『物語思考 「やりたいこと」が見つからなくて悩む人のキャリア設計術』(幻冬舎) 著者で連続起業家のけんすう(古川健介)さんは、未来予測系の本を好んで読む。この分野で最近一番面白かったのは 『2050年の世界 見えない未来の考え方』(ヘイミシュ・マクレイ著、遠藤真美訳、日本経済新聞出版) だという。けんすうさんが未来予測本を読む理由と、その楽しみ方を聞きました。(聞き手は、日経BP書籍編集者の中川ヒロミ)
<1回目「けんすう「やりたいこと」を見つけるのをやめよう」>
<2回目『けんすう 「高い自己肯定感」なんていらない』>
天才漫画家は「つまらない回」を最後にもってくる
ある漫画家さんが「天才漫画家の物語の描き方」について書いた文章を読んで、すごく納得したことがあるんです。いわく、「どんなに素晴らしい作品でも連載の中でつまらない回はある。そのつまらない回を、天才漫画家は最後にもってくる」と。つまり、重要なのは最後のゴールではないということなんですね。
そこに行くまでのプロセスの面白さが全体の印象を決めるという考え方に、深く共感しました。確かに、アニメや漫画にも、最終回はイマイチでも、途中の名シーンが素晴らしくて伝説化している名作はいくつもありますよね。
同じように、自分のキャリアや人生も、「最後がどうなるかは分からないけれど、途中にいくつか面白いシーンをつくれたらいいよね」くらいの気持ちで考えたらいいんじゃないでしょうか。
僕が未来予測系の本が好きなのも、「誰も知らない未来をあれこれ予測している」というプロセスを一緒に体験するのが面白いからです。
未来予測って、当たる場合もあれば当たらない場合もある。その曖昧さがいいですよね。新型コロナウイルスのようなパンデミックが起きて予測の前提が変わることもあるので、頭のいい人が精度の高い分析ツールを駆使して予測したとしても、実際にやって来る未来の姿がそうなるとは限らない。もしかしたら僕がざっくり考えた予測だって当たるかもしれない。そんな“思考の平等性”みたいな世界が好きなんでしょうね。
昔の未来予測本を現在と照らし合わせて「採点」
昔書かれた未来予測本を読んで、当たっているかどうかを検証するのも、僕の好きな読み方です。例えば30年前に書かれた予測本を読んで、現在の社会の姿と照らし合わせるんです。趣味が悪いですよね。
当たっていない本が大多数なのですが、結構当てている人もいるんです。大前研一さんが1995年に出した『インターネット革命』(プレジデント社)という本で、インターネットが起こす社会変革についてかなり正確に予測しています。
「インターネットという新しい技術によって、動画が手軽に見られるようになるし、会議もインターネット上でできるようになるだろう」という予測は、技術者から「あり得ない」と一蹴されたそうです。当時の通信環境から「帯域がすぐにパンクするからあり得ない」「CD-ROMに記録できる容量が…」という専門家の反論に対し、大前さんは「私は専門外なのでよく分かりませんが、長期では解決できる問題では?」と主張して見事に当てています。
2000年代に出た未来予測では、ひろゆきさんやグリー社長の田中良和さんの「これからはモバイルの時代です」という予測もほぼ当たっています。
未来を思うワクワクが予測本の醍醐味
最近読んだ 『2050年の世界 見えない未来の考え方』(ヘイミシュ・マクレイ著、遠藤真美訳、日本経済新聞出版) も、著者のマクレイさんが30年近く前に書いた予測本があるのを知って、併せて買ってみたんです。『2020年 地球規模経済の時代』(アスキー)という本です。読んでみると、結構当たっていたんですよ。中国の国際競争力が増すという予測は、現在の状況にかなり近かったんですね。「この人は信頼できそう」と思って読んだら、スルスルと頭に入ってきました。
マクレイさんは、イギリスの著名な経済ジャーナリストだそうですが、ここ数年で読んだ未来予測系の本の中で一番面白くて納得感が高かったです。という一言感想を、X(旧Twitter)で8月につぶやいたところ、結構反響がありました。
一方で、本の副題にある通り、やっぱり未来は見えないもの。「どうなるか分からない」ことだけが確定しているから、面白いんですよね。こういう本をきっかけに、「30年後の世界を予測してみようかな」と考えてちょっとワクワクする。そんな時間が生まれることが、未来予測本の醍醐味だと思います。
取材・文/宮本恵理子 構成/市川史樹(日経BOOKプラス)写真/鈴木愛子


