
日経BOOKSユニット編集部長(Bグループ) 安東一真(以下、安東):確かに。1年前はChatGPTのユーザーが多かったのですが、その後グーグルのGeminiも存在感を増しましたし、アンソロピックのClaudeもまずプログラマを中心に人気が高まり、企業での業務利用が進みました。Microsoft 365を導入している企業の中では、Copilotも活用が広がっています。
田村:これだけ生成AIが普及し、種類も増えてくると、ツールそれぞれの特徴を知って、自分に合ったものを使ったり、利用シーンに応じて使い分けたりすることも必要になりますね。
安東:その通りです。編集部では、最新の情報を盛り込む、ツールのバリエーションを増やす、などの工夫を重ねながら、皆さんの役に立つ書籍を次々と企画・発行しています。

田村:生成AIを今から使い始めるという初心者から、最先端の活用法をマスターして徹底的に使いこなしたいという上級者まで、さまざまなニーズに応える書籍をラインアップしています。今回はその中から、「仕事の効率化」に役立つ書籍8冊を厳選して紹介します。
ChatGPT活用「定番の入門書」
田村:まず、定番の入門書として『 生成AIで爆速! ChatGPT仕事術(日経文庫ビジュアル) 』をおすすめします。1年前にも紹介しましたが、その後ベストセラーになって増刷を重ね、7刷2万部を達成しました。
田村:「新製品の展示イベントを企画する」「書きづらい始末書の下書きを依頼」「SNSで売り込むアイデアを相談」など、実務に応用できる質問文や依頼文の例が利用シーンに沿って紹介されている点が、分かりやすいと高く評価されています。図版がとても見やすいとの声もいただきました。初めて生成AIを使うなら、やはりChatGPTを試すのがよいでしょう。今からでも遅くはありません。新書サイズでコンパクトな本書を手に取って、基本を身に付けてください。
グーグルのサービスを使いこなす人に薦めたい、Gemini入門書
田村:一方、Gmailやグーグルカレンダーなど、グーグルのサービスを日常的に使っている人には、Geminiを使ってみることをおすすめします。同じグーグルが開発した生成AIなので、Gmailなどとの連携が可能です。
このGeminiを解説した入門書が、同じ日経文庫ビジュアルのシリーズである『 グーグルの最強AI Gemini活用術(日経文庫ビジュアル) 』です。こちらも4刷目の増刷で1万5000部を達成し、Gemini入門書の定番となりつつあります。自分なりの資料をGeminiに読み込ませて、それらに沿ったスライド資料や動画を自動作成できるNotebookLM(現Gemini Notebook)というツールについても解説しています。
マイクロソフトのCopilotを使いこなすならこの1冊!
安東:ChatGPT、Geminiときたら、次はマイクロソフトのCopilotですよね。『 Microsoft 365 Copilot活用大全 』は、私が部長をしているグループで今年一番売れている本です。AIのプロであるアクセンチュアが書いた本で、10刷3万5000部に達しています。2026年5~7月には、Copilot関連書で最も売れました(大手書店データ・自社調べ)。先月(8月)、ある大型書店の担当者さんは「もうCopilot本はこれしか売れていない」とおっしゃっていたそうです。
安東:ExcelやWord、PowerPoint、OutlookといったMicrosoft 365のツールを日々使っている人は多いでしょう。Microsoft 365 Copilotは、その仕事をAIで全面的にサポートしてくれます。実際に仕事を効率化する方法を、本書では「これでもか」と紹介していきます。
例えば、Teamsのオンライン会議では、議事録を自動でまとめて、やるべきこと(ToDo)リストまで作ってくれます。「あのとき上司はなんて言っていたっけ?」というときは、後からCopilotに尋ねてすぐに確認でき、「言った/言わない」の議論が減ります。
Wordでは取引先との契約書をさくっと作れるほか、Excelでは簡単な日本語の指示だけで高度なデータ分析ができます。社内説明会の資料のひな型をPowerPointで作り、説明会の想定問答集も生成できます。
自社用のエージェントを開発できるCopilot Studioについても分かりやすく解説しています。本書では、部署専用のFAQエージェントを作る例を紹介しています。
Microsoft 365 Copilotを自社で導入している方には、必携の書籍といえるでしょう。
非エンジニアこそ使いこなせば世界が変わる「Claude」
安東:次に推したいのが『 Claude活用大全~AIと共に学び働き遊ぶ実践ガイド 』です。先月(8月)発売したばかりの本ですが、発売前と発売後10日で第2刷、第3刷と増刷し、一気に1万8500部を発行。今、爆発的に売れています。
安東:これも同じアクセンチュアが書いた本で、最新のClaude活用術を紹介しています。Claudeは、いまや売上規模(ランレート)でOpenAIを上回ったとの見方もあるアンソロピックのサービスですね。
Claudeには、まとまった仕事を任せることができます。うまく指示すれば、いわゆる「AIエージェント」が勝手に裏で複数動き出して仕事を完遂してくれます。
Claudeを使うと、1カ月かかっていたような作業が1時間で終わることがあります。本書では、新規事業を企画する際に、競合他社を調査する例が出てきます。最初に、簡単な指示で5社の競合をWebで調べ、価格や機能、ターゲット顧客、直近半年の動きなどを横並びにして整理させます。人手だと大変な作業が、すぐ完了するのです。
ただし、生成AIは間違い(ハルシネーション)が避けられないですよね。そこで、調査結果のファクトチェックもClaudeにやらせます。Claude Codeというプログラマー向けのツールを使います。エンジニアの知識は不要で、日本語で指示するとファクトチェック用のコードを書いてくれて、そのコードがエージェントとして動き出します。
本書では、「非エンジニアこそ、Claudeを学ぶべき」と強調します。実際に著者の1人はもともと非エンジニアですが、ツールを自作するまでになったそうです。
プログラムでファクトチェックが終わったら、社内で配る形にまで資料を清書させます。大事なのは、その比較から何を読み取るか。これは人間の仕事で、ここに多くの時間を使えるようになります(もちろん、そこでもAIは壁打ちで手伝ってくれます)。調べるだけで疲れ切った…、ということにはならないわけですね。
もちろん何をAIに任せるかを決め、それを的確に指示することは、それほど簡単ではありません。そこで本書では、それらのポイントも整理しています。例えば生成AIへの指示方法では、アクセンチュアが整理した「REACH」というフレームワークを紹介しています。Role(役割の付与)、Examples(出力例の提示)、Action(やってほしいことを動詞で指示する)、Context(背景や制約条件)、Hone(対話による修正・洗練)という5つを、著者もよく頭の中で順に呼び出しているそうです。
自分の仕事を明日から劇的に楽にするため、AI初心者にこそおすすめしたい書籍です。
田村:私も最近、Claudeを使うようになりましたが、本当に便利ですよね。精度が高いほか、「Computer Use」などの機能を使うと、パソコン操作を伴う作業も支援してくれるなど、AIの進化を実感しています。
30日でAI活用スキルを獲得
田村:このように強力なAIを武器としてまとい、その活用スキルを身に付けるとどんなことができるのか――。それを体感しながら確実にスキルを習得できる書籍を紹介させてください。『 AI実践ドリル30日チャレンジ 仕事にすぐ効くAI活用 』です。
田村:この本は「3億円の新規事業計画を作る」というミッションを、AIの力を借りることで実現する「30日間の実践ドリル」です。「3億円の事業立案なんて自分には無理だし、そんな機会もない」という方も尻込みしないでください。新規事業の開発プロセスには市場分析から収益化まで、すべてのビジネスパーソンに必要な「総合力」が詰まっています。このドリルで身に付く思考法やスキルは、誰にとっても普段の仕事に役立つはずです。
1日1ミッションずつAIに指示を出して課題を解決していくのですが、「3億円を分解せよ」「競合の弱点を見つけよ」といった具体的なタスクとプロンプト案が提示されているので、事業立案の経験がなくても大丈夫。30日で新規事業の計画を完成させるプロセスを疑似体験できます。その体験を通じて、「AIを仕事で使う力」も自然と身に付けることができます。AI活用スキルという「知性の強化スーツ」をまとい、自分自身を「アップグレード」することのできる1冊です。
生成AIが1人の大学生の人生を変えた
安東:書籍タイトルの「〇日チャレンジ」といえば、うちのグループで昨年出した『 #100日チャレンジ 毎日連続100本アプリを作ったら人生が変わった 』を思い出しますね。
田村:はい、実は参考にしました(笑)
安東:やっぱり!『#100日チャレンジ 毎日連続100本アプリを作ったら人生が変わった』は、ある大学生がChatGPTをフル活用して、授業の課題を全力で「さぼろう」、そして自らに課した100日連続のアプリ作成を達成しようとした日記風エッセーです。実売数で5万部に近いベストセラーで、既にお読みになった人も多いかもしれません。
著者の大塚あみさんは、4年生時のプログラミングの授業中に、ChatGPTにオセロ風プログラムを作らせました。先生に後ろからのぞかれて、ChatGPTを無断で使っていることがばれます。怒られるかと思ったら、先生は逆に面白がって、もっと改善してみてと言いました。
それがきっかけで大塚さんはプログラミングにはまって、100日間、毎日1本ゲームを作ってXに投稿する「#100日チャレンジ」を始めます。それが注目されて国際会議での発表につながり、エンジニアとして就職もできました。今どきの学生が、生成AIを使ってどう学ぶのかも分かる本になっています。
実際の大塚さんは、社会人1年目で起業し、現在はフリーランスのAIエンジニアや作家として多様な仕事をされています。住まいは、なぜかタイだったりして。興味のある方はぜひネットで検索してみてください。
田村:今回の記事は「仕事の効率化」をテーマにしていますが、おすすめしている本は学生さんにも役立つものばかりですね。学生さんの「仕事」といえば、勉強や宿題、課題の提出など。これらにも当然、AIは頼りになります。そして、就職活動においても、いずれ社会人になったときにも、AIの活用スキルは必須となるものでしょう。
生成AIが当たり前になる時代の教育はどうなる?
田村:そういう意味では、生成AIが普及した現在の「教育」そのものも、AI時代に即した新しい思考やスキルを前提にする必要があると思います。AIの利点をうまく引き出して活用するとともに、そのリスクも理解して、頼り過ぎないことも大切です。
学校での指導はもちろん、家庭での教育、子育てにおいても同様です。最近の子どもは、分からないことがあるとすぐにChatGPTに質問して、その答えをうのみにしてしまうと聞きます。行動面においても、ChatGPTに「こんなときはどうしたらいい?」と相談して、その回答の通りに振る舞う子どもの話を耳にすると、危うさを感じたりもします。
そんなAI時代に必要な能力を7つ挙げて、子どもに何を教えればよいのかを解説しているのが『 わが子に教える AI時代に必要な7つの能力 』です。YouTubeでの子育て動画が累計250万回以上視聴され、学校や自治体での講演など、教育現場でも活躍する友村晋さんの書籍です。
AI時代にどんな能力が必要になるのか、なぜそれが必要になるのかなど、変化に取り残されないようにするための知恵がいっぱい詰まった1冊です。子育ての参考になるだけでなく、自分自身を顧みるきっかけにもなると思います。
安東:きょうは、仕事効率化というテーマから、そのベースとなるスキルや能力、それを育む学びの話まで発展してしまいましたね。最後に改めて、生成AI活用の基本中の基本であり、発展的な活用にも欠かせない「プロンプト」のノウハウをまとめた定番書を紹介します。
AI時代の新教養「プロンプト」入力の基礎を固める
安東:『 ChatGPTを使い尽くす! 深津式プロンプト読本 』は、動きの速いAI本としては異例のロングセラーとなっています。今も売れ続けていて、発売から2年で、実売数は電子版を含めて4万部近くになりました。
生成AIはどんどん賢くなって、割と雑なプロンプトを投げても、かなりうまく答えてくれるようになりました。しかし、今回挙げた他の新しい本でも繰り返し書かれていますが、「思った答えが得られない」ことは往々にしてあります。
そんなとき、本書がまとめているプロンプトの基本テクニックは、やはり役に立ちます。例えば、自分が示した文章、あるいは、生成AIの回答に対して、あえて「足りないところ」を聞きます。それを基にさらにブラッシュアップさせると、回答の精度が上がります。そうした基本が網羅されています。
田村:これは、noteのCSO(最高戦略責任者)、深津貴之さんの本ですね。深津さんが提唱したプロンプトの書き方は「深津式」と呼ばれて、プロンプトエンジニアリングのバイブルとなりました。AIが進化してもなお、その考え方を知っていると知っていないとでは、得られる出力の精度や幅が全然違うと思います。
今回紹介したおすすめの書籍は、どれも皆さんの仕事効率化、そして仕事の質の向上に役立つこと間違いありません。ぜひ参考にしていただければ幸いです。
(第2回に続く)
文/田村規雄(技術プロダクツユニット クロスメディア編集部長)、安東一真(日経BOOKSユニット編集部長(Bグループ)) 写真/馬本寛子、長野洋子(日経BOOKプラス 手前みそ班)







