このたび、『 この保険、解約してもいいですか? 』(日経BP)を刊行。有料の保険相談を長年、続けてきた後田亨氏が、「保険会社のカモになりやすい人の特徴」を考察した。
「保険貧乏です」 「担当者にいいようにされている気がします」 「私ってカモですよね?」
筆者が有料で行っている保険相談のお客様から、よく聞く言葉である。
このような発言をするお客様には、ある共通点がある。判断に「願望」が混じりやすいのだ。大別すると次のような特徴がある。
(1)「人」で決める
(2)「組織」で決める
(3)「返戻率」で決める
以下、具体例を挙げて、順番に説明する。
保険貧乏になりやすい人の特徴(1): 「人」で決める
保険商品は仕組みが複雑で、選択が難しい。そのため、「人で決める」という考え方が生まれる。例えば、販売員をしている友人や知人に判断を任せる。親族などから紹介された販売員の助言に従うケースも同じだ。
細かいことは分からないから「販売員が信頼できる人であるか否か」で保険加入の是非を決めるということだ。販売員が信頼できる人であれば、悪いようにはされないだろうという判断だ。
しかし、その販売員は、本当に「信頼できる人」なのだろうか。仮に「信頼できる人」であったとしても、だから「悪いようにはされない」と、言い切れるのだろうか。その予測は願望にすぎない。人として信頼できる販売員であっても、顧客に有益な助言をしてもらえるとは限らないからだ。
悪気はなくても、利益相反
例えば、特定の保険会社に所属する販売員は、仮に「自社商品より優れている他社商品」を知っていても、顧客には勧められない。また、複数の保険会社の商品を扱う代理店であっても、代理店の都合で一部の会社に偏った商品に誘導される事例がある。
どちらにしても、販売員や代理店の主な収入源は販売手数料だ。販売手数料による収入はおおむね、保険料が高い保険ほど高額になる。つまり、保険に加入するあなたの支出が多いほど、販売員や代理店の収入は多くなる。だから、どんなに「いい人」であっても、あなたの支出が必要最小限になる提案はしづらい立場だ。
加えて、そもそも営業現場では、まっとうな金融教育がなされていない。ほんの一例だが、筆者がこれまでにも説明してきたように、「終身保険」は、販売手数料が高いため、貯蓄に回るお金が少なく、資産形成には不向きであることを、大半の販売員は知らない(終身保険が資産形成に不向きである理由などは、過去の記事=「30年後に、お金が39%増える保険」に入ってはいけない =などを、ご参照いただきたい)。
筆者自身、保険の販売員だった頃、「終身保険は、お客様が損をしない保険」だと信じて、お勧めしていた。今も、終身保険の商品特性を理解しないまま、「お客様のためになる」と心から信じ、お勧めしている販売員は少なくないだろう。
従って、常識で販売員の収入源を考え、販売員と顧客はどこまでも「利益相反」と認識し、誰も信じないのが無難なのだ。
保険貧乏になりやすい人の特徴(2):「組織」で決める
「大手生保だったから」「銀行の提案だったから」など、保険に加入した理由に、大きな会社や組織の名前が登場することが多いのも、「保険貧乏」を自称する人たちに見られる特徴だ。「かんぽ生命は半分国営みたいなものだろう」「JA共済には常日頃からお世話になっている」といった声も、よく聞かれる。
かんぽ生命とJA共済の実情
「高名な企業や組織なら、ひどい扱いはされないだろう」といった理屈だが、この因果関係も願望にすぎない。現実はむしろ逆ではないかと感じることすらある。
例えば、対面販売に注力して大きくなった保険会社の場合、相対的に高額な商品が多い。人材の離脱が激しい営業組織の維持にかかる費用が保険料に反映されているのではないか。
銀行も手数料を稼ぐ目的で生保の代理店になっている。そのため、退職金が振り込まれた顧客に、例えば、手数料率5%の変額保険(投資信託で保険料を運用する保険)を提案してくる。それは手数料率0.05%の投資信託よりも稼ぎが大きいからだと考えられる。
かんぽ生命とJA共済に関しては、「商品は他社より見劣りするのにノルマが厳しい」と、筆者に悩みを打ち明けてくる関係者が珍しくない、と書いておく。
規模が大きいから信頼できるとか、銀行だから信頼できるとか、一律には言えないのだ。筆者は、過去の相談事例などから「組織が大きくなったのは、顧客とは利益相反である『手数料ビジネス』の成果に、強欲と呼びたいほどこだわってきた結果ではないか。犠牲になっている人もいるのではないか」という視点も持ったほうがいいと考えている。
3点目については、次回、解説する。

(次回に続く)
[日経ビジネス電子版 2023年11月8日付の記事を転載]
「保険貧乏 卒業したい人へ/その保険 いる? いらない? 見極めるための最強マニュアル」大反響、重版続々。保険に入りすぎている「五十嵐夫婦」の素朴な疑問に、保険商品の仕組みから業界の裏事情まで知る著者が、とことんやさしく答えていきます。
後田 亨(著)、日経BP、1760円(税込み)
