情報システム部門の責任者には成果を出すリーダーシップが求められる。そのための12の行動を書籍『SEを極める50の鉄則』から紹介する。行動の前に、何を大事にするのか、仕事の価値観を持つ必要がある。

 2000年に初版を発行したロングセラー『SEを極める50の鉄則』(日経BP)がこのほど日経文庫に収められた(編集部注:2024年6月)。著者の馬場史郎氏は同書で「リーダーシップを身に付けるための12の行動」を説明している。IT企業のSEマネジャー、つまり顧客向けに情報システムを提案・開発・運用するエンジニアを部下に持つ人を対象にしたものだが、ITを使って自社の業務改革やシステム構築を担う情報システム部門のマネジャーにも役立つので読み直してみる。

・独りでぶらっとお客様を訪問する

 「お客様」は情報システム部門からすると、システムを使う社内やグループ企業の業務部門を指す。電子商取引システムなどもあるから実際の顧客も含む。社外の不特定多数の顧客を訪問することは難しいが、社内であれば、ぶらっと行って業務部門の部課長と話をするのは簡単ではないが可能である。

 狙いは相手の幹部との関係を深め、先方の意向をつかみ、同時に彼・彼女のために働く部下の様子を知ることにある。相手が業務部門の部課長であっても同じである。

 残念ながらシステム責任者の顔が社内でよく知られていない日本企業が少なくない。

・ビジネスの話をしてセールスに強くなる

 情報システム責任者が実際の営業をすることはないとしても、業務部門と「ビジネスの話」、例えば営業や商品の「戦略の妥当性の討議ができる」ことが望ましい。

・社内のSE関連部門に顔を出す

 本社のスタッフともよい関係を築いておくと、何か困ったとき、力になってもらえる。情報システム部門からすると、総務、経理、人事といった部門にも顔を売っておく。

・プロジェクトを自分でレビューする

 情報システムの責任者である以上、関係する全プロジェクトをレビューする。何か問題が生じた場合、現場の意見を聞くだけではなく、責任者として全体をよく見て意思決定する。

 そのためにも業務部門や本社スタッフとの関係づくりが欠かせない。

・右腕のスタッフをつくれ

 システム部門の生え抜きでない責任者の場合、技術に詳しいベテランを右腕にする。プロジェクトのレビューの際、技術面から指摘をもらう。

・仕事の価値観を徹底指導する

 この行動の具体策として馬場氏は「日常の行動指針を提示」「物事の考え方について会話し討議」「伝わったかどうかを確認」の3点を挙げた。馬場氏が実際に使った行動指針が掲載されているが「……をどうしましょうかはやめよう」など「分かりやすく当たり前の事柄」ばかりである。

 箸の上げ下ろしに注文を付けたいわけではなく、「チームワークに富む自発的行動集団」という目指したい姿が先にあり、その自覚を促すための指針だという。情報システム責任者も自部門の役割や部員のあるべき姿を考えておかないといけない。

・My Positionを貫け

 責任者として明確な意思を表示するという意味である。「SE職種の人間は、仕事柄か、会議などで営業マネジャーやお偉方に遠慮しがち」だが「何か問題があると思ったら(中略)技術やビジネスに関して遠慮なく自分の意見を述べるべきである」。12の行動の中で最も実践が難しそうだが「技術的に無理なことをやらされるほどSEのモラールを下げることはない」。この指摘はあらゆる職種に通じる。

・表彰や昇進を意識したジョブアサインを行う

 たとえリスクがあっても覚悟の上で少し難しい仕事を部下にやってもらう。頼んだ以上、部下を指導し、必要があれば支援する。

・部下の報告書に必ず適切なコメントを書く

 ここから先はマネジャーの日常についての指摘である。報告を受けるのはすべてのマネジャーの仕事であるが馬場氏は「全報告書、全メモ、全メールが対象」と書いており行動しようとするとハードルは高い。

・部下のSE全員に同一の内容を伝える

・情報は即座に関係者へ自分の意見を必ず添えて伝える

 ここでも馬場氏は「全SEを対象に妥当なコメントを書く」とした。

・締め切り日は厳守する

 マネジャーとして上司や本社に出す報告資料について締め切りを守って提出する。そうしないと社内から信頼を得られない。

 以上の「12の行動」について馬場氏は「続けていると自然とリーダーシップが身に付く。これは筆者の30年間にわたるSEおよびSEマネジャー経験から断言できる」とした。『システム課長は動き回れ それが部下を育てる鍵』(※日経クロステック有料会員限定記事)でも馬場氏の主張を紹介した。その中で次の説明があった。

 「コンピュータメーカーでSEやSEマネジャーを30年近く務めてから、いわゆるユーザー企業に移り、情報システム部門で6年ほど部長をした。IT企業のSEマネジャーと、情報システム部門の部課長は相対する立場だが、両方の部門に所属し、体験してみたところ、共通するところが多々あった」

(写真:ipopba/stock.adobe.com)
(写真:ipopba/stock.adobe.com)

[「日経コンピュータ」2024年7月11日号の記事『12の行動でリーダーシップ 強いシステム部門をつくる』を改題して転載]

SE(システムズエンジニア)とSEを部下に持つSEマネジャーが、顧客から信頼され、仕事で成果を出せるようになるための鉄則を50件、提案する。いずれも顧客との接し方、社内外から協力を得るコツ、部下の力を引き出すやり方を述べたもので、人に関わる重要な鉄則ばかりである。このためSEとSEマネジャーにとどまらず、すべてのエンジニアと技術マネジャーに役立つ内容になっている。

馬場史郎(著)/日本経済新聞出版/1320円(税込み)