話題をよんだ「おじさん構文」や「おばさん構文」。昭和人間がLINEで絵文字や顔文字を駆使しまくる背景には、「かわいいと思われたい」というひそかな期待が隠れている可能性もあるとか。ややこしくもデリケートな昭和人間の生態を描いた新刊『 昭和人間のトリセツ 』著者の石原壮一郎さんに伺いました。

昭和人間はうじうじ悩みながら生きている

 若者のみなさんからすると、昭和人間というのは、「古い価値観を押し付けてくる面倒くさい大人たち」というイメージがあるかもしれません。そう思う気持ちもよく分かります。確かに、自分が子どもの頃は、大人はすべてを分かっていて、自信満々に生きているように見えたものです。ですが、いざ自分がその立場になってみると、決してそんなことはなく、むしろ「これでいいのかな…」と、小さなことにうじうじ悩みながら生きているものです。

 例えば、以前から話題になっている「おじさんLINE」や「おばさん構文」。そんな記事を見て、あわてて「もしかしてイタイ人だと思われている…?」と、内心ドキドキしながら自分のLINEの文章を見返した昭和人間も多いのではないでしょうか。

なぜ昭和人間は「おじさんLINE」を送付してしまうのか? 昭和人間の「おばさん構文」との正しい向き合い方

 ちなみに、本の中でも書きましたが、昭和世代のLINEは絵文字や顔文字が多め。さらに、パソコンのメール文化をひきずっているため、あいさつ文を入れるなど、文章が長めなのは、おじさんおばさんともに見られる傾向です。

 近年では、文章の最後にマル(句点)を付けることが、若者からすると「怒っているの?」「威圧的に感じる」などの声があり、「マルハラ」と呼ばれて話題になりました。「そんなつもりじゃないのに…」という昭和人間の声が聞こえてきそうです。

急増する「ぶりっ子おじさん」

 特に、若者から不評なのは、「おじさんLINE」でしょうか。カラフルな絵文字や顔文字、動くスタンプなどを嬉々として使い、目がチカチカしそうなほどにぎやか。意外とシンプルな若者のLINEとは明らかに異なるはしゃぎっぷりに痛々しさを感じるようです。しかもそのような力作LINEを送付する相手は、自分よりも大幅に若い女性であることがほとんど。受け取った側は、戸惑いと不快感を抱かずにはいられません。

 どうも家庭や職場であまり構ってもらえず、寂しい思いをしている人ほど、「おじさんLINE」を送りがちな傾向があるように感じます。かわいいLINEを送ることで、もしかしたら自分のことも「かわいい」と思ってもらえるんじゃないか、いや、そう思ってもらいたいという気持ちがあるのでしょう。

 若者からすれば、そんな面倒な「ぶりっ子おじさん」は、単なる痛々しい存在でしかないでしょう。ただ、たいへん申し訳ないことに、実は昭和世代には、案外「かわいいもの好き」なおじさんも少なくないのです。

 我々昭和人間は、「かわいい」文化とともに育ってきた世代です。なんでもかんでも「かわいい」と褒める風潮に、当初は「男性に対して『かわいい』と言うのは失礼だ」と反発する声もありました。しかし、そう言っていた彼らが50代、60代になって、「『かわいい』と言われるとうれしい」と感じていたりする。体内に「かわいい」を求めるDNAが組み込まれているのかもしれません。

 ですから、昭和おじさんに「かわいい」と言うのは、適当にいい気にさせる上では意外と効果的です。ただ、相手が舞い上がりすぎて面倒くさい展開にならないように、さじ加減にはお気をつけください。もちろん、憎らしいだけで全くかわいげがないおじさんには、言う必要はありませんけど。

「昭和人間に『かわいい』と言うのは意外と効果的です」
「昭和人間に『かわいい』と言うのは意外と効果的です」
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ツッコミ作戦と「教えてください」作戦は有効

 昨今、職場の飲み会なども激減し、若者と昭和世代が直接コミュニケーションを取る機会が少なくなりました。昭和人間は、「今どきの若者は何考えているか分からない」などと言いつつ、本当は、若者のみなさんと仲良くしたい、と思っていたりします。

 なのに、年齢を重ねてポジションが上がるほど、下の世代から話しかけてもらえることが減り、50代60代ともなると、誰からも突っ込まれなくなるんですよね。そんな状況に、実は、寂しさを感じていたりもします。

 ですから、「なんだかピントがズレたことを言っているな」と感じたら、ちょっと相手の様子をうかがってみてください。もしかしたら「ツッコミ待ち」かもしれません。特に、女性に突っ込まれるのは、「まんざらではない」と感じているおじさんがほとんどですから、きっと喜ばれるのではないでしょうか。

 若い男性の場合は、「教えてください」作戦が有効です。基本的に、おじさんは、教えることが好きな生き物なので、「おすすめの本はありますか?」とか「ワイン初心者なので教えてください」と言われると、うれしくなってつい世話をしたくなってしまう。

 張り切りすぎてうっとうしかったり、もれなくうんちくがついてきて、それも「最近は南米のワインが注目されているんだよ」みたいな周回遅れのうんちくである可能性はなきにしもあらずですが、少しだけ我慢して、試しに、大げさに感心するあいづちを打ってみてもらえないでしょうか。「そんなみえみえのやり方、抵抗がある」と思うかもしれませんが、距離を縮める効果は抜群です。

 逆にやると危険なのが、対抗して被せること。「自分のほうが詳しいんだけどな」と思っても、少しだけ我慢していただけると、お互い良好な関係が築けます。みえみえだろうが、「褒めて転がす」が最適解です。昭和おじさんも時にはいいことを言ったり、役に立つアドバイスをしたりすることもないとは限りません。たまには便利にご活用いただけたら幸いです。

 何を隠そう昭和人間は、若者の皆さんが思っているよりも、案外繊細で複雑です。そんな昭和人間の気持ちを「 昭和人間のトリセツ 」で知っていただくことで、世代を超えたコミュニケーションのきっかけにしていただければ、とてもうれしいです。ご面倒をおかけして申し訳ありません。

構成/西尾英子 写真/鈴木愛子

日経プレミアシリーズ『 昭和人間のトリセツ
ややこしくもデリケートな「昭和生まれ」の深淵に切り込む本邦初? の書籍

なぜ10年前の出来事を最近のことのように語ってしまうのか? LINEが無意味に長文になる理由は? ――仕事観やジェンダー観など多様な切り口から「昭和生まれの人間」の不可解な生態に肉薄し、その恥部をも詳らかにする日本初の書籍。「【注】知っておかなくても構わない昭和・平成用語集」も収録。

石原壮一郎著/日本経済新聞出版/990円(税込み)/11月23日発売