世代・トレンド評論家の牛窪恵さんは『Z世代の頭の中』(日経プレミアシリーズ)で、令和の若者を深掘りしています。本書でも触れた働き方や恋愛観、政治観について、当事者たちに直接聞いてみようと、担当編集者の幸田華子を含む、Z世代4名と牛窪さんによる座談会を行いました。第2回は、Z世代の時間とお金の使い方についてです。
ランニングしながら電話、動画を視聴?
Bさん(女性) 食品会社のコーポレート本部で広報業務などを担当。
Cさん(男性) メーカーでAIなどのデジタル事業開発に関わる。
牛窪恵さん(世代・トレンド評論家 以下、牛窪) Z世代を象徴するワードとして、よく「タイパ」という言葉があげられますが、実際のところはどうでしょうか。みなさんに日ごろどのように過ごしているのか、事前アンケートを書いてもらったので、それをもとに聞いていきたいと思います。まず、Bさんは休日をどう過ごしていますか。
Bさん 昼間は自分の時間に充てて、夕方以降は友人と会ったり、動画を見たりします。部屋にランニングマシンがあるので、動画を見ながら走ったり、人と電話しながら走ったりします。
Aさん 部屋にランニングマシンがあるんですか。すごい!
Bさん 業種的に会食や飲み会が多いので、健康維持のために走っているんです。
牛窪 電話しながら、というのもすごいですね。休日は勉強や料理もしていると書き込んでくださいましたね。勉強はどんなことを?
Bさん いろいろですね。留学先で知り合ったアメリカ人、ドイツ人の友人から自分に足りない知識をインプットしたり、英会話アプリを使って語学の勉強をしたりしています。料理をしながら動画を見ることもあります。「自分のやりたいことは全部やっちゃえ!」という感じです。
牛窪 料理をしながら、動画。まさにタイパですね。Aさんは休日に副業をしているとか。
Aさん 『古典エヴァンジェリスト』というYouTubeチャンネルで動画を公開していて、今年9月には『 真の敵は自分自身!? 悩みに効く西洋哲学入門 』(大和出版)という本も出版したのですが、6月ごろからはその本の執筆で忙しく、仕事以外のすべての時間を費やしました。あっ、でもアニメ好きなので、ボウリング部の女子高生が戦国時代にタイムスリップする『Turkey!』や、怪獣災害が起きるのが当たり前になった日本が舞台になっている『怪獣8号』は欠かさず見ています。
牛窪 それはNetflixとかで見るのですか。やっぱり見るときは倍速で?
Aさん dアニメストアで見ています。僕は日本のプロダクトやサービスにお金を使いたいんです。国内にお金を落とすのが正義だと思うので。だからスマホもiPhoneは買ったことがなくて、Xperiaです。
あと個人的に、アニメや映画を倍速視聴するのは理解できません。作品やクリエイターにとっては「間」にも意味がありますよね。演出を見ないで、どれだけ作品を見ても意味がないと思うんですけど。情報収集としての倍速視聴はまだ許せます。
Cさん 僕も絶対にアニメの倍速視聴はしないし、作り手の思いを享受するのがエンタメの醍醐味だと思っています。ただ、周囲には倍速視聴をする人が多いですね。そんなに目くじらを立てることではなく、現代の技術が発展したり、時代が移り変わったりしていく中での一部の現象かな、という気もします。
牛窪 幸田さんは、土曜日はお昼ごろまで寝ているそうですね。事前アンケートに書いてある「ダラダラ」というのは何をしているのですか。
日経BOOKSユニット 第1編集部 幸田華子 本当に「ダラダラ」するだけの時間です。X(旧Twitter)でバズっていた番組やTikTokやYouTubeのおすすめで流れてくる動画、特にお笑い芸人さんや犬の動画をよく見て、癒やされています。『Z世代の頭の中』(日経プレミアシリーズ)にも出てくるように、カッコよく言うと偶然の出会い、セレンディピティを楽しんでいます。
牛窪 なるほど。Cさんも休日の朝は10時起床とわりとゆっくりめですね。アンケートに書いていただいた「朝準備」とは何ですか。
Cさん いつも朝にシャワーをしたり、朝風呂に入ったりするので、その時間です。部屋を片づけたり、自分が落ち着いたりするための時間ですね。
牛窪 食事の時間もわりと十分に取っているようですが、何を食べているんですか。
Cさん 実は今ダイエット中で、低糖質のものばかり食べています。
牛窪 えーっ? スリムなのに? 誰かに言われたとか、健康診断で引っかかったとかで気にされ始めたんですか。
Cさん いえ、けっこう体重の増減が激しいので、自分でヤバいなと。昔はバスケットボールをしていたのですが、就職してからは動く機会が減ったので、これ以上体重が増えるとまずいですね。大学時代の友人がマッチョだったので、彼から食事管理や筋トレ法を聞いたり、YouTubeを見て自分で調べたりしています。
牛窪 自分で納得いく方法を探すんですね。「自由」と書かれた時間は何をしていますか。
Cさん 筋トレをしたり、仕事に関係のある生成AIの勉強をしたり、いろいろですね。もともと工学系を勉強していたので、ロボット工学やプログラミングに触れるなど自分の好奇心を満たすための時間です。
牛窪 「自由」のほかに「遊び」という時間もありますね。
Cさん はい、めちゃくちゃ遊んでいます! 東京は毎週末ごとにいろんな公園でイベントやフェスがありますよね。イベント告知のXやInstagramをフォローして情報を仕入れては出かけています。音楽を聞きながら、飲んだり、食べたり、踊ったりする時間は最高です。僕は人が好きなので、みんなが笑っていて、幸せな空間にいると自分も満たされるんです。
牛窪 Z世代を「タイパ」重視で無駄なことはしないと考える人も多いようですが、自分の好きなことにはちゃんと時間を割くんですよね。
Aさん Z世代は「タイパ」「コスパ」重視だといわれますが、実は僕は正反対のタイプです。調べ物にも絶対にAI(人工知能)は使いません。僕が知りたい古典の情報を調べようとすると、AIは嘘ばっかりつくんですよ(笑)。AIに要約させると、僕が着目するはずのポイントが入っていないことも多い。ニーチェは「深い泉は、ゆっくりと経験をする。何がみずからの深みに落ちてきたのかを知るには、長く待たねばならない」(※1)と言っていて、僕はそれをモットーとしています。
でも、料理のレシピを調べるときは動画を倍速で見ます。YouTubeの配信技術に関することも倍速で見ても特に問題ないですね。
「自分が資本」だからこそ、コスパを考えない
牛窪 ここまでタイパについて聞いてきましたが、「コスパ」に関してはどうですか。
Aさん 僕は「学割」を最大限に活用しています。放送大学の学生になると、年間1万円ぐらいの学費で、学割が使えるんです。あと本を買うときはヨドバシ.com。ゴールドポイントカードをつくると還元率が12%なんです(※2)。値段が高い古典書をよく買う者としてはありがたいです。
実際はそんなにコスパ、コスパというわけではないんですが、都心に住んでいると家も車も買って…と何もかもは無理ですよね。コスパは意識せざるを得ません。一昔前なら全て消費に回してもよかったのかもしれませんが。
Bさん 私はデパートコスメ、スキー用品やキャンプ用品など好きなもの、趣味のものにはお金を使いますが、無駄な出費はしません。趣味のものにはそれなりに投資しますが、だんだんとそれを減価償却していく感じで、毎日何かにお金を使うことはないですね。何か新しいものが欲しくなったときも古いものをメルカリで売って、資金にします。
Cさん 僕はいわゆる「コスパ」とは違うかもしれませんが、「損したくないタイプ」。家電を買うときは比較サイトでスペックや価格を調べてから買います。 一方で「自分が資本」だと思っているので、経験や体験、エンタメにはめちゃくちゃお金を使います。体験が自分をつくるし、オジサンになったときに数少ない手札で勝負をするのは心もとないなと。今のうちに手札を増やしていきたいですね。
(※2)各種条件による
(第3回に続く)
取材・文/三浦香代子 写真/鈴木愛子
牛窪恵著/日本経済新聞出版/1210円(税込み)






